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6.刺さったままの棘 *
しおりを挟むおれ達は、あの村から離れた町の宿屋にいた。
二人共、あんな高い崖から飛び降りたのに、掠り傷の一つもしていない。
アルは『浮遊魔法』が使えたのだ。こいつが魔法を使えたなんて、全然気付かなかった……。
だってアルは、村一番の剣の使い手なのだ。誰もこいつに勝てたことはない。
おれも手合わせして貰ったが、開始して早々剣を弾き飛ばされてしまった。
「俺に勝つなんて千年早いな」
なんて笑いながら言ってたけど、千年経っても勝てないと思う……。
そんな剣術が抜群にすごいアルだから、魔法は使えないと勝手に思っていたんだ。
宿は一部屋だけ借りた。突然のことだったからおれはお金を持っておらず、アルのお金だけが頼りで、今後のことを考えて節約する為だ。
……さっきからおれは、アルと必要最低限のことしか話していない。
村人達の言葉が頭から離れずに、止まることなくグルグルと回っていた。
「……おれが……【生贄】になってたら、村の人達は皆……助かったのかな……?」
無意識の内に心の疑問が口から漏れていたらしく、アルは途端に怒りの形相に変わった。
「それは絶対に違うッ!! そんなんで神が喜ぶとでも思うのか!? 逆にそんなことされて非常に迷惑だッ!! フザけたことを言うな、リューッ!!」
「う、でも……」
アルがおれの為に怒ってくれるのはすごく嬉しいけど、やはりどうしても考えてしまう。
ウジウジするのは良くないって分かっているけど……。
「リュー、シャワー浴びるぞ」
俯いていると、突然アルがそんなことを言ってきて、有無を言わせずおれの服を脱がし始めた。
「え、あ、アル……!?」
おれの戸惑いに構わず、服を全部脱がせ終わると、おれの身体をジッと見つめ、今度はアルも自分の服を粗雑に脱ぎ始めた。
「えっ!?」
まさか……一緒に入るのか!?
村長の家に居候していた時は、風呂場や自分の部屋で裸を何度も見られたことはあるけれど、一緒に入るのは初めてだ。
あ……そう言えば、アルの裸は初めて見るかも……。
ふとそう思い、全裸になったアルに視線を向けると、そこには見惚れるくらいに引き締まり、無駄な肉が全く無い細身の身体があった。
腹筋も六つに分かれていて、おれはついマジマジと見てしまい――その下にあるモノに驚愕した。
(な……何でこんなに大きく膨れてるんだ!?)
興奮しないと、こうは大きくならないはずだ。しかも反り返るほど天を向いていて……。
ちょっと待て……こいつは一体何に興奮したんだ!? ミシェさんはここにはいないし……裸の想像でもしちゃったのか?
それにしても大き過ぎないか!? おれのと全然違う――
「ほら、行くぞリュー」
目を瞠って固まっているおれの肩を抱いて、アルは無理矢理浴室へと入って行った。
この宿屋は、各部屋にシャワーだけの簡単な浴室が付いているのだ。
一人用だから、男二人が同時に入ると狭くて、あまり身動きが取れない……。
アルはおれのすぐ後ろに立ち、シャワーのコックをひねった。勢い良くシャワーが飛び出し、おれ達の身体を一斉に濡らしていく。
……あぁ、温かくて気持ちいいな……。
この鬱々とした気持ちも、全部洗い流してくれたらいいのに……。
おれの口から、知らずにふぅと息が漏れた。
「リュー」
後ろからアルに呼ばれ、何気なく振り返ると、その美形な顔がおれのすぐ目の前にあった。
驚く間もなく、アルの唇がおれの唇に重なる。同時に、顎に指を掛けられ顔の向きを固定されてしまった。
「……っ!?」
柔らかく温かな唇の感触と、目と鼻の先にはアルの美しい顔。蒼い瞳が、真っ直ぐにおれの瞳を見つめている。
おれは、『アルにキスをされている』という事実に、十数秒の時間を要した。
それをようやく実感したおれは、瞬時に顔を熱くさせながら頭を振って逃れようとした。
