そんなことしといて

朝山みどり

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始まり

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あの物音が聞こえて来た。二人にしか聞こえない音。教会の地下から聞こえる音。教会の地下に行くことは禁止されている。

「行ってみようよ。二人なら大丈夫」少し迷って

「そうだね。二人なら」と返って来た答えは予想通りだった。


教会の地下への階段を二つの小さな背中が降りて行く。恐れと期待に満ちた足取りで奥へと歩いて行く。

朽ちかけたドアの前に立ち、背伸びしてドアノブを回す。あっさり動いたドアノブに二人は顔を見合わせた。

それぞれ金色の髪と銀色の髪に縁取られた、端正な顔がちょっと緊張している。ゆっくりドアが動くといきなり開いて黒い影が出て来た。

二人は同時に「わっ」と叫ぶと周り右して走り出したが、金色の髪の子がもうひとりを突き飛ばしてこう言った。

「おまえなんが食われてしまえ」そしてあとも見ずに逃げ去った。

銀色の髪の子は

「え?エド」と言いながら起きようとしたが、そばに来た男に顔を覗き込まれて動けなかった。

「ほーーーいい魔力だな・・・・助かる・・・・」やがて気を失った子供を優しく横たえた男は

「十年?いや九年か・・・・・さて二度寝だな」と呟きながら再び部屋に戻っていった。

ドアが閉まった。それからドアが消えた。


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