31 / 89
第1章「始まりの塔」
27
しおりを挟む
んで、俺はチャッチャと家づくりを始めた。
まず『T』と言ってから、剣を振り、それから、おもむろに新しい術式を叫んだ。
「RECORD START !」
本当はいちいち術式を口に出さなくてもいいのだが、美衣奈が期待のまなざしで見つめているのでちょっとサービスしてやった。
「DIG ON !」
そう言ってから俺は畑の前の地面に手刀を突き刺した。
一瞬で縦30ブロック、横40ブロック、深さ2ブロック、地面が掘り起こされた。
「FILL IN!」
俺は地面の窪みに基礎固めのために石を敷き詰め、その上に黒樫の材木ブロックを敷き詰めた。
「床はフローリングだ。本当は羊毛を敷きたいんだが、ない物はしょうがない」
それから、床を囲むように高さ4ブロックの白樺の材木ブロックを積み、屋根は空が見られるように総ガラス張りにした。
最後にすぐに逃げ込めるように四方の壁に扉を付け、モンスターを警戒するために窓も四方に取りつけた。
小屋の中には当然、作業箱、石窯、大きい物入れの3点セットを設置した。
「RECORD END !」
「始まりの家」はアッという間に完成した。
白壁の直方体のその姿は、まるで豆腐のようだった。
こんな豆腐小屋でも、洞窟よりはよっぽどマシなので美衣奈は気に入ったらしい。
「さすがカエル男さん!」を連呼し、俺の自尊心をくすぐった。
何しろ作業箱ひとつで、見る見るうちに家を一軒建ててしまったのだから、そりゃあ驚くわな。
「NAME !豆腐小屋!」
「カエル男さん。さっきから、何をブツクサ言っているのですか?」
(――ブツクサだと!美衣奈のためにわざわざ口に出してやってるのに!)
「俺が『スタート』と宣言し、『エンド』と言うまでにやった一連の作業を『豆腐小屋』という名前の術式として登録したのさ。一度登録した術式は、以後、名前を詠唱するだけで何度でも使えるんだ」
「はあ………」
(わかってないな)
「まあ、パソコンのマクロみたいなもんだ」
「私もツナやお寿司は大好きです!」
「そりゃあマクロやなくてマグロやがな!」
と、軽いボケとツッコミを披露したところで、実際に新しく作った術式『豆腐小屋』を実行して見せよう!
「CALL! 豆腐小屋!」
俺がそう叫ぶと、建てたばかり豆腐小屋の横の一角が光り輝きだした。
目の前に光のカーテンに覆われた直方体が現れ、やがてその光のカーテンがめくれると中から全く同じ豆腐小屋がもう一軒現れた。
もちろん、いくら錬金術でも無から有は生み出せない。
俺のインベントリーからは豆腐小屋を建てるのに必要な木材と石とガラスが消費されていた。
それから俺は「CALL!豆腐小屋!」を連呼し、豆腐小屋を3軒X4軒つなげたちょっとした豆腐邸宅を建てたのだ。
「あっと言う間に邸宅ができました!ツーバイフォー工法みたい!」
「それぞれの豆腐小屋に設置したい家具があったら言ってくれ。作業箱を使えば、ちょっとした椅子やテーブルなら錬成できるからな」
「えーと、だったらここは台所、あっちはリビング、ダイニング、寝室にして……」
「そうだ!離れに豆腐小屋をもう一軒、建てておこう。そこは大きい物入れを一杯置いてやるから、美衣奈の倉庫にしろ」
「わあい!そこは私の倉ですね。マイ倉って呼ぼうかしら」
「―――それだけは、やめて下さい!」
いろいろと作業をしていたら、夜になり暗くなってきた。
だが、二人で立ててまわった松明が、くっきりと周囲を照らし出す。
「始まりの家」を中心に、半径500ブロックほどの地帯は、松明が等間隔に立てられ、まるで昼間のような明るさだった。
これなら、モンスターが沸いてくる心配をしなくてもいいだろう。
―――朝チュン。
「それじゃあ、ちょっくら、行ってくるわ!」
「気を付けてね!早く戻ってきてね!ケーキ作って待ってますから!」
俺は涙目の美衣奈の腰に手をまわして抱き寄せると、きつくハグをした。
翌朝、俺は長沼 美衣奈を一人「始まりの家」に残し、大渓谷目指して旅立ったのだ。
これが美衣奈との今生の別れになろうとは、神ならぬ身には知るよしもなかった。
まず『T』と言ってから、剣を振り、それから、おもむろに新しい術式を叫んだ。
「RECORD START !」
本当はいちいち術式を口に出さなくてもいいのだが、美衣奈が期待のまなざしで見つめているのでちょっとサービスしてやった。
「DIG ON !」
そう言ってから俺は畑の前の地面に手刀を突き刺した。
一瞬で縦30ブロック、横40ブロック、深さ2ブロック、地面が掘り起こされた。
「FILL IN!」
俺は地面の窪みに基礎固めのために石を敷き詰め、その上に黒樫の材木ブロックを敷き詰めた。
「床はフローリングだ。本当は羊毛を敷きたいんだが、ない物はしょうがない」
それから、床を囲むように高さ4ブロックの白樺の材木ブロックを積み、屋根は空が見られるように総ガラス張りにした。
最後にすぐに逃げ込めるように四方の壁に扉を付け、モンスターを警戒するために窓も四方に取りつけた。
小屋の中には当然、作業箱、石窯、大きい物入れの3点セットを設置した。
「RECORD END !」
「始まりの家」はアッという間に完成した。
白壁の直方体のその姿は、まるで豆腐のようだった。
こんな豆腐小屋でも、洞窟よりはよっぽどマシなので美衣奈は気に入ったらしい。
「さすがカエル男さん!」を連呼し、俺の自尊心をくすぐった。
何しろ作業箱ひとつで、見る見るうちに家を一軒建ててしまったのだから、そりゃあ驚くわな。
「NAME !豆腐小屋!」
「カエル男さん。さっきから、何をブツクサ言っているのですか?」
(――ブツクサだと!美衣奈のためにわざわざ口に出してやってるのに!)
