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彼の為に決断する元娘と、彼女を決して逃さない元義父のお話【ハッピーエンドルート】
4.運命の選択肢
しおりを挟む「――ユーティス・フォービド。思ったよりも可愛らしいお嬢さんだ。彼を騙しているんだから、もっと大人っぽい妖艶漂う美女かと思ってたよ。これは意外だった」
「……ど、どうして……」
「どうして君達の居場所が分かったかって? ゼノとは長い付き合いだ。彼の考えは何となく分かるんだよ。次の逃亡先のおおよその見当も、……ね?」
「……っ!」
……私達の家は、ここからだとまだ見えない。彼の言った言葉から推測すると、私達の家はまだ特定出来ていないようだ。
なら、家と反対方向に逃げてバレないようにしなきゃ! この人とゼノは絶対に会わせちゃいけない! きっと連れて行かれちゃう……!
私は大きく身体を捻り、彼の手を振り解いて駆け出そうとしたけれど、それより早く腕を掴まれ足を止められてしまった。
「やれやれ……。すぐに逃げようとするなんて、俺はそんなに嫌われたのかな。騎士として、なるべく女子供には剣は向けたくないんだ。自分の血を見るのが嫌なら、この場で動かず大人しくしていてくれないか」
「……っ」
脅しに聞こえるそれは、声が真剣で嘘ではないことを物語っていた。
私が抵抗を止め逃げないことが分かると、彼は蒼色の瞳を細め、フッと形の整った唇の端を持ち上げた。
「うん、良い子だ。君は賢いようだな。――おっと、自己紹介が遅れたね。君の反応だと、俺のことが分かっているみたいだけど、一応しておこうか。俺の名は、ジャスティ・ストライト。君が前にいた国で、騎士団の団長を務めている者だ。ゼノとは……相棒の仲だな。ずっと一緒に、二人で騎士団を支えていた」
「…………」
「君のことは自己紹介せずとも分かるよ。彼の娘だったが、今は“夫婦”として共に暮らしているみたいだね。ただ、それに関して調べさせて貰ったが、足が付くことを警戒したのか正式な届出はしていないようだ。安心したよ」
「……っ」
「君についてはゼノからよく聞かされていた。毎日、顔を合わす度可愛いと自慢していたよ。今初めて君を見たわけだけど、確かにその通りだな。ゼノは君のことを自慢はしたが、決して会わせてはくれなかったからね。どうしてかは未だに分からないが」
こうして喋っている間も、彼は決して私から視線を外さず、掴んでいる腕を離そうとはしなかった。その強い力に、思わず顔を顰める。
「……あぁ、済まない。力が入り過ぎていたようだね。少し緩めようか。念の為、このままで話をさせて貰うよ。君がゼノを誑かしている悪女だったら、女子供関係なくすぐに斬り伏せていたけれど、どうやら違うようだ。それなら、君に選択肢を与えようと思ってね」
「……選択肢……?」
私が思わず聞き返すと、彼は微笑みながら小さく頷く。
「あぁ。君がゼノの幸せの為に、彼のもとを去って離れるか。このまま二人逃亡者として国に追われ続け、惨めで辛い生活を送るか。その二択をね」
「…………」
彼の蒼く鋭く光る視線が、私を容赦なく突き刺してきた――
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