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第2章「深淵/アビス」

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「お前らもなんかできるのか?」

 そう俺が問いかけると、双子の女の子達は顔を見合わせて、ニヤッと笑った。

「ジャーン!」

「魔法の弓や!」

 そう言うと菜々の手には黄金色に輝く弓が、そして萌々の手には銀色の矢が現われた。

「お前ら、どこでそんな物手に入れた!?」

宝箱パカの中に入っとったんや」

宝箱パカを知ってたのか?お前ら、転移した時に空中に現れたわけじゃないのか?」

 双子は同時に頭上を見上げて指さした。

「うちら、気が付いた時は地上の岩場におったんや」

「そばに宝箱パカがあったから、中開けたら食べ物やこの弓矢が入っとったんや」

「そんで、二人してこれからどないしよって話てたら、急に足元の岩場がなくなってもうたんや」

「そうか。やっぱりこの大穴は最初からあったわけじゃなかったんだな。ジュリアも宝箱パカを開けたのかい?」

「ジュリアは、気が付いた時、地面ありませんでした。だから、何もありません」

「そうか。それは残念だったね」

 人によって、転移した場所も時刻もバラバラのようだった。

 もしかしたら、トラックに跳ねられた場所と時刻に関係があるのかもしれない。

「それで――双子………?」

菜々なな萌々ももや」

「名前ぐらい覚えてや」

「それで、お前らの魔法の弓にはどんな効果があるんだ!」

「そんなん、知らんわ」

「どうやって使ったらええのか、わからへんもん」

「なんだ、弓も使えねぇのか!ちょっと俺に貸してみろ!」

(うまいこと言って、取り上げてやるぜ)

 俺が手を伸ばすと、双子は疑いのまなざしで俺を見た。

「あんた、うまいこと言って取り上げる気やないやろな」

(ギクッ!)

「ひ、人聞きの悪いこと言うなよ」

「なんか動揺してへんか?」

「怪しいなあ」

 双子は渋々弓と矢を俺に手渡した。

 俺はインベントリーからリンゴを取り出すと、双子の片割れ(菜々なな萌々ももの区別がつかない)に差し出した。

「リンゴを放り投げてみろ。試しに弓で射貫いて見せてやるぜ」

「リンゴや!リンゴや!食べ物や!」

「うちも食べたい!」

 双子は目の色を変えて、二人で一個のリンゴを取り合いをした。

「こらこら!お前ら猿か!食べ物で兄弟ゲンカするなよ!もう一個やるから!」

 二人ともにリンゴをあげると、双子は嬉しそうにさっそくかぶりついた。

「ジュリアはお腹すいていないのかい?」

 俺はとっときのモモとケーキを取り出して、ジュリアに差し出した。

「カエル男!あれ、見て下さい!」

 ジュリアが震える指で俺の背後を指さした。

「どうしたのかなあ?」

 ニコニコと笑顔で振り返ると、剣や斧を振りかざした三十匹ほどのゴブリンの大群が、こちらに向かって水辺を走ってくるとことろだった。


 すっかり油断していたが、今は夜で、周囲は暗闇に支配されている。

 俺たちはモンスターどもが闊歩するデンジャラスゾーンにいるのだった。

「ヤバイ!あんなに来られたら矢が足りねぇぞ」

 矢が無くなってしまったら、剣で接近戦を行うしか手がない。

 果たしてジュリアやついでに双子を守りながら戦えるだろうか。
 
AIMエイム !」

 一本も矢を無駄にはできない。

 俺は一番先頭を走るゴブリンに照準を合わせて、矢を放った。

 矢はまっすぐゴブリンに命中し、その瞬間、爆発した。

「えっ!?」

 打ち終わった俺の右手を見ると、銀の矢が1本残っていた。

「もしかして……」

 俺は黄金の弓を構え、次のゴブリンに照準を合わせると銀の矢を放った。

 確かに銀の矢はゴブリンに命中し、粉々に吹き飛ばしたが、次の瞬間、再び俺の右手の中に矢は復活していた。

「この銀の矢は、いくら射ってもなくならないぞ!」

 弓矢をじっと見つめると、アイテム名が浮かび上がって来た。

「ぼくの考えた最強の魔法の弓矢」、「レベル マックス」、「弾数 ∞」、「飛距離 ∞」「爆裂属性」。

「すっげぇ!」

 俺は興奮して、次々とゴブリン達に照準を合わせてはぶっ飛ばしてやった。

 ゴブリンの大群は爆音とともに掻き消え、跡にはオレンジ色の石「魔石」が転がっていた。
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