46 / 55
永遠に一緒となる元娘と元義父のお話【メリバルート〜救済エンド〜】
1.二本の花 *
しおりを挟む「あら~? ゼノ、もう帰るの~?」
ギルドの任務が滞りなく完了し、受付に報告して足早に帰ろうとするゼノを、冒険家の女が引き止めた。
「今からアタイと一緒に飲みに行きましょうよ~。毎日、家とギルドと現場の往復だけじゃツマンナイでしょ~? たまには息抜きも大事よ~?」
ゼノは、女を一瞬だけ凍りつくような視線で一瞥したが、すぐに元の瞳の色に戻り、小さく笑って答えた。
「悪ぃな、家でオレの可愛い奥さんが待ってんだ。オレの帰りを心待ちにしてるし、急いで帰らねぇと」
「えぇ~? そんなつれないこと言わないでさ~」
「アリシャ、ゼノを誘うのは時間の無駄よ? この人、奥さん一筋だもの。あわよくば……なんて考えはゴミ箱に捨てなさいよね」
そこに、アリシャと呼ばれた女冒険家の相棒であるエレサが会話に加わってきた。
「え~? まさか~、そんなこと考えてないわよ~? アタイはただ、ゼノとの親睦を深めようと~」
「面食いのアンタにその言葉は説得力皆無ね。――ごめんなさいね、ゼノ。引き止めてしまったお詫びにコレあげるわ。アタシの実家が花屋でね、売れ残った花をギルドに飾って貰おうと持って来たのよ。気に入った花があったら貰って頂戴」
エレサがそう言うと、両手に持っていた沢山の花をゼノの前に差し出した。
彼はそれに首を軽く左右に振る。
「いや……オレ、花には全く興味ねぇし……」
「バカね、奥さんにどうぞって意味よ。女は大体花が好きだし、奥さんも喜ぶんじゃないかしら? 好きなだけ貰っていいわよ」
「…………」
ゼノは少し考え、何となく気になった花を二つ選んだ。
「じゃ、コレとコレ貰ってく。ありがとな」
「気にしなくていいわよ。その代わり、今度奥さんに会わせてよ。表通りの食堂で働いてたみたいだけど、随分前に辞めちゃったんでしょ? アタシまだ見たこと無いのよね。アンタが毎回『可愛い奥さん』って言うから、気になって仕方ないわ」
「……まぁ、いつか……な。オレの奥さん、恥ずかしがり屋だし。ま、そこも超可愛いんだけどさ」
「はいはい、ノロケはもういいわよ」
苦笑を浮かべたエレサと頬を膨らませたアリシャに、ゼノはまた小さく笑うと、ヒラリと手を振りギルドから出た。
家に急いで向かいながら、手に持つ二本の花を何となく眺める。
(……アイツって、花好きだったっけ? 花なんかあげたことねぇし、今まで家に飾ってたこと無かったよな……。――ま、アイツはオレがいれば喜ぶし、こんなの必要ねぇんだけど。アイツに渡して興味ねぇようだったら捨てるか)
家の玄関に着いたゼノは、上着のポケットから鍵を取り出し、扉の鍵穴にそれを差し込み二度回す。カチャリ、と扉が開く音がした。
その扉は、内側からは開けられない特殊な仕様になっているのだ。
乱暴に開けると、奥の方からトタトタと駆けて来る足音が聞こえ、肩まで伸びた明るいブラウン色の髪の、可愛らしい可憐な女性が姿を現した。
肩が露出した薄く透けるワンピースで、首から足元まで、身体中に小さな朱い痕が付いているその女性は、ゼノのもとまで来ると、ニコ、と微笑んで言った。
「おかえりなさい、ゼノ」
彼女の名はユーティス。ゼノの最愛の妻だ。
以前、この家から黙って逃げ出したので、手首と足首に鎖を繋いでリビングに拘束していたが、この数ヶ月は逃げる様子は全く見受けられなかったので、鎖を解除したのだ。
それ以降、ユーティスはこうやってゼノを出迎えるようになった。
彼が朝仕事に行く時も、玄関まで一緒に来て笑顔で見送ってくれるので、その場で抱き潰したい欲望を何とか抑え、後ろ髪を引かれるように家を出るのが日課となっていた。
「ただいま、ユティ」
ゼノは愛しの妻に笑顔を向けると、すぐさまユーティスを引き寄せ、抱きしめる。そしてその小さな唇を奪うと、濃密な口付けを開始した。
今日はもう出掛ける予定は無いので、朝まで思う存分彼女を抱ける――
彼女を毎日何度抱いても、一日中抱いても『飽きた』なんて感情は全く生まれない。
今日まで数え切れないほど抱いたが、彼女は最初と変わらず初々しいままだ。
顔を赤く染め、潤んだ瞳で自分を受け入れる彼女に、欲情が止めどなく溢れてきて。寝ることも忘れ、彼女の全てを隅々まで貪っていく。
彼女の身体は、自分にとって魅惑の“禁断の果実”だ――
しかし最近、彼女を抱いた後、胸の痛みを感じるようになった。
その痛みの原因は全く分からない。ただ、胸の奥がズキズキと悲鳴を上げるように痛む。
その痛みに酷く不快と苛立ちを覚え、それを掻き消すように彼女を激しく抱いても、やはりその痛みは消えてくれない。
ゼノはその思考を頭から追いやると、ユーティスの舌と自分の舌を絡ませ唾液を吸いながら、ワンピースの胸元から手を差し込み、形の良い彼女の胸を揉みしだく。桃色の先端をキュッと抓ると、ビクリと彼女を身体が震え、その相変わらずの初々しい反応にゼノの欲が一気に溢れ出した。
リビングに行く時間が惜しいし、一回この場で抱いてしまおうか――