……が、おれの顎を掴む指の力が強くて離れない。
息が苦しくなり、酸素を求め口を開いた瞬間、アルの舌がおれの口内にニュルリと入ってきた。
「っ!!?」
思わず引っ込めた舌は逃げること叶わず、アルの熱い舌によって絡み取られ、唾液を思い切り吸われた。
そのまま、唇の角度を変え何度も何度も吸われるが、一向に唇を離してくれず、おれの目尻に涙が浮かんできた。
アルの唾液もおれの口内に流れ込み、否応なくそれをコクコクと音を鳴らし飲んでいく。
すると、おれの気持ちと身体に異変が起こった。ふわふわと宙に浮いているような感覚になり、身体が無性に疼き出したのだ。
アルはおれの異変に気付き、ようやく顔を離してくれた。そして、何故か嬉しそうにフッと笑う。
「めちゃくちゃトロけてすっげぇ堪んねぇ顔してるぞ、リュー? ――やっぱそうだったんだな……ははっ」
「……?」
アルの言葉の意味が分からない。脳にぼんやりと霞が掛かっているような感覚だ。
「――ほら、固くなってる」
アルはそう言うと、後ろからおれの下半身に手を伸ばし、陰茎を躊躇なく握ってきた。
そこでおれは気付いた。さっきまでフニャフニャだったおれのモノが、固くなって形を成していることに。
「……え……。なん、で――」
「気持ち良くさせてやるよ、リュー。何も考えずにお前はただ感じてろ」
口の端を上げながらアルは囁くようにそう言うと、再び深いキスをしてきた。
そして、握っていたおれのを躊躇なく扱き出したのだ。
ただでさえアルのキスが気持ちいいのに、ソコまで刺激されたら……!!
――案の定、おれはあっという間に射精をしてしまった。快感が頭の天辺から足の爪先までを貫き、意思とは無関係にビクビクと身体が大きく痙攣する。
おれの精液が、アルの手にビッショリとついてしまった……。
「あ……。ご、ごめ、アル――」
「何が?」
アルはおれから唇を離すと、精液の付いた手を自分の口元に持ってきて、何とそれを舐め始めた。
おれはギョッと目を剥いて、その行動を止めさせようとアルの腕を掴む。
「ばっ、バカ!! 何してんだよ……!!」
「何って……。お前の、すっげー甘くて美味しいし舐めてるだけだけど?」
「っ!?」
あっけらかんと言いながらも、嬉しそうにおれの精液が付いた手を舐め続けるアルに、おれは石のように固まり返す言葉が出なかった。
「あー……。俺も出さなきゃキツいな……。リュー、脚貸してくれ」
「へ……?」
返事を聞かず、アルはおれを後ろから抱きしめると、おれの股の間に大きく膨れ上がった陰茎を差し込んできた。そして、腰を前後に振り始める。
アルの低く荒い息遣いが、おれの耳をくすぐってきた。
「あっ……」
アルのモノとおれのモノが擦れ合い、浴室の中に卑猥な音が響き渡る。
それだけでも変な気分になるのに、更にアルはおれの両方の乳首を摘んで擦り始めたではないか。
「あ、アル……っ! それ駄目だっ! 止め――」
おれは抗議の声を出して後ろを振り返り――すぐにアルのキスで唇を塞がれてしまった。それは程なくして濃厚なキスへと変わる。
上と真ん中と下の“三つの刺激”に、おれのモノはまた固さを増していって――
「――はっ……あ、アルっ。おれ、また……っ」
「あぁ……。一緒にイこうぜ、リュー……」
乳首を乱暴に摘まれ、再び口内を貪られながら、おれは二回目の射精をしてしまった。同時に、アルからも勢い良く精が放出される。
二回も出してしまい、おれは脱力感でくたりとアルの胸に寄りかかってしまった。
そんなおれを、アルは嬉しそうに抱きしめ、頬や額に口付けを落とし、唇にキスをしてくる。
――こいつ、コレをする為におれとシャワーに入ったんじゃないだろうな……。
アルの満足そうな顔を見て、おれはグッタリしながらもそう感じてしまったのだった……。
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