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第1章「始まりの塔」

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 地面に落下した俺に向かってソンビが二匹、掴みかかってきた。
 俺は落ち着いて石の剣を構えると、ゾンビの壊合線を切り刻んで腐った肉の塊にしてやった。

「ゾンビなんかに殺られる俺かよ!」

「フン!まだまだ、あっちこっちからゾンビの声がしてるわ。いつまで持つかしらね!」

 砂の塔の上に腰掛けた真央が、俺の気持ちを逆撫でするような言葉を投げつけてきた。

 温厚で美人に弱い――いや、甘い俺も、さすがに頭に来た。

「この悪役令嬢が!」

 俺はインベントリーから松明を取り出した。
 そして、真央がいる砂の塔の一番下のブロックを凝視した。
 金色に輝く壊合線が見える。
 俺は手刀で壊合線を突くと、一番下の砂ブロックが壊れてアイテム化した。

 その瞬間、俺はすかさず地面に松明を立てた。
 砂ブロックは松明の炎に触れると、自動的にアイテム化するのだ。
 砂の塔は次々とアイテム化し、その場に浮遊する小さなブロックに姿を変えていった。

 砂や砂利は、木材ブロックや石ブロックなどと違い、重力によって落下するブロックだ。
 上に積まれていた砂は松明の炎に当たると自動的にアイテム化する。
 これは砂ブロックを大量に集めたい時に使う錬金術師の初歩的なテクニックだ。

「えっ!?えっ!?えええっ………!?」

 砂の塔があっと言う間に低くなり、真央が地面に近づいてきた。
 遂に砂の塔は消えてしまい、真央は再び地面に立った。
 俺は地面に突き刺した松明と真央に渡した砂ブロックをすべて回収した。

「それじゃあ、頑張ってくれたまえ!」

 俺は砂ブロックを一つ地面の上に置くと、その上に飛び乗った。
 再び、砂ブロックを積んではその上に飛び乗りを繰り返し、俺は上空へと避難して行った。

「安藤クン!ごめんなさい!本当に反省しました!助けて下さい!」

 足元で真央の哀願する声がした。

「あんまり大声あげるなよ!よけいモンスター共がやってくるぞ!」

 砂の塔の頂上に立つ俺は悠然と答えた。

「ちくしょ~~~~!くそったれ~~~~!」

 真央は腹立ちまぎれに、俺がいる土の塔を壊そうと足で何度も蹴りつけた。
 しかし、錬金術師でもない真央では土をアイテム化することはできない。
 
 俺は土の塔の頂上に立ち、周囲を見回した。
 森はすっかり暗くなっていて、ほとんど何も見えない。

 オオオオオ~~~~~ン!

 ソンビの不気味な声があちらこちらから沸き起こり、次第に近づいてきた。

「ギャ~~~~~ッ!!やめて!やめて!噛まないでッ!!」

 真央の悲痛な叫び声が土の塔の根元から聞こえてくる。
 何も見えないが、きっとゾンビに襲われているのだろう。
 自業自得だから、何の憐みの感情も沸いてこなかった。

 俺はリンゴを食って、体力が満タンになるのをじっと待った。
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