上 下
43 / 134

43.私の信じられない出自

しおりを挟む



「はぁ、ようやく落ち着けるよ~」

 ホムラさんは大きく息をつくと、大きなソファにゴロリと寝転びます。


 ここは、リュウレイさんのお家の客間です。
 彼女が王様に魔物襲撃の件を報告している間、私達はこのお部屋で休ませて貰っているのでした。

「イシュリーズさん、腕の傷は大丈夫ですか……?」

 鎧を脱いで軽装姿になり、腕に包帯を巻いているイシュリーズさんに、私はそっと問い掛けます。
 彼はそんな私に、優しい微笑みを浮かべて頷きました。

「えぇ、心配いりませんよ。あの後すぐにリュウレイが水技で血を止めてくれましたし、傷もすぐに消えるでしょう」
「そうですか……良かった」
「これで暫くの間、《勇者》達は城から動かないでしょう。彼らを気にせずに、元《雷の聖騎士》の件に専念できます」
「でも、ウインさんの相棒さんが《勇者》の所に……」
『ユヅキ、それは大丈夫だ。《聖騎士》は【聖なる武器】をいつでも自分の元に呼ぶ事が出来るからな』

 あ、そうでしたね!
 私は胸をホッと撫で下ろします。


「すまない、待たせたな」


 その時ガチャリと扉が開いて、鎧を脱いでワンピース姿になったリュウレイさんが入ってきました。
 リュウレイさん、白色のスカートもよくお似合いで!
 モデル並のスタイルだから、どんな服装でも似合うんだろうな……。

 ……それにしても、集まった《聖騎士》みんな美形揃いなんてどういうことなんですか。客間全体が美形オーラを受けてキラキラ輝いていますよ?
 いたたっ、降り注ぐ星が私にボコボコ当たりまくるっ。

 あぁ……部屋の隅にあるホコリになって、この美形達をいつまでも眺めていたい……。


「全然待っていませんよ? 王様へのご報告お疲れ様でした。あと、シャワー使わせて頂きました。着替えもありがとうございます!」


 ――あ、着替えといえば、ここだけの話なんですが……。その着替えの下着が、紐パンなんですよ。有り難く新品を戴いたのですが、種類がそれしかなくて……。この国ではこれが一般的なんでしょうか……。
 私、こんなん履いたの初めてです。紐で結ぶからサイズを気にしなくていいのがメリットですが、布面積小さいし、動いたら紐がスルッと解けそうで、何か心許ない!
 まぁ、誰かに見せる予定は全くないのでいいんですがね。
 やっぱりお腹辺りまですっぽり隠れるものが一番です。安心感半端ないですし。
 早く溜まっている洗濯物を洗って、今までの下着でお腹を優しく包み込みたい……。


 ――そこ、「女捨ててる」なんて言わない!

 
「いや、全然気にするな。お前は遠慮し過ぎだ、柚月。もっと頼っていいぞ。――ホムラ、反対にお前は図々し過ぎだ。ここを自分の家のように寛ぐな」

 ソファでゴロゴロとしているホムラさんを見て、リュウレイさんは呆れたように言葉を出します。

「いいじゃ~ん? リュウちゃんのお家、落ち着くんだも~ん」
「はぁ、まぁいいけどな……。では、途切れていた話の続きをしようか」

 リュウレイさんは空いているソファに腰を下ろします。
 そこへノックの音が聞こえ、老執事さんがお茶とお菓子を持って入ってきました。
 手際良くそれらをテーブルの上に並べると、頭を下げて静かに出ていきます。
 タイミングといい、あの老執事さん有能過ぎるっ!

「なんだい? その、途切れてた話の続きって?」

 ホムラさんがのらりと顔を上げて、お菓子をつまみながらリュウレイさんに訊きます。

「柚月の事だ」

 ……うっ、やっぱり名前を呼ばれるとドキッとしますね。

「あぁ、柚月ちゃんね。ボクもビックリしたよ~。まさか生きてるなんてさ」
「え、“生きてる”……?」
「待てホムラ、柚月は昔の事を忘れているんだ。順を追って説明しないと」
「…………?」

 何を仰っているのか、全く分かりません……。
 怪訝な顔のまま、隣りに座っているイシュリーズさんを見上げると、彼は何とも言えない表情で私を見つめ、私の手に指を絡ませてきました。

「イシュリーズさん?」
「説明しますね、柚月。落ち着いて聞いて下さい。……貴女は異世界からこちらにやってきましたが、元はここの世界の住人です」
「え……?」


 ここの世界の住人?
 一体何を言って――


「そうだ。そしてお前は、元《雷の聖騎士》、シデン・ライジンの娘だ」



しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。

airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。 どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。 2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。 ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。 あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて… あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?

身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈 
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】 妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

処理中です...