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86.Ishreeze Side A little extra ※※
しおりを挟むこれは、そう遠くない未来、とある日、とある夜に絡み合う、二人の情事のお話――
薄暗い部屋の、ベッドの上で。
長い黒髪の女性が、胡座で座っている灰青色の髪の男性と至近距離で向かい合っている。
彼女は彼の逞しい太腿に跨がって肩に手を置き、切なく艶やかな声をあげていた。
時々男性の腰が上下に動き、女性と繋がっている部分から厭らしい水音が響く。
その美麗の男性は、片方の手は女性の腰に回し、別の片方は彼女の胸とその桃色の先端を弄っていた。空いているもう一つの胸は、彼の唇が占領し、両胸を徹底的に苛めている。
(…………なっがーーい!!)
柚月は快感の涙を頬に伝わらせながら、心の中で絶叫していた。
前々から思っていたが、この人の胸の愛撫が異様に長過ぎる。
こうやって、挿れながらでも必ず胸を触ってくる。若干ウットリしながら。
そしてコトが終わると、必ずと言っていいほど自分の桃色だった乳頭はどちらとも赤くプックリとふやけ、乳房は赤い痕だらけになっているのだ。
とにかく、彼の胸の執着が凄まじ過ぎる。
(こんな小さな胸のどこがいいのかっ)
でも最近は、何だか少しずつ大きくなってきているような気もするが。
ともかく、今日こそはその理由を訊いてみようと、喘ぎの合間に口を開く。
「い、イシュリーズ、さん……っ」
「ん……?」
柚月の乳首を口内に含み舌で転がしていたイシュリーズは、それを離すと顔を上げる。そして、フッと目を細め微笑んだ。
「とても好い顔をしている……。可愛い、柚月……」
彼はこういうコトをしている最中、必ず「可愛い」を連発する。
柚月は自分のことを一度も「可愛い」と思ったことがないので、それを聞く度こそばゆくなり、顔が赤くなってしまうのだ。
「うぐ……っ。――あ、あのっ、どうしていつも胸ばっかり触るんですか……? こ、こんな小さな胸、弄っても面白くないでしょう?」
「何を馬鹿な事を。貴女の胸なら、例えペタンコでも愛しいんです。素直に言ってしまえば、四六時中触りたいのを我慢してるんですよ?」
「ちょ、ペタンコ……って、ええぇっ? な、何でそんなに……?」
戸惑いと困惑の混ざった柚月の疑問を聞きながら、イシュリーズは恍惚な表情で彼女の胸を優しく撫でる。
その擽ったさに身悶える柚月を愛おしそうに見つめながら、彼は答えた。
「俺のこの手で、貴女の胸が徐々に大きくなっていくのも嬉しいですし……」
「えっ、えぇっ?」
「それに……俺を“男”に戻してくれたから、もありますね……」
「へ……?」
柚月はキョトンとして、自分の胸を嬉しそうに触っているイシュリーズを見上げる。
(“男”に戻した……? イシュリーズさんは最初男の人で、次は女の人になり、また男の人に戻ったってこと? そんなバカなっ!? ……けど、女性のイシュリーズさんですか……。――うん、リュウレイさんと並ぶ超美人でアリですねっ!)
女性になったイシュリーズを想像し、柚月は心の中でヨダレを垂らしながらビッと親指を立てていると、イシュリーズが言葉を続けてきた。
「実は俺、柚月と再会するまで、下半身が全く勃たなかったんですよ。二十年間ずっと」
「――へ、ええぇっっ!?」
イシュリーズの突然の衝撃の告白に、柚月の口から素っ頓狂な声が漏れてしまった。
「に、二十年も……? え……えっ? じゃっ、じゃあ……もしかして、私としたのが……?」
「はい、初めてです」
「へっ、うえぇぇっっ!?」
柚月が目を白黒させて、仰天の叫びを出す。
「はっ、初めての時、あんなにおっきくなって……。しかもお上手だったのに……!? その後も、はっ、激しく何回もしたのに――」
「俺が経験豊富だと思ってましたか? それは心外ですね。でも、上手だと思ってくれていたのは嬉しいですよ。貴女を気持ち良くさせられた、という事ですから」
イシュリーズがクス、と微笑む。
こうして話している間も、柚月の胸から手を少しも離さず揉んでいるのは、流石としか言いようがない。
「だ、だって、あの手慣れ感は経験があるとしか……っ」
「経験は無くても、知識はありましたから。……誰かさんのお蔭で」
(誰かさん……? あぁ――)
柚月の頭にすぐ、とある人物が浮かんでくる。
「……ホムラさん、ですね?」
「ふふ、正解です。彼に色々と連れて行かれましたからね、あの頃は……。まぁ結局、何をされても勃たなかったですが……」
苦笑しているイシュリーズに、柚月のこめかみがピクリと動く。
「“連れて行かれた”……? “何をされても”……?」
「…………あ」
柚月のボソリと言った呟きに、イシュリーズはしまった、という顔をする。
口を滑らせ、彼女には言わなくてもいい事実を言ってしまった――
「ホムラさんのことだから、い、いかがわしい所に連れて行かれたんでしょうっ!? 何ですかっ、経験ないとか言っておきながら、思いっ切りアリアリじゃないですかぁっ! この嘘つき与太郎っ!!」
