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永遠に一緒となる元娘と元義父のお話【メリバルート〜救済エンド〜】

4.幸福の一時

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 いつもより早く帰ってきたゼノの顔は、見るからに酷く、一目で何かがあったのだと分かった。


「ゼノ、どうしたの!? そんな顔色が真っ青で! 早くリビングに……! 取り敢えずソファに座ろう?」


 私は動きの鈍いゼノの背中をグイグイと押し、リビングに入ると彼をソファに座らせようとした。
 けれど、逆に私がソファに押し倒されてしまう。

「きゃっ……!?」

 驚いて見上げたゼノの顔は、とてもクシャクシャに歪んでいて、今にも泣き出しそうで……。


 潤んだ瞳の色が――


 ……っ!?


 ――色が、ルビーのように澄んだ紅色に戻ってる!?


「……ぜ、ゼノ……?」
「……ゴメン……ゴメンな、ユティ……。オレは……オレはさ、沢山の人間を殺してきた。ジャスティの部下達、王と王女、お前に近付く野郎ども……。オレの両手はドス黒い血で汚れている。そんな真っ黒で穢れたオレが、お前の傍にいる資格なんて――」
「――誰かに何か言われたの?」
「え……?」


 私は、戸惑うゼノの綺麗なルビー色の瞳を真っ直ぐ見つめ、再び口を開く。


「ゼノが人を殺したのは知ってるよ。自分でもそう言ってたじゃない。どれくらい殺したのかは知らなかったけど……。それでも、私はあなたの傍にいることを選んだ。他の誰でもない、私自身が決めたことだよ。今更私から離れるなんて、そんなの絶対に許さないから!」
「……ユーティス……」


 今までに無い強い口調の私に気圧されたように、ゼノは唇を震わす。
 私は両目を細めて微笑むと、唇を噛み締めるゼノの首に腕を回し、ギュッと抱きしめた。


「“おかえりなさい”、ゼノ。に、ずっと、ずーっと会いたかった。また会えて、すごく嬉しいよ。私の、愛しの愛しの“旦那様”――」
「……ユーティス……!」


 ゼノは私を強く抱きしめ、声を出して泣いた。
 彼の涙が幾度も私の頬に流れ落ち、冷たく濡らしていく。それでも構わず、私は彼の頭を優しく撫で続けた。


「……オレはさ、ユティ。沢山の人の命を奪う大罪を犯したんだ。赦されるべきではない、罪を」
「うん」
「だから……だから、オレは――」
「うん。分かってる……分かってるよ、ゼノ。私も一緒にいくよ。だって、ずっと一緒だもの。いつまでも一緒だもの。勿論、置いてったりはしないよね? 反対も無しだよ。ゼノも言ったでしょ? 私達、『永遠に一緒だ』って」
「――ユティ」


 目を見開くゼノに、私は自ら唇を重ねた。彼の唇は、とても冷たく、冷え切っていて……。

 温めるように、深く深く唇を重ねた。


「……なぁ、ユティ。どこか、行きたい所はあるか?」
「……え?」
「お前の行きたい場所、見たい景色。どこにでも連れてってやるよ。また、二人でさ……。――一緒に旅、しようぜ?」
「……うん!」


 私はゼノの提案に、満面の笑顔で頷く。
 彼も昔のようにニッと笑うと、私を抱き上げ、ベッドに連れて行き――
 朝まで、深く……深く、愛し合った。


 ゼノは終始、私を優しく、すごく優しく抱いてくれて。
 最後は二人、いつの間にか泣いていて。
 泣き笑いで顔を見合わせ、唇と身体を何度も重ねる。



 ……とても、とても“幸せ”な時間だった――




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