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1.村の神、誕生

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 赤ん坊の泣き声が聞こえる。
 それは、とても近い場所から聞こえてきて。


 ――あぁ、そうか。自分が泣いているのか。


 自分はこの村に産まれたんだな。

 姿は人間だけど。



 この村を守る“神”として。



 ――あぁ、分かってる。ちゃんと守るさ。
 この村を守れなかった場合は、自分の死後、【魂】は神が最も嫌う屈辱的な場所――『地底』に落とされるんだろう?
 存命中、余程の善行を積まない限りは。


 地上で産まれて寿命を終えた神の【魂】は、空より高い『天上』へと昇るのが通常だ。
 そこは、暖かな陽の光が常に差して、多大な幸福を感じられる場所らしい。


 反対に、『地底』は陽の光が全く当たらず常に薄暗く、神にとって非常に気が滅入り鬱々する場所だとか。


 そんな所に落とされるくらいならと、『地底』行きに決まってしまった神は、殆どが自ら“【魂】の消滅”を選ぶらしい。


 自分も、そんな場所は絶対にイヤだ。



 だから、守ってみせるさ。この村を。




 この寿命が終える時まで――





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 幼い頃、母に冒険物の絵本を何度も読み聞かせて貰った。
 主人公が剣や魔法を使って魔物を倒し、勇ましく冒険していく姿に、幼い頃の自分は強い憧れを抱いていた。


 けれど、自分はこの村の“神”だ。
 この村に留まり、見守り続けなくてはならない。


 ――自分が死ぬその瞬間まで、ずっと。



 だから……この思いは、憧れ“だけ”で終わるはずだった。




 ――『あの事件』が起こるまでは――





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