74 / 89
第3章「創世」
70
しおりを挟む 周子が投げたナイフを取り上げようとしたが、遅かった。
木賀島の骨ばった手は軽々とそれを持ち上げ、そして、俺の目の前に翳した。
「ん~?なあに~?これ?」
「木賀島……ッ」
「もしかしてさぁ、宰はこれ使って欲しいわけぇ~?」
そんなわけないだろ。
慌ててそのナイフを叩き落とそうとするけど、避けられる。
それどころか。
「ッ、」
すぐ顔の横、突き立てられる銀の刃物に前髪数本が散る。
「あっ、いっけねえ~手ぇ滑っちゃったー」
唇を歪めて笑う木賀島。
痛みはなかった。なかったが、頬に濡れた感触が溢れ、横顔を汚す。
「木賀島君、やめろっ!」
檻の外、ガシャガシャと鉄格子を揺する音がした。
どちらが捕まっているのかわからないぐらいの周子の青褪めっぷりはなかなかの傑作だが、あいにく引き攣った俺の顔の筋肉は今笑えそうにない。
「っ、離せ、離せってばッ!」
腿を掴まれ、腹部へ膝をつけるような形で開脚させられる。
持ち上げられた腰の痛みはこの際どうでもいい。
だけど。
「――ッ」
ケツに食い込むほど引っ張られた下着にナイフを走らせる木賀島に、糸も簡単に切断された下着は最早原型を留めていなくて。
ひやりとした外気に晒される下半身。
剥き出しになったそこを手で隠そうとする余裕すら無くて。
「……ッ」
檻の外、鉄格子を掴んだまま呆然とする周子の顔が見え、瞬間、顔面が火を噴くように熱くなった。
「っ、……やめ……ろ……ッ」
今更木賀島に自分の声が届いていると思っていない。それでも、最後まで抵抗はやめたくなかった。
瞬間、ひやりとしたものが窄みに押し付けられる。
温度を感じさせないその無機質感がナイフの柄だと気付いたとき、頭の中が真っ白になった。
「そんなにさぁ、これが欲しいんならあげるよ」
なんて笑いながら、俺の制止も聞かずに木賀島は思いっきりそのナイフを俺の中に捩じ込んだ。
「……あ?」
突き刺さるようなその痛みに思考が停止する。
持ち上げられた自分の下半身。そこから見える銀の刃物に、体内のこの金属物の存在に目の前が真っ暗になって。
「わぁ~、さすがにギチギチだねぇ。でも安心して~?……もっとあげるから」
木賀島の声がやけに遠くに聞こえた。自分の下半身に目が離せなくて、息が、止まる。
それも一瞬の出来事で、慌てて引き抜こうと唯一頭を出したナイフを掴むが手のひらに鋭い痛みが走り、ぬるぬると滑って痛くて思うように掴むことが出来なくて。
「っ、……んで…ッ、なんで……ッ、俺が、こんな目に……ッ」
「右代君!ダメだ、素手で触っては危険だっ!」
周子のアホが何か叫んでいる。
手のひらが痛い。けど、これを早く抜かないと、抜かないと。こんな姿、誰かに見られたら。じんじんと焼けるように痛む手のひら同様、体内の金属は熱を帯び、体温と同化し始めて。
ああ、そういえば、木賀島のやつはどこに行ったんだ。
挿入されたナイフにばかり気が向いていた俺がいつの間にかいなくなってる木賀島に気付いたときだった。
ガラガラガラ、と目の前に一本のナイフと二本のフォークが落ちる。
そして、木賀島の足。
「探してみたんだけど三本しかなかったよぉ、ごめんね~?」
そう落ちたナイフを手にした木賀島は申し訳なさそうに眉を下げる。
今度こそ、やつの言葉を理解することができなかった。
木賀島の骨ばった手は軽々とそれを持ち上げ、そして、俺の目の前に翳した。
「ん~?なあに~?これ?」
「木賀島……ッ」
「もしかしてさぁ、宰はこれ使って欲しいわけぇ~?」
そんなわけないだろ。
慌ててそのナイフを叩き落とそうとするけど、避けられる。
それどころか。
「ッ、」
すぐ顔の横、突き立てられる銀の刃物に前髪数本が散る。
「あっ、いっけねえ~手ぇ滑っちゃったー」
唇を歪めて笑う木賀島。
痛みはなかった。なかったが、頬に濡れた感触が溢れ、横顔を汚す。
「木賀島君、やめろっ!」
檻の外、ガシャガシャと鉄格子を揺する音がした。
どちらが捕まっているのかわからないぐらいの周子の青褪めっぷりはなかなかの傑作だが、あいにく引き攣った俺の顔の筋肉は今笑えそうにない。
「っ、離せ、離せってばッ!」
腿を掴まれ、腹部へ膝をつけるような形で開脚させられる。
持ち上げられた腰の痛みはこの際どうでもいい。
