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18 競技の後で

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競技がわたしに合ってなかった。動く的に当てるという単純なやつだったら、得点出来たのに・・・と声を大にして言い訳したい。予選の的は動かないし

「残念だったわね」
「頑張ったわね」と二人が笑いながら迎えてくれた。

「もう、わたしには無理よ。あれを避けるなんて」
「そうね」「確かに」「乗馬だったら転ばないのにねぇ」と言いながら二人は笑いを堪えきれない。友達なのに・・・

「もう、いいのよ」と少しふくれたわたしと二人は長距離で頑張っている馬のゴールを見に行った。

一位の馬は、後三周だった。そしてそれは王子の馬だ。あの馬だ。

わたしは手を叩いて応援した。

最後の半周を、王子は手を振りながらゆっくり走った。さすが王族、見せ所を心得ている。
ゴールした馬が水を飲んでいる間に王子は下馬した。馬装も王子みずから解いている。さすが体力があるな。

最後の馬がゴールした。表彰式を見ているとわたしに伝言が来た。

「良かったら馬に会いに来て」って王子からだった。

わたしは二人を誘ったが、剣術を見に行くからと断られた。それでわたしは一人で馬に会いに行った。今日の剣術は予選だよ。ロバート様は出ないよ。

りんごを持ってくれば良かったなぁ。

最初に王子殿下に挨拶をしようとしたら
「学院だし、固いのはごめんだ。わたしはハリソンだ。リリー嬢と呼ばせてくれ」
「はい、ハリソン殿下。どうぞリリーと」
「ハリソンだ」
「はい、ハリソン様」
「様は・・・」
と言っている間に馬がこちらを見て
「ビヒィーー」と鳴いたので話は終わった。

馬はわたしの手に顔を摺り寄せて喜んだ。
「馬に名前をつけたジョンだ」
「名を呼んでやってくれ」
「ジョン」と呼べば、ますます顔をすり寄せて来た。

「殿下、そちらのリリー嬢とそろそろ話をさせていただいても」
「リリー、こちらは王宮魔法士部隊の者だ」
「ブルースです」
「リリーです」
「先ほどの試合を見まして、ぜひお話をと思いまして」

あの恥ずかしい様を見てなにを話したいと思うのか?と敵意を感じたわたしはぶっきらぼうに返事をした。
「あの試合ですか?最下位でしたが」
「いえ、もし打ち落とすだけなら得点は高かったのでは?」
ブルースって言ったっけ。いい人だったの?

「どうなんでしょう」
「試してみませんか?」とブルースは言うと
「部隊への勧誘なんですよ」と小声で言った。
「それは、嬉しいです」
「訓練場へ行きましょう」
「はい」と言うとわたしはハリソン王子にお暇の挨拶をしようとしたが
「話はついたのかな?では行こうか」と王子が当たり前に言うのに驚いて
「殿下もですか?」と言ってしまった。
「殿下は会場に戻ったほうが」と先に行っていたブルースも、振り向いて言ったが
「リリーの試験を見守りたい」
「仕方ないですね」とブルースが言うと、ハリソン様は
「行こう、リリー」と言ったが、わたしより張り切っていた。


訓練場の端に一人で立つのはもちろんわたしだ。試験をうけるんだもの。
だけど、周りに立つボールを投げる騎士団に王子殿下が混じっているのは?
面白がってる!

なんの合図もなく試験が始まった。いきなりボールが行き交った。
わたしは、ペン軸でボールを打った。水魔法で打っている。
左右から何人もが、同時にボールを投げる。これに当てるのだが、見るのが、狙うのが間に合わない。慌ててポーチから、ピンクガラスのペン軸を出すと左手で使った。
命中したのは半分と少しだ。
「はーーーい。終わり」

半分か、これは無理だな。せっかく仕事が見つかったと思ったが、真面目に勉強しよう。

「リリー嬢。素晴らしい。ぜひ、うちに来て下さい」
「え?」
「合格です。それ以上です。採用です」
「よかったーーー」と唸ってしまった。はーー本当に良かった。
「本決まりにするのか?」とハリソン様が言った。
「はい、本決まりです。書類が整ったらミシガン伯爵と話をします」
「その時はわたしも同席する」とハリソン様が言うとブルースは苦笑いを浮かべた。

でも良かったーーーこれで家族から離れられる。

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