21 / 26
第03章 初めてのダンジョン攻略
21
しおりを挟む
ゴブリンの住むダンジョンに到着する手前の森に大きな竹林があった。
この異世界に転生してから竹林を見るのは初めてだった。
「竹林って珍しいわね」
私が思わずそうつぶやくと僧侶のスラストが意外そうに言った。
「ほほう!お主、マダケを知っておるのか?」
「昔住んでいた家の裏山が竹林だったの」
「この竹林は東の国からやって来た古の賢者が持ち込んで栽培したものだそうだ。昔はこのあたりに七人の賢者が隠匿し『竹林の七賢』と呼ばれておったのじゃ」
「へぇー!そうなんですか…」
特に興味のない私。
「剪伐の魔法!」
私が呪文を唱えると一挙に目の前の十数本の竹が根元から切断されて倒れた。
「これはいい物が手に入ったわ」
「こ、これ!何をしておる!?」
「ゴブリンと戦うために竹ヤリを作っておこうと思って」
「そんな物でゴブリンと戦うつもりか!?」
すると珍しく寡黙な格闘士のローリングが訊いてきた。
「エルフ娘!お前は竹を武器にするつもりか!?」
「だって他に武器がないんだもの」
「魔法使いなら魔法の力だけで戦うべきではないか!」
「魔法力だけだと威力が足りないから物理的な武器を使うのよ。竹やりを魔法で飛ばしてみようと思うの」
「俺は格闘士だ。この鍛えぬいた己の肉体だけを武器にして闘うのみだ」
「私、攻撃魔法を知らないから…」
「ワハハハハッ!お気楽なことだ!せいぜい頑張るがよい!」
脳筋のローリングは私をあざ笑いながら先に歩いて行った。
スラストはさすが僧侶らしく私に優しく諭そうとした。
「見たところお主のMP保有量は素晴らしいものだ。もっと戦闘に役立つ魔法を学べば一級魔導士も夢ではないぞ」
「いやー、別に私、魔法使いになりたいわけじゃないので」
「そうか。惜しいのう。それではお主は何になりたいのじゃ?」
「一流のエンターテイナーです?」
「はあー!?なんじゃ、そりゃあ?」
竹林を抜けると、私たちは遂に目的のゴブリンのダンジョンに到着した。
ダンジョンの入り口は岩山に空いた小さな洞穴だった。
その洞穴は人が一人ギリギリ通れるだけの幅しかなかった。
確かにこれでは荷車で物資は運べない。
「よし!いよいよダンジョンに突入するぞ!みんな、油断をするな!」
近衛騎士団長のラインターレルが皆にハッパをかけた。
「それでは荷物持ちのエルフと獣人達。貴様らに先導してもらうぞ!せいぜい罠にかからぬように気を付けることだな!ハハハハッ!」
私は緊張した面持ちでダンジョンの入り口の前に立った。
大きく深呼吸をすると、クルリとダンジョンに背を向け正面に向かってお辞儀をした。
「みなさん!おはこんばんちは!そして初めまして!朝比奈ステラです!初めての配信なので今日はちょっと気合が入っています。これから東の森のダンジョン攻略の様子をライブで配信するから見ていて下さいね」
ラインターレルが慌てふためいた。
「おい!エルフ!貴様は何を喋っているのだ?」
「ああ!『おはこんばんちは』は『おはよう』+『こんにちは』+『こんばんは』を組み合わせた挨拶です」
「そうではない!配信とはどういう意味だ!?」
「私の初めてのダンジョン探索の様子をライブ配信しているのです」
「何だと!?何を勝手なことをしている!今すぐ止めるんだ!さもなくば…」
ラインターレルが剣を抜いて凄んだ。
この異世界に転生してから竹林を見るのは初めてだった。
「竹林って珍しいわね」
私が思わずそうつぶやくと僧侶のスラストが意外そうに言った。
「ほほう!お主、マダケを知っておるのか?」
「昔住んでいた家の裏山が竹林だったの」
「この竹林は東の国からやって来た古の賢者が持ち込んで栽培したものだそうだ。昔はこのあたりに七人の賢者が隠匿し『竹林の七賢』と呼ばれておったのじゃ」
「へぇー!そうなんですか…」
特に興味のない私。
「剪伐の魔法!」
私が呪文を唱えると一挙に目の前の十数本の竹が根元から切断されて倒れた。
「これはいい物が手に入ったわ」
「こ、これ!何をしておる!?」
「ゴブリンと戦うために竹ヤリを作っておこうと思って」
「そんな物でゴブリンと戦うつもりか!?」
すると珍しく寡黙な格闘士のローリングが訊いてきた。
「エルフ娘!お前は竹を武器にするつもりか!?」
「だって他に武器がないんだもの」
「魔法使いなら魔法の力だけで戦うべきではないか!」
「魔法力だけだと威力が足りないから物理的な武器を使うのよ。竹やりを魔法で飛ばしてみようと思うの」
「俺は格闘士だ。この鍛えぬいた己の肉体だけを武器にして闘うのみだ」
「私、攻撃魔法を知らないから…」
「ワハハハハッ!お気楽なことだ!せいぜい頑張るがよい!」
脳筋のローリングは私をあざ笑いながら先に歩いて行った。
スラストはさすが僧侶らしく私に優しく諭そうとした。
「見たところお主のMP保有量は素晴らしいものだ。もっと戦闘に役立つ魔法を学べば一級魔導士も夢ではないぞ」
「いやー、別に私、魔法使いになりたいわけじゃないので」
「そうか。惜しいのう。それではお主は何になりたいのじゃ?」
「一流のエンターテイナーです?」
「はあー!?なんじゃ、そりゃあ?」
竹林を抜けると、私たちは遂に目的のゴブリンのダンジョンに到着した。
ダンジョンの入り口は岩山に空いた小さな洞穴だった。
その洞穴は人が一人ギリギリ通れるだけの幅しかなかった。
確かにこれでは荷車で物資は運べない。
「よし!いよいよダンジョンに突入するぞ!みんな、油断をするな!」
近衛騎士団長のラインターレルが皆にハッパをかけた。
「それでは荷物持ちのエルフと獣人達。貴様らに先導してもらうぞ!せいぜい罠にかからぬように気を付けることだな!ハハハハッ!」
私は緊張した面持ちでダンジョンの入り口の前に立った。
大きく深呼吸をすると、クルリとダンジョンに背を向け正面に向かってお辞儀をした。
「みなさん!おはこんばんちは!そして初めまして!朝比奈ステラです!初めての配信なので今日はちょっと気合が入っています。これから東の森のダンジョン攻略の様子をライブで配信するから見ていて下さいね」
ラインターレルが慌てふためいた。
「おい!エルフ!貴様は何を喋っているのだ?」
「ああ!『おはこんばんちは』は『おはよう』+『こんにちは』+『こんばんは』を組み合わせた挨拶です」
「そうではない!配信とはどういう意味だ!?」
「私の初めてのダンジョン探索の様子をライブ配信しているのです」
「何だと!?何を勝手なことをしている!今すぐ止めるんだ!さもなくば…」
ラインターレルが剣を抜いて凄んだ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる