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60.初めての……
しおりを挟む“消毒”という名の『お仕置き』がようやく終わりました……。
私は羞恥と鼓動の高鳴りで顔を熱くさせながら、自分の用件である「服を乾かせるか」をイシュリーズさんに訊いてみたところ、出来るとのことでした。やった!
早速イシュリーズさんのお部屋からウインさんを持って来て頂き、乾かして貰います。
あ、説明を忘れていましたが、《聖騎士》の技は、【聖なる武器】との波長が届く所でないと発動出来ないみたいです。
ちなみに《風の聖騎士》の場合は、【本体】と“剣”が揃っていると全ての技が使えるのですが、【本体】だけだと簡単な技しか使えないそうです。
で、今使う技は簡単な部類に入るらしく、小さな竜巻を出して、そこに濡れている服を入れると、高速回転で水を飛ばして乾かしてくれるんだそうです。
うん、とっても便利ですね! 便利で可愛い、一家に一つ欲しいミニ竜巻!
はい、そんなこんなで乾かして頂きました! イシュリーズさんとウインさんにお礼を言い、早速着替えます。
着替え……ます……。
着替え……。
…………。
「…………あの、イシュリーズさん?」
「はい」
イシュリーズさんが、側でニコニコしながら立っています。
絶対分かってるよねこの笑顔は!
「えっと、今から着替えますので……。その……外へ……」
「出来たらお礼を戴きたいのですが」
「え……?」
イシュリーズさんは目を細めて笑うと、自分の口を人差し指でトントンしました。
「…………っ」
その意味を察し、私の顔が真っ赤に染まります。
イシュリーズさん、最近何だか色々ヤンチャだな!?
『やれやれ……。ユヅキ、判断はお前に任せるよ』
ウインさんが呆れ半分、溜め息半分の口調で言葉を出します。
私は覚悟を決めると、イシュリーズさんのすぐ目の前に立ち、震える足の爪先をグッと伸ばしました。
……が、届きません……。覚悟を決めた矢先に弊害がっ! 身長高過ぎです!
イシュリーズさんは可笑しそうにクスッと笑うと、身体を屈ませて私に顔を近付けてくれました。
「……どうぞ?」
「…………っ」
私はギュッと目を瞑り、顔を持ち上げると、イシュリーズさんの唇に自分の唇をくっつけました。
ふに、と柔らかい感触がして、自分からキスをしたという実感が沸き上がり、再び頬が朱に染まります……。
そっと唇を離して、まずは片目を開けると、イシュリーズさんの嬉しそうな表情が間近にあり、心臓が飛び出しそうになりました。
「意識がある状態で、初めて貴女からして貰えましたね。とても嬉しいです」
「あ……」
そう言えば、寝惚けて私からした時がありましたね……。それ以外はいつもイシュリーズさんの方からで、自主的に私からしたのは初めて……。
………………。
――っていやいやいやっ、告白して想いを確かめ合ったのは昨日ですが!? しかもその夜! まだ二十四時間経ってないしっ!
付き合っていないのに勝手にチューしちゃ駄目でしょ!? アウトでしょ!?
――って、付き合っていないのに勝手に……たまに無理矢理チューしてきた人(しかも結構な回数で)が目の前にドーンといますけれども!!
ともかく、『長い間付き合ってるのに相手から全然キスしてこない』みたいなニュアンスで言わないでくださーーいっ!!
……まぁでも、こんなに喜んでくれるなら、たまには私からしましょう……。
今から牛乳を毎日飲んで背を伸ばさなくては……。
機嫌良くイシュリーズさんがご自分の部屋に戻って行ったので、私は着替えを済ませ、支度の続きをします。
リュウレイさんにストールを借りに行き(またもや何も理由を聞かないでくれたリュウレイさん……本当にお優しい……)、首に巻いて、必要な物を入れたリュックサックを背負って、準備オッケーです!
玄関から外に出ると、お庭にホムラさんの姿がありました。
その彼の前に、何と大きな火の鳥がいます!
えっ、もしかして不死鳥……!?
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