25 / 89
第1章「始まりの塔」
21
しおりを挟む
「美衣奈…………」
俺は腕を美衣奈の首にまわし、優しく唇を押し付けた。
―――暗転。
(えっ!?)
―――朝チュン。
(えええっ!?もう朝!?)
この異世界でも雀はいる。
朝方になってチュンチュンと可愛らしい鳴き声が森から聞こえてきた。
(嗚呼!こんなことなら「R18」、いや、せめて「R15」指定にしておくのだったよ!)
と、言うわけで、不本意ながら次の日の朝になった。
「ベッドが欲しい………」
美衣奈との二人きりの一夜を過ごした翌朝、俺はそうつぶやいた。
美衣奈は照れくさそうに言った。
「朝っぱらから何を言っているのですか!?カエル男さんのエッチ!!」
物入れを開けて、朝食の支度をしていた美衣奈が顔を赤らめて笑った。
「いやいや!別にそういう使用目的のために欲しいのではなくて、ベッドは異世界でのサバイバル生活の必須アイテムなんだ」
「どういうことですか?」
「この世界では夜になるとモンスターがスポーンして、めちゃくちゃ危険だろ。でもベッドで寝ると、そんな危険な夜をスッ飛ばして朝にすることができるんだ」
「ベッドで寝るだけで夜が朝になるのですか!?そんな奇想天外な!?どうしたらそんなことになるのですか!?納得できません!」
「――魔法の力だよ!」
「なるほど!ベッドも作業箱も石釜も、みぃーんな魔法の道具なんですね!納得しました!」
真由美が話せばわかる素直な娘でよかった。
「だが、この魔法のベッドを作るには羊毛が必要なんだ。作業箱に羊毛を入れるとクッションになる。次にクッションと材木を作業箱に入れるとベッドになるのさ」
「作業箱に羊毛と材木を入れるだけで、勝手にベッドができるのですか!?そんな摩訶不思議な!?」
「――これが等価交換の原理なんだよ。俺はこの異世界に来て錬金術師になった。だから必要な材料さえ揃えたらどんな物質でも錬成できるのさ」
「ああ!何かこう、両手をパ~ンと合わせただけで何でも作っているアニメを見たことがあります!あれに比べたら作業箱を使うだけもっともらしいですね。納得しました!」
真由美が話せばわかる聡明な娘でよかった。
「それに、万が一死んだとしても、最後に寝たベッドの上で蘇ることができるんだ」
「死んでも生き返ることができるのですか!?そんな荒唐無稽な!?これはさすがに納得できません!」
「――これがこの異世界の自然法則なんだよ!自然法則にたかが人間が口をはさむなんて、おこがましいとは思わないかね」
「なるほど!自然法則なら仕方ありませんね。納得しました!」
美衣奈は幼児のようにあどけない瞳で俺を見つめている。
「カエル男さんって、本当に何でも知っているのですね!頼もしいわ!」
美衣奈がまたまた熱視線を俺に送って来た。
「それで話を戻すが、要するにベッドを作りたいのだが、このあたりに羊が見当たらないんだ」
「弱りましたね。羊毛以外にベッドを作る方法はないのですか?」
切り株で作ったテーブルの上にパンとリンゴだけのささやかな朝食を用意しながら美衣奈が尋ねた。
美衣奈の言葉に俺はハッと思い出した。
「羊がいなくても、クッションを手に入れる方法ならあったぞ!スパイダーを倒すんだ!スパイダーを倒すと蜘蛛の糸を手に入れることができる。その蜘蛛の糸を大量に作業箱に入れたらクッションと等価交換できるんだ!」
「え~~~!あんな気持ちの悪いクモと戦うのですか?そんな危ないことしないといけないなら、ベッドなんかなくてもよくないですか?」
「―――まあ、それは最後の手段だ。まずは、羊を探してみるか」
「はい、センセー!」
美衣奈がおずおずと手を上げた。
「なんだ?まだ、質問があるのか?」
俺は腕を美衣奈の首にまわし、優しく唇を押し付けた。
―――暗転。
(えっ!?)
―――朝チュン。
(えええっ!?もう朝!?)
この異世界でも雀はいる。
朝方になってチュンチュンと可愛らしい鳴き声が森から聞こえてきた。
(嗚呼!こんなことなら「R18」、いや、せめて「R15」指定にしておくのだったよ!)
