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奇跡の子
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○女岩島診療所。診察室。夜。
散らかった室内を片づけている杏奈医師とあゆみ看護士。
椅子に腰かけ、マグカップを両手で抱え、コーヒーを飲んでいる育人。
育人「――言われてみれば、思い当たることがある。児童相談所の女の人は、俺が足首を握ったとたんにオヤジに襲い掛かった。村長の奥さんも、俺の手を握ったら急に俺を引き取ると言いだした」
杏奈「他に思い当たることはない?」
育人「俺はずっとオヤジと二人っきりだった。よその人と話したり、触れたりしたことがない」
あゆみ「(涙ぐんで)ウウッ!かわいそうな育人くん!」
杏奈「あなたのお母さんは?」
育人「知らない。物心ついた頃には、俺はオヤジと二人きりだった。母親は死んだと聞いている」
杏奈「そうなの。あなたの出生についてもっと調べる必要があるわね」
育人「どうして俺のことなんか調べる?」
杏奈「育人のことは何でも知りたいのよ!ああ!愛おしい育人!理屈じゃないのよ!あなたのためなら何でもしてあげたいの!」
育人「先生みたいな頭のいい人が、そんなこと言うなんて?頭がおかしい!」
杏奈「そうね、私はおかしくなっているわ。でもね、今はとっても幸せなのよ」
あゆみ「私もです!もう育人が可愛くて可愛くて、食べちゃいたいです!」
育人「女の人がみんなおかしくなるのは、やっぱり俺のせいなんだな。俺は、まともじゃないんだ!」
杏奈「自分を卑下しては駄目よ、育人。あなたは奇跡の子なのよ。何て素晴らしい能力かしら!育人!あなたが望んだら、世界を手にすることも夢ではないわ!」
育人「世界……!?」
杏奈「そうよ!育人!あなたの望みはなあに!?」
育人「俺は……」
育人、遠くを見る目で拳を握りしめる。
育人「俺は世界を滅茶苦茶にぶっ壊したい!!」
杏奈、育人を抱き締める。
杏奈「仰せのままに…。私たちは永遠にあなたの保護者、忠実なしもべよ」
と、あゆみ、育人の頬の傷を見つけて叫ぶ。
あゆみ「ああっ!?傷がまた増えてるわ!!」
育人「ああ。どうてことないさ。また、雄太に因縁つけられただけだ」
杏奈「雄太ってあいつね。漁協の組合長の息子」
あゆみ「育人の綺麗な肌に傷をつけるなんて許せないわ」
脱脂綿で育人の傷の手当をする杏奈。
あゆみ「先生!あのクソガキ!懲らしめてやりましょうよ!」
杏奈「そうね。ちょうど実験もできるし……」
杏奈とあゆみ、互いの顔を見つめ、ニヤリと笑う。
散らかった室内を片づけている杏奈医師とあゆみ看護士。
椅子に腰かけ、マグカップを両手で抱え、コーヒーを飲んでいる育人。
育人「――言われてみれば、思い当たることがある。児童相談所の女の人は、俺が足首を握ったとたんにオヤジに襲い掛かった。村長の奥さんも、俺の手を握ったら急に俺を引き取ると言いだした」
杏奈「他に思い当たることはない?」
育人「俺はずっとオヤジと二人っきりだった。よその人と話したり、触れたりしたことがない」
あゆみ「(涙ぐんで)ウウッ!かわいそうな育人くん!」
杏奈「あなたのお母さんは?」
育人「知らない。物心ついた頃には、俺はオヤジと二人きりだった。母親は死んだと聞いている」
杏奈「そうなの。あなたの出生についてもっと調べる必要があるわね」
育人「どうして俺のことなんか調べる?」
杏奈「育人のことは何でも知りたいのよ!ああ!愛おしい育人!理屈じゃないのよ!あなたのためなら何でもしてあげたいの!」
育人「先生みたいな頭のいい人が、そんなこと言うなんて?頭がおかしい!」
杏奈「そうね、私はおかしくなっているわ。でもね、今はとっても幸せなのよ」
あゆみ「私もです!もう育人が可愛くて可愛くて、食べちゃいたいです!」
育人「女の人がみんなおかしくなるのは、やっぱり俺のせいなんだな。俺は、まともじゃないんだ!」
杏奈「自分を卑下しては駄目よ、育人。あなたは奇跡の子なのよ。何て素晴らしい能力かしら!育人!あなたが望んだら、世界を手にすることも夢ではないわ!」
育人「世界……!?」
杏奈「そうよ!育人!あなたの望みはなあに!?」
育人「俺は……」
育人、遠くを見る目で拳を握りしめる。
育人「俺は世界を滅茶苦茶にぶっ壊したい!!」
杏奈、育人を抱き締める。
杏奈「仰せのままに…。私たちは永遠にあなたの保護者、忠実なしもべよ」
と、あゆみ、育人の頬の傷を見つけて叫ぶ。
あゆみ「ああっ!?傷がまた増えてるわ!!」
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