「よ、よたろう……? 違います、聞いて下さい柚月! 俺の方からは何もしていません! 女性側からは……その、正直……色々とされましたが……俺は一切手を出していません! 脱いでもいないし、キスもしていません! 全て貴女が初めてです! 断じて誓います!!」
「い、い、いろいろぉ……っ!? 手を出してなくても、女の人からムフフ~なあ~んなコトやこ~んなコトされてるじゃないですかぁっ! もうっ、ホント信じられない!! イシュリーズさんのスケベ! どスケベッ! ムッツリどスケベーーッ!!」
「ゆ、柚月……。お願いだから、落ち着いて……」
目に涙を浮かべて叫びながら、柚月はイシュリーズの裸の胸をポカスカと拳で叩く。
全く痛くないし、言動が悶絶するほど可愛いし、柚月が思う“ムフフ~なあ~んなコトやこ~んなコト”とは一体何なのか気になるし、ヤキモチを焼いてくれているのかと思うと無性に嬉しくなってくるし、けれどどうやって彼女の怒りを鎮めようかと必死で考えるイシュリーズの頭の中は非常に大忙しだった。
「……柚月、すみません……。あの時は……正直に白状しますと、貴女にはこの世界ではもう会えないからと少し自暴自棄になって、その気は全く無かったのですが、女性に触れられるのを許してしまいました。けれど女性にいくら触られても裸を見ても、全く何も感じませんでした。少しでも感じていたら勃っていましたから。本当に、勃ったのは二十年ぶりに再会した貴女の胸に触れた時だったんです。脱衣場で貴女の裸を見てしまった時も、かなり反応してしまって戻すのに大変でした」
「なっ、えっ……」
「それに、俺を心配して色々と誘ってくれるホムラの気持ちもありがたかったですし、そんな彼の想いを無下には出来ず、断り切れない部分もあったんです。でも、部屋の中に入るだけにしておいて、女性が来たらすぐに部屋から出て貰うようお願いすれば良かったですよね……。自暴自棄になっていたとはいえ、考えが至らず、本当にすみません……。どうか許して頂けないでしょうか、柚月……?」
「うぐぅ……っ」
シュンと下に垂れた耳と尻尾(の幻)を見せるイシュリーズにすっかり言葉を失い、唸りっ放しの柚月だったが、不意に頬を膨らませると、突然彼にギュッと抱きついた。
「柚月……?」
「今後、もう絶対そんな所には行かないで下さいね? ホムラさんが誘ってきても、絶対にっ!!」
イシュリーズに抱きつきながら、眉尻を上げてプックリとほっぺたを大きくしている柚月に、彼は無性に愛おしく感じることを止められなかった。
そして、嬉しそうに「はははっ」と声を出して笑い、柚月をギュッと抱きしめ返す。
「行くわけないじゃないですか。今は貴女がいるのに。天と地がひっくり返っても有り得ません」
「……なら、いいです……」
「――嫉妬、してくれたんですよね?」
「……っ。わ、悪いですかっ!?」
「ははっ。いえ、嬉しいです。柚月が俺の事ちゃんと好きなんだって改めて分かって、ものすごく嬉しいですよ」
「そりゃあ……。す、好きに決まってますよ……」
「……ふっ、ははっ! 本当に貴女って人は……。俺はこれからも貴女一筋ですから心配は無用です。生涯、貴女だけを愛しますから。一生離さないって言ったでしょう?」
言い終わる前に、イシュリーズの濃厚な口付けが柚月を襲う。
「んん……っ」
長い深い口付けの間にも、イシュリーズは柚月の胸の愛撫を忘れない。本当に流石以外の何者でもない。
「……っ。い、イシュリーズさ……っ」
「ん……。柚月、一緒に……っ」
唇を離し、イシュリーズは柚月の白い首筋に噛み付くと、腰の動きを早くする。
「んっ、あぁぁっ!」
「く……っ!」
愛液を掻き回す卑猥な音が結合部から響き、二人の鼓動の高鳴りが頂点に達すると、同時に果てた。
繋がっている箇所から、中に入り切れなかった白濁色の液がコポリと溢れ出てくる。
「はぁ、はっ……」
柚月はイシュリーズの胸に頭を預けて寄り掛かり、荒い息を繰り返す。
イシュリーズはそんな彼女を抱きしめ、うなじに何度も口付けし、赤い痕を散らせていった。
そして……。
「……あ、あの……イシュリーズ、さん? 私の中であなたのモノが何故かもうグングンと育っていってるんですが……?」
「ふふ、柚月が可愛過ぎるのがいけないんですよ?」
「わ、私の所為にしないで下さいっ! イシュリーズさんのソレが元気過ぎるのがいけないんですっ! 二十年間使ってなかったのに、何でそんなに現役バリバリなんですかぁっ!?」
「ははっ。二十年間、貴女の為に精力を養っていた、という趣旨がいいかもしれませんね。勿論付き合って下さいますよね? 俺のは貴女にしか勃たないんですから……。二十年分、――ね?」
「ひっ……。むっ、むり……絶対無理ぃーーっ!!」
「――おっと、逃すとでも? 夜はまだまだ始まったばかりですよ? 二人でたっぷりと気持ち良くなりましょうね……?」
「……あっ! まって、まだっ……あ、やだぁ……っ!」
「ふふっ、可愛い……。俺の……俺だけの柚月――」
――これは、そう遠くない未来、とある日、とある夜から昼にかけて絡み合う、二人の情事のお話――
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