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第2章「深淵/アビス」
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「そうか!森 泰斗!あんたは転生する時に、チートが使えると選択をしなかったんだな!」
俺は弓で森に狙いを付けたまま話しを続けた。
「フン!その通りだ。『チートは使いますか?』と尋ねられた時、私は状況がよく飲み込めずに返事をためらっていた。すると、自動的にチートは使わない設定にされてしまったのだ」
森は苦々しげに、吐き捨てるように言った。
「そうか。時間切れになったら、強制的にどちらか選択するシステムだったのか」
「お前たちはあんな訳も分からない状況で、よくもチートを受け入れたな」
「俺たちはあんたみたいに深く物事を考えない単純バカばっかりなんでね」
「あら!カエル男君と一緒にしないでもらいたいわね!私はチートが使える方が有利だと瞬時に判断して、選択したのよ」
香菜子が不満げに会話に割り込んできた。
「ちょっと、ちょっと!今、緊迫した場面なんだから邪魔するなよ!」
森がクククッと面白そうに笑い声をあげた。
「君は一年生の西 香菜子だったな。なかなか聡明で度胸もあるし、面白い女だ。気に入ったぞ」
「それはどうも、ありがとう!」
香菜子はけっして俺には見せたことのない朗らかな笑顔を浮かべ、森に対して軽く会釈をした。
「話を戻そうか。森 泰斗!あんたは自分ではいくらタブレットを集めても錬金術は使えないから、俺たち錬金術師を集めて召使にするつもりだな」
「そうとも!正確には召使じゃない。ただの奴隷だよ」
「誰があんたの奴隷になんかなるかよ!」
「ふふん?西 香菜子、君も同じ意見なのか?」
「わ、私は………」
香菜子は俺と森の顔を交互に見比べた。
「おいおい!香菜子!何を考えているんだよ!ビシッと言ってやれよ!さあ!」
「ごめんなさい!」
そう言って、香菜子は深々と頭を下げた。
そして、俺の脇をすり抜け、森 泰斗の方へと歩いていった。
「えええっ!?香菜子!?裏切るのかよお!!」
「だって、森さんの方がイケメンだし、頼りになるし、生活安定しそうだし……」
香菜子はうつむきながら、森の背後に隠れていった。
「賢明な判断だよ、西君」
森は自信満々で居丈高な態度でフンと鼻を鳴らした。
「西君。君はタブレットを使って次々と新しい術式を覚え、私の王国建設のために働いてほしい」
「森君の王国を作る手助けをするわけね」
「君の働き次第で、私が王となった時に君を王妃として迎えてやってもいいぞ」
「まあ!素敵!お姫様は女の子なら誰でも憧れる夢だわ!」
「西君。私の邸宅に戻って、二人で祝杯をあげよう」
「はい!」
森とか香菜子は仲睦まじい様子で並んで階段を登っていこうとした。
「待て!この子達を開放してやれよ!」
「うるさい小蠅だ!お前でも何かの役に立つかもしれん。メイド共、そいつを捕らえて牢屋に入れておけ!」
森が命令すると、地下室を警護していたメイド達が剣を構えて、俺を取り囲んだ。
「よせ!本当に撃つぞ!」
「やれるものなら、やってみろ!」
森は鎧を着ているから、どうせ当たっても致命傷にはならないだろう。
俺は遂に魔法の矢を放った。
AIMの術式で照準を定めていたため、矢は一直線に森の胸に向かって飛んで行った。
矢が鎧の胸当てに刺さる。
と、その直前に矢は鎧を包んでいた光の壁に弾き飛ばされ、そのまま矢を放った俺に向かって跳ね返って来た。
「ウッ!!」
矢は俺の腹に深々と突き刺さり、爆発した。
俺の腹部の肉が削がれて、臓物がはみ出した。
血のしたたりは床に広がり、松明の灯りにキラキラと輝いている。
俺は息も絶え絶えの瀕死状態で、ゼーゼーと喘いでいた。
「―――ちくしょう!どんな攻撃も……跳ね返すっては……本当だったな……」
俺はかなりのダメージを、HPが既に半分になっていた。
だが、今の俺は満腹状態だから時間さえかければ、どんな傷も癒え、体力は回復する筈だ。
