冷徹公爵様にお決まりの「君を好きになることはない」と言われたので「以下同文です」と返したら「考え直してくれ」と懇願された件について

望月 或

文字の大きさ
上 下
2 / 16
◆本編◆

2.心高鳴る“噂”

しおりを挟む



 そして、私達は考えられる点を思いつく限り挙げていく。


「娘に一目惚れ……は無いか。五年前に御両親を亡くし、よわい二十四歳で公爵になったあの方は、この国で王族の次に偉くて、国一番の魔導師様だしな。その上女性の誰もが振り向くあの整った容姿ときたもんだ。我々にとって高嶺の花の人物が、底辺にいる伯爵の娘に一目惚れは有り得んな」
「えぇ、自分で言うのも悲しいけど無いわね。本当に有り得ないわ。ちょっと見てたらギロリッと睨まれるくらいだもの」
「……お前の場合、“ちょっと”じゃないと思うんだよなぁ……。毎回穴が空くほど見つめていただろ……」
「――えっ!? そ、そんなっ!? な、何のことやらサッパリだわっ!?」
「……はぁ……。やれやれ……」
「この子は見た目通りの平凡で目立たない子ですし、一目惚れは一ミリも可能性はありませんわね……。――あっ、勿論、母目線としてはあなたはとっても可愛い娘ですよ? 目に入れても痛くないくらいですもの」
「ふふっ。お母様、必死のフォローありがとう。分かってるから大丈夫よ」


 私は全く気にせずクスリと笑うと、別の理由を考えてみる。
 前世で読んでいた小説や漫画を参考にすると、可能性があるのは――


 ――あっ、もしかして……?


「“政略結婚”、かしら……。うちの資産が目的……とか?」
「うちの資産か……。なるほど、我が伯爵家はこの辺りでは有数の鉱山をいくつか所有している。そこから貴重な鉱物も発見されているし、その可能性は高いな」
「えぇ、確かに……。もうそれしか考えられませんわね」


 父と母は納得したように大きく頷いた。
 

「アディル、お前はどうしたい? この申し込みを受けるようであれば、私達はお前を全力で支える。オブラスタ公爵家と繋がるのは得であって損は無いからな。しかし断るようであれば、私達はお前と伯爵領の我が民を全力で守るよ。うちは他に後ろ盾もあるから心配しなくていい。お前の判断に任せるよ」
「えぇ。自分が“幸せ”になる、望む方を選びなさい。後悔の無いように、ですよ?」
「お父様、お母様……。ありがとう、大好きよ――」


 優しく微笑む父と母に胸が熱くなった私は、泣きそうになるのをぐっと堪え、しっかりと首を縦に振った。


「その縁談、有難く受け入れます」





 ――そして、嫁ぐ日の前日、私を心配してくれた友人が伯爵家を訪ねてきて、公爵家にまつわる“噂”を教えてくれたのだ。
 私はそういう類は疎いので知らなかったけれど、結構有名で信憑性のある“噂”らしい。


「オブラスタ公爵は、一緒に住んでいる継母の娘である義妹と相思相愛な仲で、結婚の約束もしていた」


 ――と。


 私はそれを聞いた時、胸が一層大きく高鳴った。
 ――ショックの方ではなく、“期待”の方の高鳴りで。



(もしや……あの“伝説のお言葉”が聞けるかもっ!?)



しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした

楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。 仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。 ◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪ ◇全三話予約投稿済みです

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...