上 下
4 / 50

04 わたしはそれなり!

しおりを挟む
離れていても治せることがわかった。それも楽しい、新たな秘密だ。

後回しにされたり、そっとされたり、そんななかでわたしは育った。サンデーがいなければ、クーロがいなければわたしは孤独に押し潰されていただろう。

学院に入って人と関わるようになって、わたしな自信がついた。家では家族に忘れられ、侍女だってわたしにちゃんと仕えないから、自分は駄目だと思っていたが、お話する相手が出来て、もっと仲良くなって、クラスの人とも普通に笑って話が出来ると自分はそれなりだと自信がついた。
わたしは、それなりだ。家族はわたしを大事にしないけどわたしは自分を大事にする。今はそう思っている。

この治療魔法を父親が知れば、それを利用しようとするだろう。それはいやだ。わたしは家のためになにかをしたくない。いつものようにそっとしておいて。そう思っている。

この力は絶対に秘密にするが、魔法が使えることを隠す必要はない。そう判断して、わたしは水魔法を人前で使うことにした。

火や風もやってみたら出来たが、水が一番しっくり来た。それで学院で水魔法を初歩から習った。おかげで治療魔法も上達した。

治療の魔法を動くカラスに向かって打っていたわたしにとって、動かない的に当てるのはとても簡単だったのだ。

わたしは慎重に平均点の魔法を使った。



婚約者のロバート様は、定例のお茶会にきちんと来てくれる。約束があって忙しいのに申し訳ないが、わたしはロバート様には我儘だから、お茶会をお休みにする気はない。

学院には婚約者同士で通っている人たちがいて、その人たちは朝、一緒にやって来る。同じ馬車に乗ってやって来るってことはどちらかがお迎えに行っているのだろうと思う。
わたしもロバート様をお迎えに行ったり、お迎えに来て欲しいと思うし、あの人たちと同じようにお昼を一緒に食べたいと思った。

それでお茶会の時、そのお話をすると
「なるほどね。わかった。だけど今日は約束があるから、もう
行かなきゃ。また今度」と言うと急ぎ足で行ってしまった。

わずか十分のお茶会だ。

侍女たちは片付けながら、聞えよがしに

「なんだか惨めね。たった十分のために着替えて、すがりついて、片付けをする身にもなって欲しいわね」と言いあっている。

「まぁ厄介者を片付けるために仕方ないわね。さっさと終わらせてアナベル様の所へ手伝いに行きましょう」

そんな声を聞きながらわたしは、裏庭へ行った。

今日はクーロが来ていた。クーロはいつもの木の枝から降りてわたしのそばに来た。

それから

「コゥコーコー」と鳴きながら少し歩いては振り返りまた
「コゥコーコゥ」と鳴いた。するとサンデーがやって来て
「ニャーニャーにゃ」と鳴いた。
そしてわたしの服の裾を咥えると歩き出した。どこかに連れて行きたいようだ。

庭の隅に壊れかけた門がある。そこを出ると森がある。森に入って少し歩くとカラスが蹲っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

ああ、もういらないのね

志位斗 茂家波
ファンタジー
……ある国で起きた、婚約破棄。 それは重要性を理解していなかったがゆえに起きた悲劇の始まりでもあった。 だけど、もうその事を理解しても遅い…‥‥ たまにやりたくなる短編。興味があればぜひどうぞ。

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

嘘はあなたから教わりました

菜花
ファンタジー
公爵令嬢オリガは王太子ネストルの婚約者だった。だがノンナという令嬢が現れてから全てが変わった。平気で嘘をつかれ、約束を破られ、オリガは恋心を失った。カクヨム様でも公開中。

〈とりあえずまた〆〉婚約破棄? ちょうどいいですわ、断罪の場には。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
辺境伯令嬢バルバラ・ザクセットは、第一王子セインの誕生パーティの場で婚約破棄を言い渡された。 だがその途端周囲がざわめき、空気が変わる。 父王も王妃も絶望にへたりこみ、セインの母第三側妃は彼の頬を打ち叱責した後、毒をもって自害する。 そしてバルバラは皇帝の代理人として、パーティ自体をチェイルト王家自体に対する裁判の場に変えるのだった。 番外編1……裁判となった事件の裏側を、その首謀者三人のうちの一人カイシャル・セルーメ視点であちこち移動しながら30年くらいのスパンで描いています。シリアス。 番外編2……マリウラ視点のその後。もう絶対に関わりにならないと思っていたはずの人々が何故か自分のところに相談しにやってくるという。お気楽話。 番外編3……辺境伯令嬢バルバラの動きを、彼女の本当の婚約者で護衛騎士のシェイデンの視点から見た話。番外1の少し後の部分も入ってます。 *カテゴリが恋愛にしてありますが本編においては恋愛要素は薄いです。 *むしろ恋愛は番外編の方に集中しました。 3/31 番外の番外「円盤太陽杯優勝者の供述」短期連載です。 恋愛大賞にひっかからなかったこともあり、カテゴリを変更しました。

処理中です...