「そうは……簡単には……休ませてくれないか……」
俺を取り囲んでいたメイド達がじわじわと近寄って来た。
俺は弓で森に狙いを付けたまま話しを続けた。
「フン!その通りだ。『チートは使いますか?』と尋ねられた時、私は状況がよく飲み込めずに返事をためらっていた。すると、自動的にチートは使わない設定にされてしまったのだ」
森は苦々しげに、吐き捨てるように言った。
「そうか。時間切れになったら、強制的にどちらか選択するシステムだったのか」
「お前たちはあんな訳も分からない状況で、よくもチートを受け入れたな」
「俺たちはあんたみたいに深く物事を考えない単純バカばっかりなんでね」
「あら!カエル男君と一緒にしないでもらいたいわね!私はチートが使える方が有利だと瞬時に判断して、選択したのよ」
香菜子が不満げに会話に割り込んできた。
「ちょっと、ちょっと!今、緊迫した場面なんだから邪魔するなよ!」
森がクククッと面白そうに笑い声をあげた。
「君は一年生の西 香菜子だったな。なかなか聡明で度胸もあるし、面白い女だ。気に入ったぞ」
「それはどうも、ありがとう!」
香菜子はけっして俺には見せたことのない朗らかな笑顔を浮かべ、森に対して軽く会釈をした。
「話を戻そうか。森 泰斗!あんたは自分ではいくらタブレットを集めても錬金術は使えないから、俺たち錬金術師を集めて召使にするつもりだな」
「そうとも!正確には召使じゃない。ただの奴隷だよ」
「誰があんたの奴隷になんかなるかよ!」
「ふふん?西 香菜子、君も同じ意見なのか?」
「わ、私は………」
香菜子は俺と森の顔を交互に見比べた。
「おいおい!香菜子!何を考えているんだよ!ビシッと言ってやれよ!さあ!」
「ごめんなさい!」
そう言って、香菜子は深々と頭を下げた。
そして、俺の脇をすり抜け、森 泰斗の方へと歩いていった。
「えええっ!?香菜子!?裏切るのかよお!!」
「だって、森さんの方がイケメンだし、頼りになるし、生活安定しそうだし……」
香菜子はうつむきながら、森の背後に隠れていった。
「賢明な判断だよ、西君」
森は自信満々で居丈高な態度でフンと鼻を鳴らした。
「西君。君はタブレットを使って次々と新しい術式を覚え、私の王国建設のために働いてほしい」
「森君の王国を作る手助けをするわけね」
「君の働き次第で、私が王となった時に君を王妃として迎えてやってもいいぞ」
「まあ!素敵!お姫様は女の子なら誰でも憧れる夢だわ!」
「西君。私の邸宅に戻って、二人で祝杯をあげよう」
「はい!」
森とか香菜子は仲睦まじい様子で並んで階段を登っていこうとした。
「待て!この子達を開放してやれよ!」
「うるさい小蠅だ!お前でも何かの役に立つかもしれん。メイド共、そいつを捕らえて牢屋に入れておけ!」
森が命令すると、地下室を警護していたメイド達が剣を構えて、俺を取り囲んだ。
「よせ!本当に撃つぞ!」
「やれるものなら、やってみろ!」
森は鎧を着ているから、どうせ当たっても致命傷にはならないだろう。
俺は遂に魔法の矢を放った。
AIMの術式で照準を定めていたため、矢は一直線に森の胸に向かって飛んで行った。
矢が鎧の胸当てに刺さる。
と、その直前に矢は鎧を包んでいた光の壁に弾き飛ばされ、そのまま矢を放った俺に向かって跳ね返って来た。
「ウッ!!」
矢は俺の腹に深々と突き刺さり、爆発した。
俺の腹部の肉が削がれて、臓物がはみ出した。
血のしたたりは床に広がり、松明の灯りにキラキラと輝いている。
俺は息も絶え絶えの瀕死状態で、ゼーゼーと喘いでいた。
「―――ちくしょう!どんな攻撃も……跳ね返すっては……本当だったな……」
俺はかなりのダメージを、HPが既に半分になっていた。
だが、今の俺は満腹状態だから時間さえかければ、どんな傷も癒え、体力は回復する筈だ。
「そうは……簡単には……休ませてくれないか……」
俺を取り囲んでいたメイド達がじわじわと近寄って来た。
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