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26.娘は幸せを取り戻す
しおりを挟む「お二人が仲直り出来て良かったですけど、今度はひどくお疲れですわね、アスタディア?」
テトディニス公爵家のいつものテラスで、優雅にお茶を飲んでいるユリアンヌの向かいで、アスタディアはグッタリとテーブルに顔を突っ伏していた。
「だ、だって……。シンが……シンがいけないのよ……!」
矛先を向けられた、アスタディアの斜め後ろに立っていたシンは、目に見えて上機嫌で。いつもは真っ直ぐに結んでいる口が緩んでいる。
「アスが可愛過ぎて止められなかったんだ……ゴメンな」
「だ、だからって、夕方からずっとで、夜も一晩中だなんて……! 流石に途中で寝てしまったけど! ねぇユリアンヌ、男の人ってそんなに続けて何回もできるものなの!? それが当たり前なのっ!?」
「え、えぇ……? そうですわね……それは人それぞれなのですが、一般的に考えますと、当たり前ではないかと……。シンラン様はアレですわね、所謂“性欲大魔人”ですわね」
「せいっ……だ、だいまじんっ!?」
「ユリアンヌ、またそういうことを平気で……」
「勿論アス限定のな」
「……シンラン、巫女の身体の管理も聖獣の役目です。くれぐれも無理はさせないよう」
「分かってるって。――ホントゴメンな? アス。今日は体が辛いだろうし、オレがアスの足代わりになるよ。さっそく抱えて――」
「結構です! 世間の目も考えて!? 今日はこれから巫女のお役目があるから、ちゃんとしないと――あら? ユリアンヌ、このハーブティーすごく美味しいわ!」
「ふふ、疲労回復の効果もあるハーブティーですから、たっぷり飲んで無事にお務めをこなしましょう」
今日は《太陽の巫女》と《月の巫女》の定期のお務めがある日だ。
大公の屋敷へ行き、そこに集まった巫女の力が必要な人々の治療や浄化を行うのだ。
「そろそろ大公家行きの馬車が公爵家に到着している頃ですわ。行きましょうか」
「えぇ」
ユリアンヌとアスタディアは立ち上がり、二人並んで雑談に花を咲かせながら歩く。
アスタディアの楽しそうな姿を、口元に微笑みを浮かばせながら見ているシンに、ソウは一瞬躊躇したが、思い切って口を開いた。
「シンラン。その……里にいた頃、君の気持ちを汲み取ることが出来ず申し訳ありませんでした」
シンは驚いたようにソウを振り返って見た。やがて、その顔にニッと笑みを浮かべる。
「いーよ。オレもバカだったんだ。悪いことして皆の気をオレに惹かせようだなんて。里に行くことがあったら、皆に謝るよ。許して貰えないかもだけど、精一杯謝る。今のオレにはそれくらいしか出来ないから」
「シンラン……。本当に変わりましたね……」
「そうか? ……そうだな。アスに出会えてなかったら、オレは里にいた頃の、燻ってどうしようもないクズで最低なオレのままだったな……。オレ、ホント《月の聖獣》で良かった。心からそう思う。そのお蔭でアスに会えたんだから」
「……そうですか」
「初めて愛する喜びを知って、愛される嬉しさも知った。“尊い”って、こういうことを言うのかな。――オレは今、すごく幸せだよ」
アスタディアを温かな眼差しで見つめながら、素直に己の気持ちを語るシンに、ソウは眩しいものを見るように目を細めた。
「今の君は、誇れるくらい立派な《月の聖獣》ですよ」
「ははっ、そーか? お前からそんな言葉が聞けるなんて嬉しいぜ」
「けど、アスタディア様に無理をさせたのは良くないですね。しかもお務めの前日に……。もう少し自重して下さい」
「あー……。分かってるんだけどさ、アスを目の前にすると、その自重がどっか行っちまうんだよ。なぁソウテン、お前だってそうだろ? 《太陽の巫女》を抱いたことはないなんて言わせないぜ」
「……それは……まぁ……そうですが……」
「ははっ、認めてやんの。な? お互い様だろ?」
「……フッ、そうですね」
後ろでソウとシンが並んで笑い合っている姿に、ユリアンヌとアスタディアは目を見開いて二度見し、前を向くと自然と顔を寄せ合ってコソコソと話し出す。
「ちょっ、ちょっとユリアンヌ! あの二人ってあんな目に見えて仲良かったっけ!?」
「いえ、わたくしも初めて見ますわ……。ビックリですわね。けれど美形殿方二人が肩を寄せ笑い合う光景は眼福ですわ……」
「ユリアンヌもそう思う!? 私もあの光景を脳裏に焼き付けて永久保存したいわ。あ、そう言えば、ソウさんも聖獣姿に変身出来るのよね? 聖獣姿のシンと二人並べてセットで愛でたいわ!! 想像しただけですごくニヤけちゃう!」
「あら、それはいい提案ですわね。けれどソウはなかなか聖獣の姿になってくれませんのよ。あの姿、とても可愛らしいですのに。でもアスタディアのお願いとあれば彼に頼んでみますわ。弱みをチラつかせればきっと――」
「えっ、弱み……?」
「何の話をしているのですか? ユリアンヌ」
気付くとすぐ近くにソウがいて、ニコニコと微笑んでいる。その笑顔がすごく怖い。
「いえ? ただのありきたりな女同士の雑談ですわ。気にしないで下さいませ」
ソウの迫力ある笑みに屈することなく、ユリアンヌもニッコリ笑って返す。
(この二人、ホントいいコンビよね……)
アスタディアが二人を眺めながら改めてそう実感していると、手に温もりが触れ、そのまま指が絡んできた。
見上げると、シンがこちらを見つめていて、ニッと笑みを見せる。アスタディアも笑い返し、どちらともなく身体を寄り添って前へ歩き出す。
――暗い世界から必死に這い上がり、取り戻した光り輝く幸せは、これからも変わらず続いていくだろう。
二人の絆と愛と、幸せを心から願う気持ちがある限り、きっとずっと、永遠に――
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そして……そうですそうです!!ピアスもといイヤリングです!
教えて下さり本当にありがとうございますm(_ _)m 直しておきます!
実は最初考えていたのが、もう一つの装飾品がイヤリングではなくネックレスだったんです。その名残が残ってました(^o^;
クスリとさせる感想と、間違いを教えて下さりありがとうございました♡
かめきち様、こんにちは(^^)
かめきち様の感想に思い切り吹き出しちゃいました(笑)
ですよねっ!!(大きく頷く)
きっと、窃盗のプロとしての感か何かが働いたのでしょう(笑)
作者の中でもヨセフはすごくムカつく奴ですが、情けなくてちょっと憎めない奴でもあります……
けど、もげてしまえ!!
笑顔になれる感想をありがとうございました♡