上 下
29 / 55
彼の為に決断する元娘と、彼女を決して逃さない元義父のお話【ハッピーエンドルート】

11.主導権を握って *

しおりを挟む



「ど、どうして……? あの時の私、ただ泣きじゃくっていただけで……」
「……その涙がさ、……キレイだった」
「え?」
「捨てられた悲しみで、感情を素直に出して、思いっ切り泣いててさ……。オレは諦めて……絶対出来ないことだったから、その涙がすっげーキレイで、……羨ましくて……。その上、お前……年齢の割に大人びてて、可愛かったし……。まぁ……その、言っちまえば“一目惚れ”ってヤツだ。決して子供が好みだったわけじゃねぇぞ。お前だからだ。……だから、お前を手離したくなくて、『父さんになる』って言って、周囲の反対を無視してお前を預かってさ……」


 ゼノが、顔を少し赤くさせ照れながらポツポツと言葉を紡いでいる。私はそんな彼が無性に愛おしくなり、その首に伸ばした腕を回しギュッと抱きしめた。


「私を見つけてくれて、本当にありがとう……ゼノ。ずっと、いつまでも愛してるよ」
「……っ! あぁ、オレもだ――」

 
 そして、どちらともなくキスを交わす。


「――そうだ。もう一つだけ……。もしもの話だけど、私がジャスティさんのお話を鵜呑みにしてゼノから離れてたら、ゼノは国に戻って元の生活をしてた?」
「あぁ? そんなわけねぇだろ」


 その時、ゼノの瞳に淀んで濁った光が浮かんだのを私は見逃さなかった。


「お前を地獄の果てまでも追いかけて、必ず捕まえて、オレから二度と逃げられないように拘束して“お仕置き”してたな。その“お仕置き”は、数日間にも及ぶ濃密で濃厚な内容なんだが……聞きたいか?」

 
 仄暗い光をたたえた紅い瞳で、口の端を持ち上げながら言ったゼノに、私は声が出せず、全力で首を横に振った。


「ふぅん? ……残念、聞きたかったらいつでも聞かせてやるよ。――オレから逃げたらどうなるかを」


 い、いつから考えてたのその濃密で濃厚な“お仕置き”は!?


 ……そんな地雷を踏む質問なんて絶対に聞けなくて、私は曖昧に笑って誤魔化した。
 再び私の首筋に顔を埋めてきたゼノに、慌てて声を出す。


「……っ、きょ、今日は私が上になるっ」
「お? ――ははっ、いいけどさ? 出来るのか?」
「で、出来るよっ」


 昨日の朝はゼノの下で散々泣かされたから、今度は私が上になって主導権を握るんだ……!

 起き上がり、笑うゼノを両肩を押して寝かせると、彼のお腹に跨りその広い胸に両手を置いて彼を見下ろす。


 ――こ、これは……。
 ゼノの上に私が乗って……。
 ゼノを見下ろして……。
 いつもは逆だから……。

 ゆ、優越感がすごい……!


 感動していたその時、唐突に私の胸がムニッと揉まれて先端を摘まれ、思わず短い悲鳴を上げてしまった。

「なーにニヤニヤしてんだ? 当然ながらオレもお前を触るから、油断してんじゃねぇぞ?」
「そ、そんなの聞いてない……!」
「そりゃ今言ったから聞いてないわな」
「……っ」


 そんなのダメ! そのまま流されたら昨日の朝の二の舞いになっちゃう! ゼノに何かされる前に私が動かなきゃ……!


 頬に垂れ下がってくる髪の毛を耳の裏に掛けると、私は頭をゆっくりと下げる。
 鮮やかで綺麗な紅色の瞳が間近に迫り、私は目をギュッと瞑ると彼の唇に自分の唇を重ねた。

「…………」

 唇を付けたまま、動けない私。
 ゼノからフッと笑った気配がし、私の胸を揉み始めた。時折先端をキュッと摘み、その度に私はビクリと身体を震わす。
 もう片方の手は、私のお尻をいやらしく触って……。


(……じ、自分から舌を入れるなんて恥ずかしくて出来ない……っ! でも何か、何かしないと……っ! これ以上ゼノには何もさせない……っ)


 グルグルと考えた私は、ゼノの唇をペロリと舐めた。恥ずかしいから、目を閉じたままで。
 彼の身体がピクリと微かに震えたのが分かった。
 すぐに唇を離すと、今度はゼノの首筋に口を付ける。


(うーん……。私も痕を付けてみたいな……。確か強く吸えばいいんだよね?)


 少し力を込めて吸ってみる。……が、全く付かない。
 首を傾げ、今度はもっと強く吸ってみるが、やはり付かない。

「……??」

 疑問符を浮かべていると、ブハッと吹き出す音が聞こえ、すぐ近くにあるゼノの横顔を見ると、彼は反対方向に顔を背け、手で口を押さえてフルフルと震えていた。


「……オレの奥さん、超可愛過ぎてツライわ……。ヤバ、悶え死ぬ……」


 ボソリと呟いたと思ったら景色が反転し、いつの間にか私はゼノに押し倒されていた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

【完結】お義父様と義弟の溺愛が凄すぎる件

百合蝶
恋愛
お母様の再婚でロバーニ・サクチュアリ伯爵の義娘になったアリサ(8歳)。 そこには2歳年下のアレク(6歳)がいた。 いつもツンツンしていて、愛想が悪いが(実話・・・アリサをーーー。) それに引き替え、ロバーニ義父様はとても、いや異常にアリサに構いたがる! いいんだけど触りすぎ。 お母様も呆れからの憎しみも・・・ 溺愛義父様とツンツンアレクに愛されるアリサ。 デビュタントからアリサを気になる、アイザック殿下が現れーーーーー。 アリサはの気持ちは・・・。

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

クソつよ性欲隠して結婚したら草食系旦那が巨根で絶倫だった

山吹花月
恋愛
『穢れを知らぬ清廉な乙女』と『王子系聖人君子』 色欲とは無縁と思われている夫婦は互いに欲望を隠していた。 ◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。

【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話

象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。 ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。 ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。

年上彼氏に気持ちよくなってほしいって 伝えたら実は絶倫で連続イキで泣いてもやめてもらえない話

ぴんく
恋愛
いつもえっちの時はイきすぎてバテちゃうのが密かな悩み。年上彼氏に思い切って、気持ちよくなって欲しいと伝えたら、実は絶倫で 泣いてもやめてくれなくて、連続イキ、潮吹き、クリ責め、が止まらなかったお話です。 愛菜まな 初めての相手は悠貴くん。付き合って一年の間にたくさん気持ちいい事を教わり、敏感な身体になってしまった。いつもイきすぎてバテちゃうのが悩み。 悠貴ゆうき 愛菜の事がだいすきで、どろどろに甘やかしたいと思う反面、愛菜の恥ずかしい事とか、イきすぎて泣いちゃう姿を見たいと思っている。

[R18] 18禁ゲームの世界に御招待! 王子とヤらなきゃゲームが進まない。そんなのお断りします。

ピエール
恋愛
R18 がっつりエロです。ご注意下さい えーー!! 転生したら、いきなり推しと リアルセッ○スの真っ最中!!! ここって、もしかしたら??? 18禁PCゲーム ラブキャッスル[愛と欲望の宮廷]の世界 私って悪役令嬢のカトリーヌに転生しちゃってるの??? カトリーヌって•••、あの、淫乱の••• マズイ、非常にマズイ、貞操の危機だ!!! 私、確か、彼氏とドライブ中に事故に遭い•••• 異世界転生って事は、絶対彼氏も転生しているはず! だって[ラノベ]ではそれがお約束! 彼を探して、一緒に こんな世界から逃げ出してやる! カトリーヌの身体に、男達のイヤラシイ魔の手が伸びる。 果たして、主人公は、数々のエロイベントを乗り切る事が出来るのか? ゲームはエンディングを迎える事が出来るのか? そして、彼氏の行方は••• 攻略対象別 オムニバスエロです。 完結しておりますので最後までお楽しみいただけます。 (攻略対象に変態もいます。ご注意下さい)   

迷い込んだ先で獣人公爵の愛玩動物になりました(R18)

るーろ
恋愛
気がついたら知らない場所にた早川なつほ。異世界人として捕えられ愛玩動物として売られるところを公爵家のエレナ・メルストに買われた。 エレナは兄であるノアへのプレゼンとして_ 発情/甘々?/若干無理矢理/

処理中です...