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11 客間でお茶会

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次のお茶会はいつものあずまやでなく、客間に用意された。

アナベルの部屋にはお母様も侍女も集まって賑やかだ。アナベルが出かける準備をしているのだろう。

いつも通り、ロバート様は少し遅めに到着した。

今日は約束はないのかしら?お茶会らしい服装だ。いつものように挨拶を交わしエスコートされて客間に行くと、両親とアナベルが座っていた。

「・・・・」吃驚しているとアナベルが

「ロバート様、お待ちしてました」とロバートの手を引っ張ってかけさせた。自分の席の隣りに。

ますます、混乱してつったっていると

「早く座りなさい」とお父様が言った。お父様が示した席にわたしが座ると

「リリーに話がある。お前の婚約は解消した」
「え?」

意味が理解できるまで少し時間がかかった。解消?何故?いや答えは目の前にある。

「はい」・・・声が出せた。

「ロバート殿とアナベルは前から好意を持ち合っていたようだ。二人から相談されてわたしも迷っていたんだが・・・アナベルにふさわしいかどうかわからなかったからな」とお父様はわたしを、わたしの反応を見ながら言った。

「だが、今回の競技会で優勝した。将来を嘱望される剣の腕前を持っていると確信できた。それでアナベルと婚約させることにした」

優勝出来ないへたれならわたしと結婚させるつもりだったってこと?!

優勝ってわたしが・・・わたしの力なのに・・・

今、そう言っても誰も信じない。でもロバート様ずっとわたしを騙していたの? わたし、学院でもロバート様の為になるならと勉強も頑張ったのよ。寂しくても邪魔しないように・・・

だけど、アナベルとわたしだったら、優先されるのはアナベル。家族と使用人はそうだった。アナベルが最初だった。
ロバート様は違うと思っていた。婚約者のわたしを優先してくれると思っていた・・・違っていた。

黙って俯いていたら涙が手に落ちた。

お母様が
「わかってくれて良かったわ。あなたの婚約もまた考えるから」と言った。

次ねってことね。わたしの前に書類が出された。わたしは署名した。

「お姉さま、この後、ブラックレイク侯爵様も来るのよ」とアナベルが言った。出てけって意味だとわかった。わたしは立ち上がると
「失礼します」と言って部屋を出た。

廊下で侍女が話していた。

「今回のお茶会は準備しがいがあったわね」
「ほんと、十分で終わらないお茶会」
「それにしても気がつかなかったのかしらね」
「ほんと、お茶会を早々に抜けてアナベラ様と会っていたのにね」
「でも、これなら冗談でなくアナベラ様なら複数の夫を持てるかも!」
「まさかぁそれはないでしょ」
「でも、子供の頃から、旦那様も奥様も、みんながアナベルと結婚したがるよ。一人に決められないねって言ってたでしょ」
「そうね、子供相手の冗談よね」
「爵位はリリー様じゃなくアナベル様へ譲るつもりだそうよ」
「ブラックレイク家もそれを期待して、今回のことを認めたんでしょ。もともと爵位目当ての婚約でしょ?そうじゃないと誰がリリー様と?」
「それもそうね」

そうだったのか。わたしとロバート様の婚約は、わたしが爵位を貰うってことも大きかったのか。



ブラックレイク侯爵はロバート様を貴族に留める手っ取り早い手段で、爵位を貰うわたしを婚約者にしたのだ。

爵位を貰わないわたしに価値はない。アナベルとわたしを比べたらアナベルと結婚したいと男性は思うだろう。

まして爵位がついて来るのだ。当然、アナベルを選ぶだろう。

だからアナベルを連れてお父様が競技会に来ていたのか。お祖父様は爵位はわたしのものだっておっしゃっていたけど・・・
わたし以外知っていて、応援していたってことなのね。

裏庭に行くと、大きいカラスが歩いて来た。撫でると小さく
「クワァクワァ」と鳴いた。
「治れーー」と思いながら少し強く撫でた。魔力と涙が一緒にでた。

しばらくすると
「クワァーー」と鳴きながら飛んで行って、代わりにサンデーがやって来た。

「ニャーニャ。ニャーヤー」と鳴くサンデーを抱いて撫ぜていると、心が静まって来た。


誠実だからと思っていた十分のお茶会は不誠実の証。

わたしだってアナベルの熱を下げてあげない。それはわたしの意思。わたしの意地悪。

わたしを意識に入れないのは、両親の勝手だから、非難はしない。そして逆を非難されるのもごめんだ。

目に入れて貰えないなら、入るようにしよう。

それで、侍女に命じた。
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