1 / 56
01 わたしの立ち位置
しおりを挟む
今日は月に二度設けられた婚約者とのお茶会の日だ。わたしの緑の目と薄茶色の髪に合うクリーム色の装い。髪の飾りは緑の糸で編んだ花。
婚約者のロバート様は礼儀正しく時間より少しだけ遅れて現れた。
わたしたちはきちんと挨拶をかわした。そして彼のエスコートで庭のあずまやに用意された席についた。
彼のご両親のことを質問する。
「一昨日、二人揃って領地へ行った」彼の両親、ブラックレイク侯爵の領地は国でも有数の豊かな場所だ。王都から半日もあれば到着する。
ついで、妹さんのことを訪ねる。
「相変わらず、元気で毎日遊んでる。今日もよろしくと言っていた」と彼が答えた。
彼の妹、ジョシーは元気一杯で運動神経がとても良い。一度、暴れ回って・・・いや、燥いでいて階段から落ちたことがある。園遊会での出来事だ。いきなり目の前に彼女が転がって来た時は驚いたが、挫いた足をその場でこっそり治したことがある。
この時、馬車が門から出て行った。アナベルが出かけたのだろう。
ここで彼が珍しく自分からわたしに話しかけた?
「あぁ、時間だ。すまないがこれから約束があるから、ここで失礼するよ。楽しかった。見送りはいらない」
わたしは座ったまま彼を見送った。彼のいつもより、くだけた服装の理由がわかった。彼はこの後に合わせた服装をして来たのだ。
わたしは彼の気遣いが嬉しかった。約束があるのに定例のお茶会に来てくれたのだ。
わたしたちの婚約は、親が顔見知りと言うことで決まった。わたしの家は王都のはずれに接した小さな領地を持つ伯爵家だ。跡取りの兄、わたし、妹、弟と子供が四人いる。
位は伯爵だが、旧い家だ。先祖の中には外国の王室。この国の王室の血が混じっている。ほんの少しだが・・・なんせ、その王子様も王女様も行き場がなくて我が家が引き取ったと聞いている。誰からって?先代伯爵夫妻。要はお祖父様とお祖母様から、お二人は、折に触れて伯爵家の歴史を話してくれていた。それで旧いしか取り柄のない家だが、手持ちの子爵位が二つある。もっとあったらしいけど。なんせ王室から迎えるってことでお土産とか??
兄弟で分けて行って残り二つになったみたいだ。
お祖父様とお祖母様のお話は毎年同じ話だけど。わたしは、公式の歴史が正しいわけではないと知ってる。
それで婚約は、園遊会でたまたま近くのテーブルになった両家が、話をして、子供の年頃が同じならちょうどいいと、わたしとロバートを婚約させたのだ。
彼のお兄様のライアン様は侯爵の跡取りだ相応しい令嬢を探す必要がある。彼の妹のジョシーも大事な娘を託すに相応しい婚約者をじっくり探さなければならない。
我が家にしても同じだ。跡取りのお兄様。大事なアナベル。可愛い末っ子のカイルは適当な婚約なんて考えられない。じっくり相手を選ぶだろう。
だが、ロバートとわたしリリーは片付けば良いのだ。だからたまたま話した相手と手っ取り早く婚約させたのだ。
わたしの妹のアナベルは生まれた時に既に美人だった。そして普通より少し体が弱く、よく熱を出す。だから両親も使用人もアナベルを大切にして気を使う。わたしは、疎まれているとは思わないが、思いたくないが、忘れられている。今度ね、この次はリリーね。何度も繰り返されたこの言葉。それが今ではこの言葉すらない。省かれている。要は忘れられている。
小さい頃、そういったことが不満でこう言ったことがある
「熱くらい治せばいいじゃない」
頬をぶたれるくらい怒られた。怒鳴られた。
「熱くらいとはなんだ。治せばいいとはなんだ」
わたしは痛みと混乱でなにも言えなかった。わたしは熱も下げられるし、傷も治せる。自分が出来るから誰でも出来ると思っていたのだ。
婚約者のロバート様は礼儀正しく時間より少しだけ遅れて現れた。
わたしたちはきちんと挨拶をかわした。そして彼のエスコートで庭のあずまやに用意された席についた。
彼のご両親のことを質問する。
「一昨日、二人揃って領地へ行った」彼の両親、ブラックレイク侯爵の領地は国でも有数の豊かな場所だ。王都から半日もあれば到着する。
ついで、妹さんのことを訪ねる。
「相変わらず、元気で毎日遊んでる。今日もよろしくと言っていた」と彼が答えた。
彼の妹、ジョシーは元気一杯で運動神経がとても良い。一度、暴れ回って・・・いや、燥いでいて階段から落ちたことがある。園遊会での出来事だ。いきなり目の前に彼女が転がって来た時は驚いたが、挫いた足をその場でこっそり治したことがある。
この時、馬車が門から出て行った。アナベルが出かけたのだろう。
ここで彼が珍しく自分からわたしに話しかけた?
「あぁ、時間だ。すまないがこれから約束があるから、ここで失礼するよ。楽しかった。見送りはいらない」
わたしは座ったまま彼を見送った。彼のいつもより、くだけた服装の理由がわかった。彼はこの後に合わせた服装をして来たのだ。
わたしは彼の気遣いが嬉しかった。約束があるのに定例のお茶会に来てくれたのだ。
わたしたちの婚約は、親が顔見知りと言うことで決まった。わたしの家は王都のはずれに接した小さな領地を持つ伯爵家だ。跡取りの兄、わたし、妹、弟と子供が四人いる。
位は伯爵だが、旧い家だ。先祖の中には外国の王室。この国の王室の血が混じっている。ほんの少しだが・・・なんせ、その王子様も王女様も行き場がなくて我が家が引き取ったと聞いている。誰からって?先代伯爵夫妻。要はお祖父様とお祖母様から、お二人は、折に触れて伯爵家の歴史を話してくれていた。それで旧いしか取り柄のない家だが、手持ちの子爵位が二つある。もっとあったらしいけど。なんせ王室から迎えるってことでお土産とか??
兄弟で分けて行って残り二つになったみたいだ。
お祖父様とお祖母様のお話は毎年同じ話だけど。わたしは、公式の歴史が正しいわけではないと知ってる。
それで婚約は、園遊会でたまたま近くのテーブルになった両家が、話をして、子供の年頃が同じならちょうどいいと、わたしとロバートを婚約させたのだ。
彼のお兄様のライアン様は侯爵の跡取りだ相応しい令嬢を探す必要がある。彼の妹のジョシーも大事な娘を託すに相応しい婚約者をじっくり探さなければならない。
我が家にしても同じだ。跡取りのお兄様。大事なアナベル。可愛い末っ子のカイルは適当な婚約なんて考えられない。じっくり相手を選ぶだろう。
だが、ロバートとわたしリリーは片付けば良いのだ。だからたまたま話した相手と手っ取り早く婚約させたのだ。
わたしの妹のアナベルは生まれた時に既に美人だった。そして普通より少し体が弱く、よく熱を出す。だから両親も使用人もアナベルを大切にして気を使う。わたしは、疎まれているとは思わないが、思いたくないが、忘れられている。今度ね、この次はリリーね。何度も繰り返されたこの言葉。それが今ではこの言葉すらない。省かれている。要は忘れられている。
小さい頃、そういったことが不満でこう言ったことがある
「熱くらい治せばいいじゃない」
頬をぶたれるくらい怒られた。怒鳴られた。
「熱くらいとはなんだ。治せばいいとはなんだ」
わたしは痛みと混乱でなにも言えなかった。わたしは熱も下げられるし、傷も治せる。自分が出来るから誰でも出来ると思っていたのだ。
1,754
お気に入りに追加
4,583
あなたにおすすめの小説
妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。
しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹
そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる
もう限界がきた私はあることを決心するのだった
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】不協和音を奏で続ける二人の関係
つくも茄子
ファンタジー
留学から戻られた王太子からの突然の婚約破棄宣言をされた公爵令嬢。王太子は婚約者の悪事を告発する始末。賄賂?不正?一体何のことなのか周囲も理解できずに途方にくれる。冤罪だと静かに諭す公爵令嬢と激昂する王太子。相反する二人の仲は実は出会った当初からのものだった。王弟を父に帝国皇女を母に持つ血統書付きの公爵令嬢と成り上がりの側妃を母に持つ王太子。貴族然とした計算高く浪費家の婚約者と嫌悪する王太子は公爵令嬢の価値を理解できなかった。それは八年前も今も同じ。二人は互いに理解できない。何故そうなってしまったのか。婚約が白紙となった時、どのような結末がまっているのかは誰にも分からない。
新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。
『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。
まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」
そう、第二王子に言われました。
そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…!
でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!?
☆★☆★
全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。
読んでいただけると嬉しいです。
どうぞお好きに
音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。
王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる