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永久に囚われた元娘と、永遠に逃さない元義父のお話〜if ending〜【メリバルート】

10.よぎる莫大な不安

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 ゼノはその一軒家の玄関の鍵を慣れた手つきで開けると、靴を乱暴に脱ぎ中へ入る。私も引っ張られるまま足を進め、リビングらしき部屋へと入った。
 そこは必要最低限の物や家具しかない、広く綺麗な部屋だった。


「ここがオレ達の住む家だ。借りたんじゃなくて購入したから、ここで一生過ごすことになりそうだな。欲しい物があれば言えよ。いくらでも買ってやっから。オレ達を追い掛けてくるヤツはもう誰もいねぇし、物が増えても前みてぇに気にすることねぇぞ」
「えっ!?」


 一体どういう状況になっているのか、全くもって掴めない。
 まずはそれを把握しないと、ゼノとはずっと不自然に会話が噛み合わないままだ……。


「……ゼノ、お願い、教えて。私がいなくなった後、ゼノはどうしてたの? 王女様と結婚したんじゃないの? それが分からなきゃ、私はゼノと一緒にいられないよ……」


 私が切実に訴えると、ゼノは感情の無い表情で私の顔をジッと見つめ、やがて口の端を持ち上げた。

「――いいぜ、教えてやるよ。こっちにこいよ、ユティ」

 ゼノは近くにあった二人用のソファに深く座ると、私を引っ張り自分の膝の上に座らせた。同時にお腹に腕を回され、ゼノの胸と私の背中が密着する。

「ゼノ――」

 こんな体勢じゃ話の出来る状況じゃないと、ゼノに振り返り抗議の視線を上げた時、彼の唇が私の唇を奪い、すぐに舌を入れて絡ませてきた。

「んっ……」

 濃厚な口付けが私を襲い、自然と目尻に涙が浮かぶ。私の口内を貪りながら、ゼノの手が私の服の中に入り込み、胸を直接揉まれた。先端をキュッと抓られる度、私の身体がビクビクと震える。

(……ダメ、このまま流されちゃ……っ)

 私は頭を強く振り、ゼノの胸に両手を当てて突っぱね、無理矢理彼と唇を離した。

「止めてっ、ゼノ! まだ話が――」
「――あー、めちゃくちゃ可愛い。寝てる時の素直なお前もすっげぇ良かったけど、やっぱり起きてる時のお前の反応の方が唆られるわ」
「……!!」


 ゼノが半笑いで恍惚に呟いた言葉に、私は衝撃を受け声を失くす。
 ……ウソであって欲しかったけど、やっぱりそうだったんだ……。


「私が夢だと思っていたあれは……全部、現実だった……?」
「あぁ、そうだ。お前、寝たら暫くはぜってぇに起きねぇからな。キスマークは流石に気付かれるから我慢したけどな、寝ながらオレに抱かれてる時のお前、すっげー素直でめちゃくちゃ可愛かったぜ? オレの名を呼んで『愛してる』って何度も言って、自分からキスしてきて、素直にマタ開いてさぁ。オレのを咥えてめちゃくちゃ善がって。毎回二回だけで終わらせるのにすっげー苦労したぜ」
「……っ」

 ゼノは私の胸から手を離さず、時折妖しく動かしながら愉快そうに言葉を紡いでいく。
 その彼の言葉に、私が夢だと信じて彼にしてきたことが頭に次々と思い返され、顔がこの上なく熱くなった。
 そんな私を面白そうに見下ろしたゼノは、もう片方の手を私のスカートの中に入れ、太腿をサワサワと撫で始める。

「ん……っ。そ、れは……、私がここに住み始めてから、一週間後に始めた……?」
「あぁ。本当はお前が住んだと同時にオレもここに住みたかったんだが、やることがあったからな」
「や、やることって……?」

 どうして私がいる場所が分かったのか質問したかったけれど、彼の“やること”が気になり、それを先に訊いてみる。
 ゼノは紅く淀んだ瞳をスッと細めて笑うと、私の耳元に唇を寄せ囁いた。


「お前をオレから離れさせた原因を作ったヤツを全員してきた。これでオレとお前の仲を切り裂くヤツは誰もいねぇ。もう逃げなくていいし、ずっとここで一生一緒にいられるぜ、ユティ? だからこの国に婚姻届を出してきたんだよ。勿論、との、な?」
「――――」


 ヒュッと、私の喉が短く鳴った。

 婚姻届のことは、いい。いや良くないけど、それは後回しだ。
 王女様のことも気になるけれど、それよりも、“命”に関わる、もっと重大な――


 ……始末……って、どういうこと……?
 ……って――


 ……私がゼノと離れたのは、私の意志もあったけど、ジャスティさんが話した内容も大きい。

 …………。


 ――ジャスティさんは……あの後、自分の国へ帰った……よね……?



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