と、言うわけで、不本意ながら次の日の朝になった。
「ベッドが欲しい………」
美衣奈との二人きりの一夜を過ごした翌朝、俺はそうつぶやいた。
美衣奈は照れくさそうに言った。
「朝っぱらから何を言っているのですか!?カエル男さんのエッチ!!」
物入れを開けて、朝食の支度をしていた美衣奈が顔を赤らめて笑った。
「いやいや!別にそういう使用目的のために欲しいのではなくて、ベッドは異世界でのサバイバル生活の必須アイテムなんだ」
「どういうことですか?」
「この世界では夜になるとモンスターがスポーンして、めちゃくちゃ危険だろ。でもベッドで寝ると、そんな危険な夜をスッ飛ばして朝にすることができるんだ」
「ベッドで寝るだけで夜が朝になるのですか!?そんな奇想天外な!?どうしたらそんなことになるのですか!?納得できません!」
「――魔法の力だよ!」
「なるほど!ベッドも作業箱も石釜も、みぃーんな魔法の道具なんですね!納得しました!」
真由美が話せばわかる素直な娘でよかった。
「だが、この魔法のベッドを作るには羊毛が必要なんだ。作業箱に羊毛を入れるとクッションになる。次にクッションと材木を作業箱に入れるとベッドになるのさ」
「作業箱に羊毛と材木を入れるだけで、勝手にベッドができるのですか!?そんな摩訶不思議な!?」
「――これが等価交換の原理なんだよ。俺はこの異世界に来て錬金術師になった。だから必要な材料さえ揃えたらどんな物質でも錬成できるのさ」
「ああ!何かこう、両手をパ~ンと合わせただけで何でも作っているアニメを見たことがあります!あれに比べたら作業箱を使うだけもっともらしいですね。納得しました!」
真由美が話せばわかる聡明な娘でよかった。
「それに、万が一死んだとしても、最後に寝たベッドの上で蘇ることができるんだ」
「死んでも生き返ることができるのですか!?そんな荒唐無稽な!?これはさすがに納得できません!」
「――これがこの異世界の自然法則なんだよ!自然法則にたかが人間が口をはさむなんて、おこがましいとは思わないかね」
「なるほど!自然法則なら仕方ありませんね。納得しました!」
美衣奈は幼児のようにあどけない瞳で俺を見つめている。
「カエル男さんって、本当に何でも知っているのですね!頼もしいわ!」
美衣奈がまたまた熱視線を俺に送って来た。
「それで話を戻すが、要するにベッドを作りたいのだが、このあたりに羊が見当たらないんだ」
「弱りましたね。羊毛以外にベッドを作る方法はないのですか?」
切り株で作ったテーブルの上にパンとリンゴだけのささやかな朝食を用意しながら美衣奈が尋ねた。
美衣奈の言葉に俺はハッと思い出した。
「羊がいなくても、クッションを手に入れる方法ならあったぞ!スパイダーを倒すんだ!スパイダーを倒すと蜘蛛の糸を手に入れることができる。その蜘蛛の糸を大量に作業箱に入れたらクッションと等価交換できるんだ!」
「え~~~!あんな気持ちの悪いクモと戦うのですか?そんな危ないことしないといけないなら、ベッドなんかなくてもよくないですか?」
「―――まあ、それは最後の手段だ。まずは、羊を探してみるか」
「はい、センセー!」
美衣奈がおずおずと手を上げた。
「なんだ?まだ、質問があるのか?」
0
お気に入りに追加
143
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ブレイブエイト〜異世界八犬伝伝説〜
蒼月丸
ファンタジー
異世界ハルヴァス。そこは平和なファンタジー世界だったが、新たな魔王であるタマズサが出現した事で大混乱に陥ってしまう。
魔王討伐に赴いた勇者一行も、タマズサによって壊滅してしまい、行方不明一名、死者二名、捕虜二名という結果に。このままだとハルヴァスが滅びるのも時間の問題だ。
それから数日後、地球にある後楽園ホールではプロレス大会が開かれていたが、ここにも魔王軍が攻め込んできて多くの客が殺されてしまう事態が起きた。
当然大会は中止。客の生き残りである東零夜は魔王軍に怒りを顕にし、憧れのレスラーである藍原倫子、彼女のパートナーの有原日和と共に、魔王軍がいるハルヴァスへと向かう事を決断したのだった。
八犬士達の意志を継ぐ選ばれし八人が、魔王タマズサとの戦いに挑む!
地球とハルヴァス、二つの世界を行き来するファンタジー作品、開幕!
Nolaノベル、PageMeku、ネオページ、なろうにも連載しています!

友人Aの俺は女主人公を助けたらハーレムを築いていた
山田空
ファンタジー
友人Aに転生した俺は筋肉で全てを凌駕し鬱ゲー世界をぶち壊す
絶対に報われない鬱ゲーというキャッチコピーで売り出されていたゲームを買った俺はそのゲームの主人公に惚れてしまう。
ゲームの女主人公が報われてほしいそう思う。
だがもちろん報われることはなく友人は死ぬし助けてくれて恋人になったやつに裏切られていじめを受ける。
そしてようやく努力が報われたかと思ったら最後は主人公が車にひかれて死ぬ。
……1ミリも報われてねえどころかゲームをする前の方が報われてたんじゃ。
そう考えてしまうほど報われない鬱ゲーの友人キャラに俺は転生してしまった。
俺が転生した山田啓介は第1章のラストで殺される不幸の始まりとされるキャラクターだ。
最初はまだ楽しそうな雰囲気があったが山田啓介が死んだことで雰囲気が変わり鬱ゲーらしくなる。
そんな友人Aに転生した俺は半年を筋トレに費やす。
俺は女主人公を影で助ける。
そしたらいつのまにか俺の周りにはハーレムが築かれていて
四天王戦記
緑青あい
ファンタジー
異世界・住劫楽土を舞台にしたシリーズのー作。天下の大悪党【左道四天王】(鬼野巫の杏瑚/五燐衛士の栄碩/死に水の彗侑/墓狩り倖允)が活躍する、和風と中華風を織り混ぜた武侠物のピカレスク。時は千歳帝・阿沙陀の統治する戊辰年間。左道四天王を中心に、護国団や賞金稼ぎ、付馬屋や仇討ち、盗賊や鬼神・妖怪など、さまざまな曲者が入り乱れ、大事件を引き起こす。そんな、てんやわんやの物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる