母獣列島

櫃間 武士

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鎮守の杜

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〇森山 静雄の回想。山奥の神社。早朝。
森山(娘の瑶子は神職になるために町の大学に通っとる時に藤原太志と知り合った。太志のやつは瑤子に一目ぼれで半ば強引に結婚することになった。二人して神社を継ぎたいというので、わしも仕方なく許してやったんじゃ)
 境内を掃除している巫女姿の 森山 瑶子(24)と神主姿の藤原 太志(27)。
 赤ん坊の泣く声が森の中から聞こえてくる。
瑶子「鎮守の杜で泣き声がするわ!?」
 驚いて顔を見合わせる瑶子と太志。


〇鎮守の杜。
 茂みの間に生まれたばかりの赤ん坊が泣いている。
瑶子「大変よ!捨て子だわ!」
 濡れ鼠の赤ん坊を抱き上げる太志。
 へその緒の切り口を見て驚く太志。
太志「へその緒が…まるで噛み切られたみたいだ!」
瑶子「貸して!」
 赤ん坊を受け取る瑶子。
 と、瑶子の全身に衝撃が走る。。
太志「どうした、瑶子?」
瑶子「いえ…なんでもないわ…」


〇森山家。居間。
森山「捨て子を育てたいだと!?」
瑶子「この子の顔を見てたら可愛くて、どうしようもなくなったのよ!お願いします、お父さん!」
瑶子の母「でも、あんたらも結婚したばかりで、自分の子供もこれからなのに…」
太志「お義母さんの言うとおりだ、瑶子。赤ん坊は施設に預けるんだ」
瑶子「お願いよ!お母さんもこの子を抱いてみたらわかるわ」
 瑶子の母、瑶子から赤ん坊を手渡される。
 瑶子の母の全身に衝撃が走る。。
瑶子の母「……可愛い顔しとる。この顔見てしもうたら、どないもしょうがあらへんなあ」
森山「お、おい!お前までそんなこと言うのか?」
 当惑する森山と太志。
 瑶子と瑶子の母はほほ笑みながら赤ん坊をあやしている。
森山(瑶子と瑶子の母親に押し切られる形で、その赤子は瑶子の養子になり、育人と名付けられた)


〇神社の境内。
森山(育人はたちまち村のおなご達を魅了し、崇拝の対象になった)
 よちよち歩きをしている育人。
 瑶子と瑶子の母、そして村の女たち十数名がその様子を恍惚の表情で見守っている。
 年長の男の子たちが自分の母親の服を引っ張り、空腹を訴える。
男の子A「なあ、かーちゃん!ハラ減ったよう!」
男の子B「もう家に帰ろうよう!」
 母親、邪険に男の子の手を払いのける。
母親「うるさいわね!帰りたければ一人で帰れ!」
 男の子、不貞腐れる。
 憎悪の眼で育人を見る。
男の子「なんでぇ!馬鹿野郎!」
 男の子、石を拾って育人に向かって投げつける。
 石が育人の額に当たる。
 額から血を流しながら、あお向けに地面に倒れる育人。
女たち「ああああっ!?」
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