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言いつけを破った元娘にお仕置きをする元義父のお話

4.後悔と自責に挟まれて

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「……ねぇ、ユーティスさん。今の旦那と別れて、僕と一緒になる気はないかな?」
「……え?」


 一瞬、ガーラさんの言葉が理解出来ず、思わず聞き返していた。


「あの旦那、僕と同じくらいの年だろう? 結構な年上じゃないか。だったら僕も君と一緒になれるよね? 前から君のことが気になっていたんだよ。清楚で可憐な君のことをね。君の行動を制限する旦那より、僕の方がずっとずぅーっと優しいよ? だからいいだろう? 僕と夫婦になろう? ね?」


 口元に笑みを貼り付け、一気にまくし立てて自分の言いたいことを口に出すガーラさんに私は強い恐怖を感じ、身体の震えが止まらない。

 ……でも、ちゃんと言わなければ。
 しっかりと断らなきゃ!


「……あ、の。――ごめんなさい、ガーラさん。お気持ちは、その……ありがたいのですが……。私は、ゼノ……旦那様を、心から愛していますので……。お気持ちには答えられません。ごめんなさい……」


 何とか伝えたいことを声に出し、頭を深く下げる。
 ソロソロと顔を上げると、先程と正反対の無表情なガーラさんが私をジッと見据えていて、喉からヒュッと音が出た。


「……ふぅん……そう。僕と一緒になる気はない、と。君はそう言うんだね? なら、君を攫って行くとするか。君みたいな美人は特に高く売れるんだよ。村の皆には、『魔物に食われてしまって跡形も残らなかった』って伝えておくから、心配しなくていいからね」
「……え……?」


 ガーラさんの口元に笑みが浮かんできたが、目は死んだ魚のように濁っている。
 ……もしかして、隣の町の誘拐事件の犯人は――


「……隣の町で、女性や子供達を攫った……のは……」
「あぁ、それ? 君の耳にも入っていたんだね。僕と仲間達がやったのさ。女子供は他の国で高く売れるからねぇ。この物置小屋の奥に、隣の町に繋がる転送装置があるんだよ。まさか、犯人がこんな辺境の村で食堂の店長をやってるって、誰も思わないだろう? 誰にでも優しく常に笑顔を絶やさなければ、皆僕を信用するしね。ヒヒッ、チョロ過ぎだろ。君もそれで僕を信用したクチだろ?」
「…………っ」


 まさにその通りで、反論の言葉が出てこない。
 

「じゃあこれから君を攫うね。……うーん……でもせっかくの美人だし、ただこのまま売り飛ばすのは勿体無いなぁ。皆全員帰ってもうここには誰も来ないし、他の女達と同様に“味見”をしてからにしようか」
「……!!」


 下卑た笑みを浮かばせたガーラさんに背を向け、急いでこの小屋から出ようとしたけれど、扉の取手に手を掛ける寸前で腕を掴まれてしまった。


「いや……っ! は、離してっ!」
「やーだよ。君はここで僕に抱かれるんだ。大人しくしていた方が身の為だよ? うっかりこのナイフで切っちゃうかもしれないし。――さぁて、まずは服から切っちゃおうか。ヒヒッ」
「……や、やだ……っ」


 両手首を強く掴まれ振り解けず、私は為す術がない。
 絶望して涙で滲んだ瞳をギュッと閉じた時、


「ギャアァァッッ!!」


 ガーラさんの悲鳴が小屋中に響いた。同時に掴まれていた手首がスルリと離される。
 驚いて思わず頭を上げると、すぐ目の前には、よく知った、広くて頼もしい背中が――


「ゼ、ノ……?」


 ゼノは感情のない顔でチラリとこちらを見ると、何も言わずすぐに視線を前に戻した。
 私はその紅い眼光にジワリと泣きそうになる。


 ……あぁ……。
 ゼノは、言いつけを破った私に対してひどく怒っている……。



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