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04 事件
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アルはライトさんへ、相談した。
「アル、貴族の家はややこしいと聞いた。今アルが家を出て来て、わたしの家に匿っても探しに来たら渡してしまう。
だからこの王都を出て別の町で冒険者になるのが、いいだろう。アルは剣は使えるんだよね」
アルがうなづくと
「それなら、なんとかなるだろう。いきなりダンジョンは無理だろうが・・・・あの本で読んだだろう・・・すぐ売れたが・・・」
「馬車代は貸してやるから、一端になったら返してくれ」そう言うとライトさんは
「ロールパンがあるよ。ジャムもあるよ」と笑った。
「冒険者は体が大事だ。たくさん、食べるんだよ」とライトさんは、お代わりも、持って来た。
「ひどすぎる!」
「なんと言う事でしょう。エドワード様」この声に使用人が集まって来た。遅れて夫人もやって来た。
「母上・・・見てください。あんまりだ。アルのやつ」と言うエドワードの声に夫人がエドワードの部屋に入って驚きの叫びをあげた。
「なんと、エドワードこれは・・・・アルがやった事なのですか?」と夫人が問うに
「他に誰がするんです」とエドワードが涙ぐんで答えた。
そこに知らせを受けた侯爵もやって来ると
「アルがやったんだと?やつはどこだ」
「いません・・・・僕たちの姿を見て逃げ出しました」
「なんてやつだ。自分の無能が悪いのにエドワードに当たるとは」と伯爵は怒ると言うより悲しげに言った。
「アルが帰ってきたら、逃がすな。捕らえて連れて来い」と言うと執務室に戻った。
夕方、アルがこっそり部屋に入ろうとするといきなり、飛びかかられて地面に押さえつけられた。
「なにを」と言いかけた口を殴られて声が出せなかった。
「アル、よくも、やってくれたな」と言うエドワードの顔は加虐の楽しみに溢れていた。
「見てましたよ。隠れていたつもりでしょうが・・・・見ました」と侍従も声を揃えた。
「お前たち、よくやってくれた。父上の部屋へ連れて行ってくれ」とエドワードに命令されると、使用人たちは、わざと地面を引きずるようにアルを連れて行った。
執務室でエドワードは
「父上、抵抗がはげしくて手荒らになってしまいました」と暗い顔で言うとアルに向かって
「アル、すまなかったな」と言った。
引きずられた所から血を流して低く呻いているアルを見た伯爵は、エドワードに向かって
「嘘を言ってないな。見たんだな」と念を押した。
「はい、父上」とエドワードは答えた。
「跡取りであり伯爵令息にエドワードに対してアルバートのやった事は許しがたい。罰をあたえる」と言うと戸棚から細長い箱を持って来た。
そこからムチを取り出すと、倒れているアルバートを打ち始めた。
最初は悲鳴をあげて体をよじっていた。アルバートは気を失ってなにも言わなくなった。執務室の絨毯はアルバートの血で汚れた。
伯爵はムチをテーブルに置くと頭を抱えた。エドワードは動かないアルバートを足でつついた。
庭が騒がしくなった。使用人がなにか言っている声が聞こえる。夫人の声もするがなんと言っているのかわからなかった。
「お待ちください」と執事の声がしたが、ドアが開いて男が二人入って来た。
「おや、これはひどいですね。この子は邪魔な子ですか?殺そうと思いましたね」
「誰だ、お前は許可なく」と伯爵は言うと男の後ろに執事に
「なにをしている、追い出せ」と言った。
「いきなりで失礼した・・・外を馬車で走って追ったら尋常じゃない気配を感じたもんで、急いで来てみたら、このありさま。まぁ来て良かった。この子は、殺されるところだったのでは?」
「この子は恥の子だ。その上、弟に許しがたい事をした。こうする他ないのだ」
「どうして恥の子だと?」
「魔力がない」
「そうか、メイプル伯爵はそう思うのか」
「許しがたい事とは?」
「学院の制服をずたずたにした」
「なるほど、それは許しがたい事ですね。魔力がない上に制服をずたずたにした。死を持って償うに値すると、伯爵家は考えると言う事だと」
男は、ポンと手を打つと、
「では、今この子は死んだ。わたしが引き取ろう。今、連れて帰る」
男が合図を送ると黙って後ろに控えていた男がさっと前に出るとアルバートを抱き上げた。
「待て、勝手は許さん・・・・・お前は一体」
「申しおくれた。クリフクロス公爵だ。長らく療養しておったが動けるようになったので王都へ戻った。ちょうど下僕が欲しいと思っておった。ほらキーラン馬車に連れて行け、回復ポーションはわたしが口移しで飲ませるからな」
「なん」と伯爵が声を飲み
「変態」とエドワードと侍従がにやっと笑った。
キーランが部屋をでると
「アル! アルーー」と夫人がすがりつこうとしたが、メイドが二人がかりで
「奥様、汚れます」と押しとどめた。
「アル、貴族の家はややこしいと聞いた。今アルが家を出て来て、わたしの家に匿っても探しに来たら渡してしまう。
だからこの王都を出て別の町で冒険者になるのが、いいだろう。アルは剣は使えるんだよね」
アルがうなづくと
「それなら、なんとかなるだろう。いきなりダンジョンは無理だろうが・・・・あの本で読んだだろう・・・すぐ売れたが・・・」
「馬車代は貸してやるから、一端になったら返してくれ」そう言うとライトさんは
「ロールパンがあるよ。ジャムもあるよ」と笑った。
「冒険者は体が大事だ。たくさん、食べるんだよ」とライトさんは、お代わりも、持って来た。
「ひどすぎる!」
「なんと言う事でしょう。エドワード様」この声に使用人が集まって来た。遅れて夫人もやって来た。
「母上・・・見てください。あんまりだ。アルのやつ」と言うエドワードの声に夫人がエドワードの部屋に入って驚きの叫びをあげた。
「なんと、エドワードこれは・・・・アルがやった事なのですか?」と夫人が問うに
「他に誰がするんです」とエドワードが涙ぐんで答えた。
そこに知らせを受けた侯爵もやって来ると
「アルがやったんだと?やつはどこだ」
「いません・・・・僕たちの姿を見て逃げ出しました」
「なんてやつだ。自分の無能が悪いのにエドワードに当たるとは」と伯爵は怒ると言うより悲しげに言った。
「アルが帰ってきたら、逃がすな。捕らえて連れて来い」と言うと執務室に戻った。
夕方、アルがこっそり部屋に入ろうとするといきなり、飛びかかられて地面に押さえつけられた。
「なにを」と言いかけた口を殴られて声が出せなかった。
「アル、よくも、やってくれたな」と言うエドワードの顔は加虐の楽しみに溢れていた。
「見てましたよ。隠れていたつもりでしょうが・・・・見ました」と侍従も声を揃えた。
「お前たち、よくやってくれた。父上の部屋へ連れて行ってくれ」とエドワードに命令されると、使用人たちは、わざと地面を引きずるようにアルを連れて行った。
執務室でエドワードは
「父上、抵抗がはげしくて手荒らになってしまいました」と暗い顔で言うとアルに向かって
「アル、すまなかったな」と言った。
引きずられた所から血を流して低く呻いているアルを見た伯爵は、エドワードに向かって
「嘘を言ってないな。見たんだな」と念を押した。
「はい、父上」とエドワードは答えた。
「跡取りであり伯爵令息にエドワードに対してアルバートのやった事は許しがたい。罰をあたえる」と言うと戸棚から細長い箱を持って来た。
そこからムチを取り出すと、倒れているアルバートを打ち始めた。
最初は悲鳴をあげて体をよじっていた。アルバートは気を失ってなにも言わなくなった。執務室の絨毯はアルバートの血で汚れた。
伯爵はムチをテーブルに置くと頭を抱えた。エドワードは動かないアルバートを足でつついた。
庭が騒がしくなった。使用人がなにか言っている声が聞こえる。夫人の声もするがなんと言っているのかわからなかった。
「お待ちください」と執事の声がしたが、ドアが開いて男が二人入って来た。
「おや、これはひどいですね。この子は邪魔な子ですか?殺そうと思いましたね」
「誰だ、お前は許可なく」と伯爵は言うと男の後ろに執事に
「なにをしている、追い出せ」と言った。
「いきなりで失礼した・・・外を馬車で走って追ったら尋常じゃない気配を感じたもんで、急いで来てみたら、このありさま。まぁ来て良かった。この子は、殺されるところだったのでは?」
「この子は恥の子だ。その上、弟に許しがたい事をした。こうする他ないのだ」
「どうして恥の子だと?」
「魔力がない」
「そうか、メイプル伯爵はそう思うのか」
「許しがたい事とは?」
「学院の制服をずたずたにした」
「なるほど、それは許しがたい事ですね。魔力がない上に制服をずたずたにした。死を持って償うに値すると、伯爵家は考えると言う事だと」
男は、ポンと手を打つと、
「では、今この子は死んだ。わたしが引き取ろう。今、連れて帰る」
男が合図を送ると黙って後ろに控えていた男がさっと前に出るとアルバートを抱き上げた。
「待て、勝手は許さん・・・・・お前は一体」
「申しおくれた。クリフクロス公爵だ。長らく療養しておったが動けるようになったので王都へ戻った。ちょうど下僕が欲しいと思っておった。ほらキーラン馬車に連れて行け、回復ポーションはわたしが口移しで飲ませるからな」
「なん」と伯爵が声を飲み
「変態」とエドワードと侍従がにやっと笑った。
キーランが部屋をでると
「アル! アルーー」と夫人がすがりつこうとしたが、メイドが二人がかりで
「奥様、汚れます」と押しとどめた。
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