ゼノがそう考えながら、口内を貪りユーティスの触り心地の良い乳房を愛撫していると、いつもは従順な彼女なのに、今日は首を振って自分から逃れようとしている。
「……オレを拒絶するのか、ユティ? そんな悪い子には、きっちりと“お仕置き”しなきゃいけないよな?」
己を拒否するユーティスの姿に立腹したゼノは、唾液の糸を垂らして唇を離すと、淀んだ赤黒い瞳で彼女を冷たく見下ろした。
ユーティスは、それに首を大きくブンブンと横に振る。
「ち、違うの。ゼノが持っている、そのお花――」
「……あぁ、これか」
ユーティスを見た瞬間、彼女のことで頭が一杯になり、すっかり忘れていた。危うく握り潰すところだった。
「お前にやるよ。テキトーに選んだから、気に入るか分かんねぇけど。いらなかったら捨ててくれ」
ゼノはユーティスを抱きしめたまま、手に持っていた二本の花を差し出すと、彼女は驚いたように両目を見開き、その花をジッと見つめた。
「青色と……白色の“アイリス”……」
ユーティスはポツリと呟くと、途端オレンジの瞳を潤ませる。そして自分の反応に困惑しているゼノを見上げると、ニコッと笑った。
――パッと花が咲いたような、見惚れるような笑顔で。
「ありがとう、ゼノ。すごく嬉しい。大事に、大事にするね。私、これからも頑張るから」
心から喜んでいるユーティスを見て、ゼノはこんなに可愛い彼女の笑顔を見られるなら、もっと早く花を贈れば良かった、と強く後悔した。
そして、いつものように胸がズキリと痛む。しかも今度は、身体全体に響くような大きな痛みだった。
ゼノはそれらの感情を必死で奥に留めると、ユーティスを抱き上げ足早に自分の部屋まで行く。
そしてベッドに彼女を降ろすと、自分の着ている服を荒々しく脱ぎ捨て、驚く彼女を貪るように抱いたのだった。
26
お気に入りに追加
1,128
あなたにおすすめの小説
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。
あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。
そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。
翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。
しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。
**********
●早瀬 果歩(はやせ かほ)
25歳、OL
元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。
●逢見 翔(おうみ しょう)
28歳、パイロット
世界を飛び回るエリートパイロット。
ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。
翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……?
●航(わたる)
1歳半
果歩と翔の息子。飛行機が好き。
※表記年齢は初登場です
**********
webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です!
完結しました!
お見合い相手はお医者さん!ゆっくり触れる指先は私を狂わせる。
すずなり。
恋愛
母に仕組まれた『お見合い』。非の打ち所がない相手には言えない秘密が私にはあった。「俺なら・・・守れる。」終わらせてくれる気のない相手に・・私は折れるしかない!?
「こんな溢れさせて・・・期待した・・?」
(こんなの・・・初めてっ・・!)
ぐずぐずに溶かされる夜。
焦らされ・・焦らされ・・・早く欲しくてたまらない気持ちにさせられる。
「うぁ・・・気持ちイイっ・・!」
「いぁぁっ!・・あぁっ・・!」
何度登りつめても終わらない。
終わるのは・・・私が気を失う時だった。
ーーーーーーーーーー
「・・・赤ちゃん・・?」
「堕ろすよな?」
「私は産みたい。」
「医者として許可はできない・・!」
食い違う想い。
「でも・・・」
※お話はすべて想像の世界です。出てくる病名、治療法、薬など、現実世界とはなんら関係ありません。
※ただただ楽しんでいただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
それでは、お楽しみください。
【初回完結日2020.05.25】
【修正開始2023.05.08】
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ヤンデレ家庭教師に致されるお話
下菊みこと
恋愛
安定のヤンデレ。安定の御都合主義。
両思いだし悪い話じゃないので多分みんな幸せ。
書きたいところだけ書いたSS。
ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる