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女神の信託
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もうすぐ村に着くという頃、遠くにあの犬に似た魔物が見えた。
護衛の騎士たちは剣を抜いて身構えたが、私が見ても腰が引けていた。
襲ってきた魔物は全部で三頭。遠くに転移させてしまえば済むから私個人としては危機感なんてなかった。
一応、私が聖女だと思い出したのか、ブリュンバードが迎えに来て、私たちは騎士に囲まれた馬車のなかで一固まりになった。
騎士の囲みを突破したのか、馬車の屋根になにかが乗った。天井をかりかりひっかく音と唸り声が聞こえた。
するとマチルダが大声で悲鳴をあげた。
なに、貴族としてどうなの?動じたらだめじゃん、静かにしなよ。ここは一発を殴って静かにさせたほうがいい?
いやいや、なにエリシアまで加わって悲鳴の二重唱とか、勘弁してよ。
よし、こうなりゃ、私も混じってトリオ戦だ。と息を吸い込んで「いやーーーー」と叫んだ。
なんだか楽しい、時々、音程を変えて「いやーーーー」とやっていたら、外の気配が変わった。
上にいた一頭がどさりと落ちた。そして静かになった。しばらくしたら、馬車の戸が開けられた。
さっさと降りたら三頭の魔物が並べられていた。
あの森の民たちだったが、彼らも心得ていて私に見向きもしなかった。ここはブリュンバードがきちんとお礼を言う場面だと思うが、森の民を見て少し、震えている。
ため息を押し殺し私は進み出た。
「助けていただいてありがとうございます」
「いや、まぁ」
「馬車の上にデビルウルフが乗っているのを見たので、助っ人としてお節介をしました。聖女様の御一行ですね」
「はい。命拾いを致しました。なにかお礼ができませんでしょうか?」
「それなら、この先に瘴気が満ちた沼がある。浄化をしてもらえれば助かる」
「わかりました。すぐに参ります」
浄化が終わって帰る道すがら、こんな話がでた。
「あの二人は聖女ではないのか?」
「少し、治癒が出来ますね」
「そうか、人族から嫁をもらうと地位を固められるのだが・・・・・お前ほどの聖女は俺の手に負えないが・・・・形だけでも・・・・聖女なら・・・・・」
私は彼を見てにっこりと笑った。
送り届けた彼の後姿が小さくなると、マチルダが
「あんな野蛮な人と話せるなんて、貴族じゃない聖女様はすごいですね。わたくしには出来ませんわ」
「えぇ、本当に・・・・さすが聖女様ですね」とエリシアが返した。
二人が、馬鹿にした口調で言うのをブリュンバードは咎めることもなく聞いていた。
ブリュンバードが私の事を騙していたのはよくわかるけど、この国の為に働いていることは確かだよね。最近は手を抜いているけど・・・・・
まぁここまでされると心置きなく、やり返せるからいいけど・・・・そう思いながらうとうとしたのか、気がついたら馬車が止まっていた。
みると教会に明かりがついている。私抜きで宴会でもやっていそうね。
なにか食べる物でもと教会にはいった。礼拝堂は人気がなく暗かったが、しばらくすると月明かりで室内がぼんやり見えてきた。
大きな女神像がある。私はこの女神に仕える聖女ってことだが、祈ったことはない。むしろ呪いたい。
私は像の前の椅子に座ると女神に話しかけた。
「ねぇ聞こえる?私の声。恨んでいるのよ。なぜ私なの」
『ごめんなさい。見回したら一番能力が高かったから、頼ってしまったの』
「え?なに」
『女神のミレディ。あなたの心に直接話してるの。あなたも思うだけで私と話せるわ』
「なんですって」
『えっと・・・こう?』
『そうそれでいい』
護衛の騎士たちは剣を抜いて身構えたが、私が見ても腰が引けていた。
襲ってきた魔物は全部で三頭。遠くに転移させてしまえば済むから私個人としては危機感なんてなかった。
一応、私が聖女だと思い出したのか、ブリュンバードが迎えに来て、私たちは騎士に囲まれた馬車のなかで一固まりになった。
騎士の囲みを突破したのか、馬車の屋根になにかが乗った。天井をかりかりひっかく音と唸り声が聞こえた。
するとマチルダが大声で悲鳴をあげた。
なに、貴族としてどうなの?動じたらだめじゃん、静かにしなよ。ここは一発を殴って静かにさせたほうがいい?
いやいや、なにエリシアまで加わって悲鳴の二重唱とか、勘弁してよ。
よし、こうなりゃ、私も混じってトリオ戦だ。と息を吸い込んで「いやーーーー」と叫んだ。
なんだか楽しい、時々、音程を変えて「いやーーーー」とやっていたら、外の気配が変わった。
上にいた一頭がどさりと落ちた。そして静かになった。しばらくしたら、馬車の戸が開けられた。
さっさと降りたら三頭の魔物が並べられていた。
あの森の民たちだったが、彼らも心得ていて私に見向きもしなかった。ここはブリュンバードがきちんとお礼を言う場面だと思うが、森の民を見て少し、震えている。
ため息を押し殺し私は進み出た。
「助けていただいてありがとうございます」
「いや、まぁ」
「馬車の上にデビルウルフが乗っているのを見たので、助っ人としてお節介をしました。聖女様の御一行ですね」
「はい。命拾いを致しました。なにかお礼ができませんでしょうか?」
「それなら、この先に瘴気が満ちた沼がある。浄化をしてもらえれば助かる」
「わかりました。すぐに参ります」
浄化が終わって帰る道すがら、こんな話がでた。
「あの二人は聖女ではないのか?」
「少し、治癒が出来ますね」
「そうか、人族から嫁をもらうと地位を固められるのだが・・・・・お前ほどの聖女は俺の手に負えないが・・・・形だけでも・・・・聖女なら・・・・・」
私は彼を見てにっこりと笑った。
送り届けた彼の後姿が小さくなると、マチルダが
「あんな野蛮な人と話せるなんて、貴族じゃない聖女様はすごいですね。わたくしには出来ませんわ」
「えぇ、本当に・・・・さすが聖女様ですね」とエリシアが返した。
二人が、馬鹿にした口調で言うのをブリュンバードは咎めることもなく聞いていた。
ブリュンバードが私の事を騙していたのはよくわかるけど、この国の為に働いていることは確かだよね。最近は手を抜いているけど・・・・・
まぁここまでされると心置きなく、やり返せるからいいけど・・・・そう思いながらうとうとしたのか、気がついたら馬車が止まっていた。
みると教会に明かりがついている。私抜きで宴会でもやっていそうね。
なにか食べる物でもと教会にはいった。礼拝堂は人気がなく暗かったが、しばらくすると月明かりで室内がぼんやり見えてきた。
大きな女神像がある。私はこの女神に仕える聖女ってことだが、祈ったことはない。むしろ呪いたい。
私は像の前の椅子に座ると女神に話しかけた。
「ねぇ聞こえる?私の声。恨んでいるのよ。なぜ私なの」
『ごめんなさい。見回したら一番能力が高かったから、頼ってしまったの』
「え?なに」
『女神のミレディ。あなたの心に直接話してるの。あなたも思うだけで私と話せるわ』
「なんですって」
『えっと・・・こう?』
『そうそれでいい』
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