3 / 26
第01章 転生してみた
03
しおりを挟む
私が異世界に転生してから三日がたった。
私は石造りの階段を下りて地下にある氷室に入った。
ひんやりとした冷気に包まれた暗い部屋には、色んな野菜や肉が保存されている。
この氷室は魔法の力で一年中冷えているのだ。
私は卵と肉と野菜、そして酒瓶を取り出すと一階に戻り、台所に運んで自分の朝食の用意した。
大きな中華鍋の中に卵と肉と野菜を入れると、私は心の中で「調理の魔法」と呪文を唱えた。
すると中華鍋が熱を持ち、何度か鍋を振るうと美味しそうな肉と玉子の煎り付けが出来ていた。
この世界ではMPさえあれば、決まった呪文を唱えたら誰でも魔法が使えるのだ。
この日常生活のための生活魔法を使えば蛇口から水もお湯も出てくるし、夜でも照明がつくし、トイレは何と水洗式だった。
こんな便利な魔法があるからこの世界は科学文明が中世のレベルで停滞しているようだ。
まあ魔法だろうと科学だろうと生活が快適ならばなんでもいい。
「最初は魔法を使うのも楽しかったんだけどねぇ…」
中華鍋の料理を皿に移しながら私は溜息をついた。
「もっと楽しい世界に転生したかったわ」
私はたった三日で暇を持て余し退屈で死にそうだった。
「もう大体必要な生活魔法は覚えたし、毎日自分の食事の用意をしたらあとは屋敷で魔導書読みながらゴロゴロ寝ているだけ。はっきり言ってヒマだわ………」
イルマ様が長年かけて私を転生させたのも納得だ。
暇で他にすることがなかったからだろう。
しかし、自分がただの暇つぶしで転生させられたと知り、私のモチベーションはダダ下がりだった。
私は食堂の長テーブルに料理を置くと、酒瓶を開けて黄金色のエールをガラスジョッキに注いだ。
「朝からエール!最高だわ!転生ガチャに外れたんだからこれぐらいのご褒美がないとね」
と、その時、どこからともなくイルマ様の声が響いてきた。
『転生ガチャとはどういう意味だい?』
「イ、イルマ様!?」
『意味はわからんが、どうやら儂に文句があるようだね』
「そ、そんなことありませんよお!」
私は揉み手をすりながら作り笑顔を浮かべた。
イルマ様の機嫌を損ねたら私みたいなホムンクルスはたちまち塵芥に戻されてしまう。
「どこからイルマ様の声が聞こえるのかしら!?声はすれども姿は見えず……?」
『お前さんの額に取り付けた青碧石が通信機になっているのじゃ。お前さんに渡した魔導書に説明が書いてあるじゃろうが!』
「すみません!まだ、そこまで読んでいませんでした」
『まあよい!とっとと食事を済ませて居間においで』
「はーい!直ちに参ります!」
そう言いながら、せっかくなので私はガラスジョッキに入ったエールをゴクゴクと飲んだ。
『朝っぱらからエール飲んでるんじゃないよ!』
私はあわててキョロキョロを食堂を見まわした。
『ずるーい!イルマ様、やっぱりどこからか覗いているんでしょ』
「いいから早く来い!」
私が居間に飛んでゆくと、イルマ様は大きなソファーに寝ころびながらワインを飲んでいた。
(何だ!自分だって朝っぱらからワインを飲んでいるじゃない!)
「あれをご覧!」
イルマ様が壁を指さした。
居間の壁には大きな額縁が飾られていた。
確か以前に見た時は、額縁にはイルマ様の肖像画が飾られていた。
しかし、今は額縁の中にはイルマ様の脇に立つ私の姿が映し出されていた。
「あれ!?私の姿が映っているわ!!」
私が驚いてそう叫んだ時、額縁の中の私の映像も「あれ!?私の姿が映っているわ!!」と叫んだ。
「へぇー!あれ、モニターですか?リアルタイムに私の姿が映っているのですね!」
「それだけではないぞ。過去の記録も再生できるのじゃ」
イルマ様が指をパチンと鳴らした。
「はーい!直ちに参ります!」
そう言いながら、台所でガラスジョッキに入ったエールをゴクゴクと飲んでいる私の姿が映し出された。
「ホエーッ!!録画機能もあるんですか!優れものですね」
「お前さんの額の青碧石は現在位置を知らせてくれて、周囲の風景を記録できるんじゃ。百年前に儂が作った魔法道具じゃ」
「GPSと監視カメラの機能もあるんだ。凄いですね!どういう仕組みなんですか?」
「魔導書に書いとるから自分で調べろ!」
イルマ様は冷たく言い放った。
「そんなことよりも、お前さんがこの世界に転生してもう三日じゃ!なのに毎日食っては寝てるだけの毎日ではないか!儂が何のためにお前さんを産み出したと思っとるのじゃ」
「ただの暇つぶしのために私を造ったのでしょ」
私は不貞腐れて唇を突き出した。
私は石造りの階段を下りて地下にある氷室に入った。
ひんやりとした冷気に包まれた暗い部屋には、色んな野菜や肉が保存されている。
この氷室は魔法の力で一年中冷えているのだ。
私は卵と肉と野菜、そして酒瓶を取り出すと一階に戻り、台所に運んで自分の朝食の用意した。
大きな中華鍋の中に卵と肉と野菜を入れると、私は心の中で「調理の魔法」と呪文を唱えた。
すると中華鍋が熱を持ち、何度か鍋を振るうと美味しそうな肉と玉子の煎り付けが出来ていた。
この世界ではMPさえあれば、決まった呪文を唱えたら誰でも魔法が使えるのだ。
この日常生活のための生活魔法を使えば蛇口から水もお湯も出てくるし、夜でも照明がつくし、トイレは何と水洗式だった。
こんな便利な魔法があるからこの世界は科学文明が中世のレベルで停滞しているようだ。
まあ魔法だろうと科学だろうと生活が快適ならばなんでもいい。
「最初は魔法を使うのも楽しかったんだけどねぇ…」
中華鍋の料理を皿に移しながら私は溜息をついた。
「もっと楽しい世界に転生したかったわ」
私はたった三日で暇を持て余し退屈で死にそうだった。
「もう大体必要な生活魔法は覚えたし、毎日自分の食事の用意をしたらあとは屋敷で魔導書読みながらゴロゴロ寝ているだけ。はっきり言ってヒマだわ………」
イルマ様が長年かけて私を転生させたのも納得だ。
暇で他にすることがなかったからだろう。
しかし、自分がただの暇つぶしで転生させられたと知り、私のモチベーションはダダ下がりだった。
私は食堂の長テーブルに料理を置くと、酒瓶を開けて黄金色のエールをガラスジョッキに注いだ。
「朝からエール!最高だわ!転生ガチャに外れたんだからこれぐらいのご褒美がないとね」
と、その時、どこからともなくイルマ様の声が響いてきた。
『転生ガチャとはどういう意味だい?』
「イ、イルマ様!?」
『意味はわからんが、どうやら儂に文句があるようだね』
「そ、そんなことありませんよお!」
私は揉み手をすりながら作り笑顔を浮かべた。
イルマ様の機嫌を損ねたら私みたいなホムンクルスはたちまち塵芥に戻されてしまう。
「どこからイルマ様の声が聞こえるのかしら!?声はすれども姿は見えず……?」
『お前さんの額に取り付けた青碧石が通信機になっているのじゃ。お前さんに渡した魔導書に説明が書いてあるじゃろうが!』
「すみません!まだ、そこまで読んでいませんでした」
『まあよい!とっとと食事を済ませて居間においで』
「はーい!直ちに参ります!」
そう言いながら、せっかくなので私はガラスジョッキに入ったエールをゴクゴクと飲んだ。
『朝っぱらからエール飲んでるんじゃないよ!』
私はあわててキョロキョロを食堂を見まわした。
『ずるーい!イルマ様、やっぱりどこからか覗いているんでしょ』
「いいから早く来い!」
私が居間に飛んでゆくと、イルマ様は大きなソファーに寝ころびながらワインを飲んでいた。
(何だ!自分だって朝っぱらからワインを飲んでいるじゃない!)
「あれをご覧!」
イルマ様が壁を指さした。
居間の壁には大きな額縁が飾られていた。
確か以前に見た時は、額縁にはイルマ様の肖像画が飾られていた。
しかし、今は額縁の中にはイルマ様の脇に立つ私の姿が映し出されていた。
「あれ!?私の姿が映っているわ!!」
私が驚いてそう叫んだ時、額縁の中の私の映像も「あれ!?私の姿が映っているわ!!」と叫んだ。
「へぇー!あれ、モニターですか?リアルタイムに私の姿が映っているのですね!」
「それだけではないぞ。過去の記録も再生できるのじゃ」
イルマ様が指をパチンと鳴らした。
「はーい!直ちに参ります!」
そう言いながら、台所でガラスジョッキに入ったエールをゴクゴクと飲んでいる私の姿が映し出された。
「ホエーッ!!録画機能もあるんですか!優れものですね」
「お前さんの額の青碧石は現在位置を知らせてくれて、周囲の風景を記録できるんじゃ。百年前に儂が作った魔法道具じゃ」
「GPSと監視カメラの機能もあるんだ。凄いですね!どういう仕組みなんですか?」
「魔導書に書いとるから自分で調べろ!」
イルマ様は冷たく言い放った。
「そんなことよりも、お前さんがこの世界に転生してもう三日じゃ!なのに毎日食っては寝てるだけの毎日ではないか!儂が何のためにお前さんを産み出したと思っとるのじゃ」
「ただの暇つぶしのために私を造ったのでしょ」
私は不貞腐れて唇を突き出した。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる