剣舞踊子伝

のす

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第一章

8話(R18)

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次の日…




「春蕾様、今日の公務はお休みされた方が…」

「足を捻っただけだ。手は動かせる」

「その足ではまともに執務室まで行けません…」

「大丈夫!」



朝からそんな押し問答が続き、やっと夜鈴の反対を押し切って部屋の扉を開けたところで、会いたくない人とばったり会ってしまった。


「あ…」


無駄に図体のでかいその男は、目が合うとギロリと睨みつけるように見下ろしてくる。
それに対抗しようと背筋を伸ばして凛とした表情を見せるが、その瞬間ズキッと足が痛んで顔が引き攣った。


「怪我したのか?」

「別に…」

「随分と腫れているようだが、そんな足でどこへいくつもりだ?」

「貴方には関係ありません」


ぶっきらぼうに返す春蕾に、飛龍ははぁとため息をつき、次の瞬間、軽々と春蕾を肩に担ぎ上げた。



「うわっ、ちょ、何をする!」



まるで子供のような扱いに、春蕾は顔を真っ赤にして飛龍の肩の上で手足をばたつかせて必死に抵抗する。
飛龍の背中に手をついて顔を上げると夜鈴と目が合ったが、助けを求めようと手を伸ばすも虚しく、あの押し問答のせいか助けてもらえるはずもなく。



「どこへ連れていく気だ!下ろせ!!」

「黙って大人しくしていろ」

「い、嫌だ!離せ!この人攫い!」

「黙れと言っているのが分からぬのか?このまま私の部屋に連れ帰り、以前のように犯してやってもいいのだぞ?」

「っっ…」



そんなことを言われたら抵抗を止めるしかない。あんな痛くて屈辱的な思いはもう懲り懲りだ。

大人しくなった春蕾に満足したのか、飛龍はさらにズカズカと王宮内を歩く。
時折すれ違う侍女たちや官僚たちからはなぜか羨望の眼差しを向けられていることに気がついた。こんなに必死に助けを求めているというのに。


「今日も素敵だわ…」コソコソ

「やはり将軍は風格が違うな…」コソコソ


あぁ、そうだった。
この人は男も女も惚れさせる美貌の持ち主だった。


「着いたぞ」


下ろされたのは救護室だった。
しかし、そこではちょっとした混乱が起きていた。



「何かあったのか?」

「それが…昨日麗孝太子殿下の妃殿下がこの部屋で足の治療をされて、一晩休まれていたはずなのですが、今朝来てみたら姿を消していたのです」

「へ、へぇ………」

「太子の妃か…あれだけ妃を持っていたら怪我も日常茶飯事であろうな。しかし、後宮ではなくどうしてここに…?どの妃だ」

「それがどの家の者か分からずで…」

「何?」


その言葉を聞いて一気に険しい顔つきになる飛龍に、答えた医官も何かを悟ったのか顔がこわばり体を縮こめる。

春蕾はギクリと冷や汗を流し、そーっと後ろへ下がる。
そして飛龍に背を向け、忍足で部屋からの脱出を試みた。


「な、何しろ夜中でしたので顔も良く見えなくて…そ、それより飛龍様は、どうしてこちらへ?また此度の戦での傷ですか?」

「私ではない。此奴を診てやってくれ」


ガシッ
首根っこを掴まれ、グイグイと引き戻された。バレないと思ったのに。
この男は背中に目がついているのか?!


「わ、私は何ともありません。何しろ、何日も前のただの軽い捻挫ですから…あはは」


この医官が昨日、春蕾の足に包帯を巻いたのだ。
流石にそこを見られたら、妃と自分が同一人物ではないかと疑われかねない。
1人なら口封じできるかもしれないが、飛龍の前で正体がバレては元も子もない。

