いつまでも甘くないから

朝山みどり

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裏切り

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「エリザベス」とフレッド

「いいところで、エリザベス」

ナタリーが続けて言った。



「私たち、結婚するわ」

「違う、結婚するのはエリザベスとだ。言ったじゃないか」

二人の声が遠い・・・・





気がついたら私は玄関に座り込んでいた。手にはしっかりとケーキの包みを抱えていた。

ぐしゃぐしゃになった包みを開けると、ぐしゃぐしゃになったケーキが入っていた。

私はそれを手づかみで口にいれた。

「こんな食べ方もったいない、味わって食べなきゃ」変に冷静にそう思った。

なんだか笑ってしまったが、涙も出てきた。なぜか、うわぁーんて声を出して泣いた。短い時間だったけど。

それからお風呂にゆっくりとはいった。二度目ともなれば婚約がなくなることも慣れるわね。そう思った。

それで声に出して言ってみた。

「二度目ともなれば婚約が、なくなることも慣れるわね。二度目ともなれば裏切られても平気よね。二度目ともなれば悲しいなんて・・・・・二度目でも悲しい・・・・悲しい・・・・悔しい・・・我慢しない・・・・仕返ししてやる・・・みんな不幸になれ・・・・」

お湯のなかでそう言った。


あの二人は私より不幸にしてやる。湯上りに水を飲みながら私は悪役っぽく「わっはっはっは」と笑ってみた。

下手くそだったので何度かやってみるうちに、涙が出てきたので練習をやめてベッドにはいった。

全部が終わったら、もう一度ケーキを買いに行こう。と思ったらもう朝だった。



いつものように部長のお茶をいれるとミランダが来て運んでいった。

その顔を見た私に意地悪な考えが浮かんだ。うんと濃く渋いお茶とそれを薄めたお茶を入れたのだ。

お盆に並べていると戻ってきたエイミーが

「手伝います」と運んでいった。

お茶の葉を取り替えて自分のお茶をいれると席についた。


事務所はちょっとした騒ぎになっていた。

思わずお茶を口から吹き出した者や「不味い」と口にした者、エイミーがお茶をいれてると思っているからエイミーの体調を心配する者などいた。

ごめん、皆これは八つ当たりだね。


私はいつものように仕事を始めた。

最初につまづいた一日は、うまく終わらず私以外は残業となったようだ。

たまにはいいだろう。私は朝よりは元気になって家に戻った。






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