だけど。
「――ッ」
ケツに食い込むほど引っ張られた下着にナイフを走らせる木賀島に、糸も簡単に切断された下着は最早原型を留めていなくて。
ひやりとした外気に晒される下半身。
剥き出しになったそこを手で隠そうとする余裕すら無くて。
「……ッ」
檻の外、鉄格子を掴んだまま呆然とする周子の顔が見え、瞬間、顔面が火を噴くように熱くなった。
「っ、……やめ……ろ……ッ」
今更木賀島に自分の声が届いていると思っていない。それでも、最後まで抵抗はやめたくなかった。
瞬間、ひやりとしたものが窄みに押し付けられる。
温度を感じさせないその無機質感がナイフの柄だと気付いたとき、頭の中が真っ白になった。
「そんなにさぁ、これが欲しいんならあげるよ」
なんて笑いながら、俺の制止も聞かずに木賀島は思いっきりそのナイフを俺の中に捩じ込んだ。
「……あ?」
突き刺さるようなその痛みに思考が停止する。
持ち上げられた自分の下半身。そこから見える銀の刃物に、体内のこの金属物の存在に目の前が真っ暗になって。
「わぁ~、さすがにギチギチだねぇ。でも安心して~?……もっとあげるから」
木賀島の声がやけに遠くに聞こえた。自分の下半身に目が離せなくて、息が、止まる。
それも一瞬の出来事で、慌てて引き抜こうと唯一頭を出したナイフを掴むが手のひらに鋭い痛みが走り、ぬるぬると滑って痛くて思うように掴むことが出来なくて。
「っ、……んで…ッ、なんで……ッ、俺が、こんな目に……ッ」
「右代君!ダメだ、素手で触っては危険だっ!」
周子のアホが何か叫んでいる。
手のひらが痛い。けど、これを早く抜かないと、抜かないと。こんな姿、誰かに見られたら。じんじんと焼けるように痛む手のひら同様、体内の金属は熱を帯び、体温と同化し始めて。
ああ、そういえば、木賀島のやつはどこに行ったんだ。
挿入されたナイフにばかり気が向いていた俺がいつの間にかいなくなってる木賀島に気付いたときだった。
ガラガラガラ、と目の前に一本のナイフと二本のフォークが落ちる。
そして、木賀島の足。
「探してみたんだけど三本しかなかったよぉ、ごめんね~?」
そう落ちたナイフを手にした木賀島は申し訳なさそうに眉を下げる。
今度こそ、やつの言葉を理解することができなかった。
0
お気に入りに追加
143
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
バルサック戦記 -片翼のリクと白銀のルーク-(旧題:片翼のリク ‐退魔師の一族だけど、魔王軍に就職しました‐)
寺町朱穂
ファンタジー
リク・バルサックは恋愛ゲームの世界で、主人公のハーレム要員になるキャラだ。しかし、ゲーム開始の10年前「退魔師としての才能がないから」という理由で、退魔師の一族を追放されてしまう。 少しずつ歯車が狂った世界で、リクが辿り着いたのは…… ※アルファポリス様で出版が決まりました。 2016年11月下旬、2巻発売予定!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

友人Aの俺は女主人公を助けたらハーレムを築いていた
山田空
ファンタジー
絶対に報われない鬱ゲーというキャッチコピーで売り出されていたゲームを買った俺はそのゲームの主人公に惚れてしまう。
ゲームの女主人公が報われてほしいそう思う。
だがもちろん報われることはなく友人は死ぬし助けてくれて恋人になったやつに裏切られていじめを受ける。
そしてようやく努力が報われたかと思ったら最後は主人公が車にひかれて死ぬ。
……1ミリも報われてねえどころかゲームをする前の方が報われてたんじゃ。
そう考えてしまうほど報われない鬱ゲーの友人キャラに俺は転生してしまった。
俺が転生した山田啓介は第1章のラストで殺される不幸の始まりとされるキャラクターだ。
最初はまだ楽しそうな雰囲気があったが山田啓介が死んだことで雰囲気が変わり鬱ゲーらしくなる。
そんな友人Aに転生した俺は半年を筋トレに費やす。
俺は女主人公を影で助ける。
そしたらいつのまにか俺の周りにはハーレムが築かれていて
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる