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01 わたしの立ち位置

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今日は月に二度設けられた婚約者とのお茶会の日だ。わたしの緑の目と薄茶色の髪に合うクリーム色の装い。髪の飾りは緑の糸で編んだ花。

婚約者のロバート様は礼儀正しく時間より少しだけ遅れて現れた。

わたしたちはきちんと挨拶をかわした。そして彼のエスコートで庭のあずまやに用意された席についた。

彼のご両親のことを質問する。

「一昨日、二人揃って領地へ行った」彼の両親、ブラックレイク侯爵の領地は国でも有数の豊かな場所だ。王都から半日もあれば到着する。
ついで、妹さんのことを訪ねる。
「相変わらず、元気で毎日遊んでる。今日もよろしくと言っていた」と彼が答えた。

彼の妹、ジョシーは元気一杯で運動神経がとても良い。一度、暴れ回って・・・いや、燥いでいて階段から落ちたことがある。園遊会での出来事だ。いきなり目の前に彼女が転がって来た時は驚いたが、挫いた足をその場でこっそり治したことがある。

この時、馬車が門から出て行った。アナベルが出かけたのだろう。

ここで彼が珍しく自分からわたしに話しかけた?

「あぁ、時間だ。すまないがこれから約束があるから、ここで失礼するよ。楽しかった。見送りはいらない」

わたしは座ったまま彼を見送った。彼のいつもより、くだけた服装の理由がわかった。彼はこの後に合わせた服装をして来たのだ。

わたしは彼の気遣いが嬉しかった。約束があるのに定例のお茶会に来てくれたのだ。


わたしたちの婚約は、親が顔見知りと言うことで決まった。わたしの家は王都のはずれに接した小さな領地を持つ伯爵家だ。跡取りの兄、わたし、妹、弟と子供が四人いる。

位は伯爵だが、旧い家だ。先祖の中には外国の王室。この国の王室の血が混じっている。ほんの少しだが・・・なんせ、その王子様も王女様も行き場がなくて我が家が引き取ったと聞いている。誰からって?先代伯爵夫妻。要はお祖父様とお祖母様から、お二人は、折に触れて伯爵家の歴史を話してくれていた。それで旧いしか取り柄のない家だが、手持ちの子爵位が二つある。もっとあったらしいけど。なんせ王室から迎えるってことでお土産とか??

兄弟で分けて行って残り二つになったみたいだ。

お祖父様とお祖母様のお話は毎年同じ話だけど。わたしは、公式の歴史が正しいわけではないと知ってる。


それで婚約は、園遊会でたまたま近くのテーブルになった両家が、話をして、子供の年頃が同じならちょうどいいと、わたしとロバートを婚約させたのだ。


彼のお兄様のライアン様は侯爵の跡取りだ相応しい令嬢を探す必要がある。彼の妹のジョシーも大事な娘を託すに相応しい婚約者をじっくり探さなければならない。

我が家にしても同じだ。跡取りのお兄様。大事なアナベル。可愛い末っ子のカイルは適当な婚約なんて考えられない。じっくり相手を選ぶだろう。

だが、ロバートとわたしリリーは片付けば良いのだ。だからたまたま話した相手と手っ取り早く婚約させたのだ。

わたしの妹のアナベルは生まれた時に既に美人だった。そして普通より少し体が弱く、よく熱を出す。だから両親も使用人もアナベルを大切にして気を使う。わたしは、疎まれているとは思わないが、思いたくないが、忘れられている。今度ね、この次はリリーね。何度も繰り返されたこの言葉。それが今ではこの言葉すらない。省かれている。要は忘れられている。

小さい頃、そういったことが不満でこう言ったことがある
「熱くらい治せばいいじゃない」

頬をぶたれるくらい怒られた。怒鳴られた。
「熱くらいとはなんだ。治せばいいとはなんだ」
わたしは痛みと混乱でなにも言えなかった。わたしは熱も下げられるし、傷も治せる。自分が出来るから誰でも出来ると思っていたのだ。
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