ここは何ともないふりをして…


「どこへいくつもりだ。早く座れ。」


首根っこを掴まれ、医者の前の椅子に強制的に座らせれた。もう逃げられない。

医官が春蕾の足を見ると、慣れた手つきで包帯を外していく。


「こ、これはっ…どこで怪我を…?」

「え、えーっと…に、庭で転んで…」

「昨日の妃殿下と同じような怪我だ…まさか…」



ゴクリと喉を鳴らす。
言うな。ここでは言わないでくれ。

そう心の中で必死に唱え、医官の目をじっと見つめて伝える。
心の中を読んでくれ、頼む、と。



「御兄妹ですか?」

「あ、あはは…そうかもですね~」



冷や汗が一気に引いていき、安堵の笑みが溢れる。これでバレる心配はない。そう思っていたのに。



「…ではやはり、昨日足を怪我した妃と言うのは、剣舞の踊り子か」

「っ」

「確かにあれはそうだったのかもしれません。あのような女性はこれまで王宮で見たことがありませんし」

「司春蕾」

「知らない…」

「踊り子はどこだ」

「知らないと言ってるでしょう!」

「なぜそんなに焦っているのだ」

「焦ってなどいません!」

「そうか。ならお前が代わりだ。足が治ったら抱いてやる。それが嫌なら踊り子の居場所を教えることだ」



飛龍はそう言うと、部屋を出て行った。
何と未練がましい男だ。剣舞の踊り子は太子殿下の妃になったというのに。




そして数日後、執務室へ向かう準備に包帯を巻く作業が加わっていた。
もちろん、まだ治っていないと見てすぐに分かるようにするためだ。

飛龍はまだこの宮殿の中におり、いつ出会すかと恐怖しながら過ごしている。


今日も部屋の扉を5センチだけ開けて、外に誰もいないことを確認し、ゆっくり出ると、前後左右3回ずつ確認して、壁に隠れるように廊下を渡る。

曲がり角の度に向こう側をチラッと覗き込み、奴がいないことを確認してからまた歩く。


この角を過ぎれば執務室。
そっと向こうに顔を覗かせ、誰もいない事を確認し、後ろ足を踏ん張って一気に駆け抜けようと体勢を整えた時…


「何をしている」

「っぁ!?!」


背後から声をかけられた。
何度も確認したはずなのにどうして後ろから?!
困惑する春蕾に飛龍は笑って言う。


「背後がガラ空きだ。武官の名門 司家の子息がこれでは聞いて呆れる」

「わ、私は武官ではない!」

「それで、踊り子はどこだ?」

「そ、れは…」

「答えられぬか」

「…ゃ…だから…それは…その…ぇっと」



その大きな体と鋭い視線に強気だった言葉はどんどん語気が弱くなり、しまいには消えてしまいそうなほど小さな声になる。

口籠る春蕾を前と同じようにヒョイと肩に担ぎ上げると、執務室とは反対の方へと歩き始めた。



「うわっ?!何をする!離せ!」

「時間切れだ。私は猶予を与えた。お前が守らなかっただけだ」

「ま、まだ怪我が治ってない!」

「嘘をつくのも大概にしろ」



遠ざかっていく執務室の扉に手を伸ばすだけ無駄で、すれ違う侍女たちに助けを求めようと声をかけるが、彼女たちの目は飛龍に釘付けで、春蕾に見向きもしないらしかった。



ドサッ


飛龍の部屋の寝台に押し倒された春蕾に覆い被さった男は低く問う。



「もう一度聞く、剣舞の踊り子はどこだ」

「…し、知らないっ」

「いいだろう」



飛龍の手が伸びてきて、乱暴に春蕾の顎を掴んで口を開かせ、そこに中指と人差し指を突っ込んできた。


「や、やめっぐふ…ん゛ん」


舌を撫でられ、喉の奥まで指を入れられ、耐えきれずに何度も嗚咽する。
苦しくて涙を流しても、飛龍は冷たく見下ろすだけで一向に辞めてはくれなかった。


「ぅぇ…ガハッ…ぉ…゛…」

「苦しいか?」


コクコクと頷く春蕾に、飛龍は不敵な笑みを浮かべるばかり。悪趣味な奴。



「ゲホッ…ゴホッ…っ」


やっと指から解放されたかと思うと間髪入れず、裾を捲り下着をずり下ろし、固く閉じた蕾に指を押し当てる。

涎で滑りやすくなった指はゆっくりと中に押し入り、あの時の感覚を呼び起こした。
その恐怖と不快感にブルリと肩を振るわせるが、そんなことなどお構いなしに2本の指は春蕾の中でバラバラに動き始める。


「っ!んっ…ぁ…ぁあ゛っ!」

「ここか」


一層高く鳴いた一瞬を見逃さなかった飛龍は呟くと、春蕾の中の一点に向けて集中的に指を動かし始めた。


「ぁ、まっ、て!んぁ、なにこれぇっぁぁ////」


そこを擦られるたびに否応にもビリビリと電流が走りぬけて腰が暴れ馬のように跳ね上がり、頭の中が真っ白になるほど思考が蝕まれてしまう。



「ぁあ…あっ…ゃぁっんん//」



耳に入ってくる声は別人のようで、自分の口から出た声とは思えないほどに甲高く色気を帯びている。


もうこのままいっそ快楽に飲まれてしまえば楽になれるのか……


先ほどまで小さく縮こまっていた春蕾自身も、今は反り返るほど固く大きくなっており、その相手が飛龍だと言うことも忘れて、キュンと蕾が指を締め付けてしまう。


ズポッ


しかし突然、指が引き抜かれ、快感が途切れた。
春蕾の蕾も自分で分かるほどにヒクヒクとひくついており、まるで辞めないでほしいとでも言いたげだった。
そんな蕾に今度は指よりも大きな男のそれが擦り付けられた。

しかし、春蕾の蝕まれた思考では、飛龍のそれすらも素直に欲しいと感じてしまうほど、絶頂へ駆け上がるための快感に飢えていた。

恍惚とした表情を浮かべながら飛龍を見つめるその顔に、飛龍自身も少し反応してしまう。



「これが欲しいか?」

「ほし…ぁ、ぃ、いらない…っ//」

「踊り子の居場所を教えれば、これで中の良いところを突いてやるぞ?」


クチュと音を立てて擦れ合うそこは、完全にお互いを欲しているのに、強情な両者は譲らない。


「ゃ//し、らなぃっ…ぁ…//」

「強情な奴だ。ただ答えるだけだ。簡単なことだろう」

「し、らなっ…ぁぁ…ん…//」

「腰が揺れているぞ」

「ふ、ん…ンン…ぁ//…」

「私の陽物が欲しいのだろう?」



それでも一向に答えない春蕾に根負けしたのか、飛龍は自身と春蕾のモノを一緒に握り、扱き始めた。

お互いの熱が直接伝わって、春蕾は恥ずかしくなり視線を逸らせるが、快感がいつもより早い速度でやってくる。
程なくして2人は飛龍の手の中で果てた。



「体が疼いてたまらなくなったら私のところへ来い。踊り子の居場所と引き換えに抱いてやる」



飛龍の言葉をかすかに聞きながら、春蕾は眠りに落ちた。


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