「俺が『スタート』と宣言し、『エンド』と言うまでにやった一連の作業を『豆腐小屋』という名前の術式として登録したのさ。一度登録した術式は、以後、名前を詠唱するだけで何度でも使えるんだ」
「はあ………」
(わかってないな)
「まあ、パソコンのマクロみたいなもんだ」
「私もツナやお寿司は大好きです!」
「そりゃあマクロやなくてマグロやがな!」
と、軽いボケとツッコミを披露したところで、実際に新しく作った術式『豆腐小屋』を実行して見せよう!
「CALL! 豆腐小屋!」
俺がそう叫ぶと、建てたばかり豆腐小屋の横の一角が光り輝きだした。
目の前に光のカーテンに覆われた直方体が現れ、やがてその光のカーテンがめくれると中から全く同じ豆腐小屋がもう一軒現れた。
もちろん、いくら錬金術でも無から有は生み出せない。
俺のインベントリーからは豆腐小屋を建てるのに必要な木材と石とガラスが消費されていた。
それから俺は「CALL!豆腐小屋!」を連呼し、豆腐小屋を3軒X4軒つなげたちょっとした豆腐邸宅を建てたのだ。
「あっと言う間に邸宅ができました!ツーバイフォー工法みたい!」
「それぞれの豆腐小屋に設置したい家具があったら言ってくれ。作業箱を使えば、ちょっとした椅子やテーブルなら錬成できるからな」
「えーと、だったらここは台所、あっちはリビング、ダイニング、寝室にして……」
「そうだ!離れに豆腐小屋をもう一軒、建てておこう。そこは大きい物入れを一杯置いてやるから、美衣奈の倉庫にしろ」
「わあい!そこは私の倉ですね。マイ倉って呼ぼうかしら」
「―――それだけは、やめて下さい!」
いろいろと作業をしていたら、夜になり暗くなってきた。
だが、二人で立ててまわった松明が、くっきりと周囲を照らし出す。
「始まりの家」を中心に、半径500ブロックほどの地帯は、松明が等間隔に立てられ、まるで昼間のような明るさだった。
これなら、モンスターが沸いてくる心配をしなくてもいいだろう。
―――朝チュン。
「それじゃあ、ちょっくら、行ってくるわ!」
「気を付けてね!早く戻ってきてね!ケーキ作って待ってますから!」
俺は涙目の美衣奈の腰に手をまわして抱き寄せると、きつくハグをした。
翌朝、俺は長沼 美衣奈を一人「始まりの家」に残し、大渓谷目指して旅立ったのだ。
これが美衣奈との今生の別れになろうとは、神ならぬ身には知るよしもなかった。
0
お気に入りに追加
143
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
管理人さんといっしょ。
桜庭かなめ
恋愛
桐生由弦は高校進学のために、学校近くのアパート「あけぼの荘」に引っ越すことに。
しかし、あけぼの荘に向かう途中、由弦と同じく進学のために引っ越す姫宮風花と二重契約になっており、既に引っ越しの作業が始まっているという連絡が来る。
風花に部屋を譲ったが、あけぼの荘に空き部屋はなく、由弦の希望する物件が近くには一切ないので、新しい住まいがなかなか見つからない。そんなとき、
「責任を取らせてください! 私と一緒に暮らしましょう」
高校2年生の管理人・白鳥美優からのそんな提案を受け、由弦と彼女と一緒に同居すると決める。こうして由弦は1学年上の女子高生との共同生活が始まった。
ご飯を食べるときも、寝るときも、家では美少女な管理人さんといつもいっしょ。優しくて温かい同居&学園ラブコメディ!
※特別編10が完結しました!(2024.6.21)
※お気に入り登録や感想をお待ちしております。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜
月城 亜希人
ファンタジー
二〇二一年初夏六月末早朝。
蝉の声で目覚めたカガミ・ユーゴは加齢で衰えた体の痛みに苦しみながら瞼を上げる。待っていたのは虚構のような現実。
呼吸をする度にコポコポとまるで水中にいるかのような泡が生じ、天井へと向かっていく。
泡を追って視線を上げた先には水面らしきものがあった。
ユーゴは逡巡しながらも水面に手を伸ばすのだが――。
おっさん若返り異世界ファンタジーです。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜
夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。
不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。
その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。
彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。
異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!?
*小説家になろうでも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる