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14 学院の三年目

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婚約解消のことを、二人に報告した。
でも、驚いてくれなかった。だって競技会の時のあれ、あの有様を見てるからね。

それに婚約者としてとてもとても冷たい所を、見てた二人だから
「それは残念だったわね」と心にもないことを言うナタリー
「リリーならもっといい人が見つかるわ」と優しいパトラ。

わたしは二人に言った。
「婚約者がいなくなったことは残念だけど、ロバート様のことは残念じゃない。わたしは結婚しなくてもやっていけるように考える。魔法の教師になってもいいし、文官として働いてもいいし、武官として?はちょっと無理かもだけど」

冗談でも強がりでもなくロバート様はいらない。わたしは自立するつもりだ。両親はわたしのことはたまに思い出す程度だから。

「そうだわね。リリーなら大丈夫。成績もいいし」とパトラは言ったが

「だけどロバート様は騎士として有望でしょ。なんと言っても優勝したから、二学年の優勝だなんて滅多にないことよ。団長さんの息子が期待されていたけど、それより凄いのよ。それに騎士団に入るのは確定してるでしょ。その上ブラックレイク侯爵家の御子息でしょ。将来は華やかでしょ?あんなに派手な優勝したのよ。あんなやつなのに」とナタリーが悔しそうに言った。

優勝させたのはわたし。誰にも言えないけどね。だから将来なんてたいしたことない。

「大丈夫よ。案外わたしの将来がたいしたものかも知れないでしょ」と言うと二人は

「なるほど、リリー様ステキ!」
「さすが偉大なリリー様」と笑った。

婚約がなくなっても、わたしの日常は変わらなかった。月に二回の十分お茶会がなくなっただけだ。

侍女二人は喜々としてアナベルの世話をしている。卒業後の自立の練習だと、身支度も出来るだけ自分でやっている。侍女はわたしの世話をしないでアナベルのそばにいられる。わたしも自立できる。双方がお得だ。

そうやって日が過ぎていって、わたしは三年生になり、アナベルが入学した。

第三王子も入学して、アナベルと同じクラスだそうで、アナベルが言うには

「とても気さくでアナベルによく話しかける。いい人」だそうだ。

ロバート様は、朝、迎えに来るし、お昼も一緒のようだ。

相手が変わるとこんなに変わるのかと、わたしは感心した。彼は本当にわたしを気に入ってなかったんだな。

朝、迎えにきたロバート様と顔が会った時のこと。わたしは最初の時、先手必勝ってことで

「おはようございます。ロバート様」と足を止めずに挨拶して、馬車に乗り込んだ。

それを、毎朝やっている。そして挨拶の時少しだけ治療魔法をかける。
ロバート様には競技会まで、故障なく頑張って欲しいから。

彼はなにか言いたそうだが、どうでもいいから、気がつかないふりをしている。

なんで、こんなのを唯一と思っていたのだろう。やはり視野を広く持つことは大事!


そして、そして悔しいことがある。アナベルの誕生日にロバート様はちょっとお高い装身具を送って来たのだ。なにこの扱いの違い!

でも、見てなさい。しっかりやり返すから。
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