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第1章「始まりの塔」

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「よく考えたら俺、異世界に来てまだ宝箱パカを開けただけじゃないか!もっと主人公らしい活躍をしないと!まずはチート能力を活かして資源を集めるのだ!」

 俺は「破合の眼」を使って、目の前の樹高4m程の杉の木を見つめた。
 すると、木の幹に伐採するための光の線「破合線」が見えてきた。

 俺は右手でその光の線に沿って手刀を繰り出した。
 数回、手刀で幹を叩くと、モクッと木の幹に穴が開いた。
 俺のインベントリーにはサイコロ型の木のアイテム「杉の木・01」が自動的に入った。

 穴が開いた木の上部が空中に浮いている。
 ゲームでは見慣れた光景だったが、現実に目の前に木が浮いているとかなりシュールだ。
 ともかく目の前の杉の木の幹を手刀だけで黙々モクモクと伐採していった。

 結果、4つの杉の木、1つの苗木、1つのリンゴを手に入れた。

 何故か、木を切ると時々リンゴも落ちてくるのだ。

(リンゴの木じゃないのにな!?)

 今の俺には大変ありがたい食料なので、深くは考えなかった。

 俺はリンゴ欲しさに夢中になって木を切り倒していった。



 ふと、気付いて空を見上げると、太陽が空の真ん中で輝いていた。

「いっけねぇ!もう正午じゃねぇか!?」

 俺が体内に吸収したエメラルド・タブレットには、この異世界のコトワリも記載されていた。
 この異世界では夜になると、様々なおぞましいモンスターが現れ、人間を襲うのだ。
 夜が来るまでに、安全な拠点を作らないと殺されてしまう。
 時間との勝負だ。

 俺は樫と白樺と杉の木の混交林を抜けたところにかすかに見える、小高い丘に向かって走っていった。

 しばらく走っていると急激に腹が減ってきた。
 自分の満腹度ゲージを見るとほとんどゼロだった。

「そうだった!走ると腹が減るのが早いんだ!」

 俺はリンゴを食べようと、慌てて立ち止まった。

 すると、俺の足元の前方1メートルほどの地面に、ポッカリと四角い穴が開いていることに気が付いた。

「――――立ち止まらなかったら、穴に落ちてたところだ!」

 俺は冷や汗をぬぐった。

「どれぐらいの深さがあるのだろう?」

 俺は地面にしゃがみこんで、穴の中を覗き込んだ。

 ガサガサッ!ゴソゴソッ!
 穴の下は真っ暗だったが、かすかに何かが動く気配を感じた。
 シュッ! 
 何かが穴から飛び出し、俺の頬をかすめた。

 俺は驚いて飛びずさり、背後を振り返った。
 杉の木の幹に、一本の矢が突き刺さっていた。
 俺の頬をかすめたのはこいつだ。

 暗い穴倉の底には弓を携えたゴブリンがいて、俺に向かって矢を射ったのだ。
 俺は再び、額の冷や汗をぬぐった。

「夜になる前に早く仮住まいの拠点を作らないと、モンスターが沸いてきて殺されちまうぞ!」


 俺は見通しをよくするために穴の周りの木を少し切り倒し、目印に松明を一本立てておいた。
 穴は塞がずにそのままにしておいた。
 後で鉱物を掘るために、ここから地下に潜るかもしれないからだ。
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