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43.私の信じられない出自
しおりを挟む「はぁ、ようやく落ち着けるよ~」
ホムラさんは大きく息をつくと、大きなソファにゴロリと寝転びます。
ここは、リュウレイさんのお家の客間です。
彼女が王様に魔物襲撃の件を報告している間、私達はこのお部屋で休ませて貰っているのでした。
「イシュリーズさん、腕の傷は大丈夫ですか……?」
鎧を脱いで軽装姿になり、腕に包帯を巻いているイシュリーズさんに、私はそっと問い掛けます。
彼はそんな私に、優しい微笑みを浮かべて頷きました。
「えぇ、心配いりませんよ。あの後すぐにリュウレイが水技で血を止めてくれましたし、傷もすぐに消えるでしょう」
「そうですか……良かった」
「これで暫くの間、《勇者》達は城から動かないでしょう。彼らを気にせずに、元《雷の聖騎士》の件に専念できます」
「でも、ウインさんの相棒さんが《勇者》の所に……」
『ユヅキ、それは大丈夫だ。《聖騎士》は【聖なる武器】をいつでも自分の元に呼ぶ事が出来るからな』
あ、そうでしたね!
私は胸をホッと撫で下ろします。
「すまない、待たせたな」
その時ガチャリと扉が開いて、鎧を脱いでワンピース姿になったリュウレイさんが入ってきました。
リュウレイさん、白色のスカートもよくお似合いで!
モデル並のスタイルだから、どんな服装でも似合うんだろうな……。
……それにしても、集まった《聖騎士》みんな美形揃いなんてどういうことなんですか。客間全体が美形オーラを受けてキラキラ輝いていますよ?
いたたっ、降り注ぐ星が私にボコボコ当たりまくるっ。
あぁ……部屋の隅にあるホコリになって、この美形達をいつまでも眺めていたい……。
「全然待っていませんよ? 王様へのご報告お疲れ様でした。あと、シャワー使わせて頂きました。着替えもありがとうございます!」
――あ、着替えといえば、ここだけの話なんですが……。その着替えの下着が、紐パンなんですよ。有り難く新品を戴いたのですが、種類がそれしかなくて……。この国ではこれが一般的なんでしょうか……。
私、こんなん履いたの初めてです。紐で結ぶからサイズを気にしなくていいのがメリットですが、布面積小さいし、動いたら紐がスルッと解けそうで、何か心許ない!
まぁ、誰かに見せる予定は全くないのでいいんですがね。
やっぱりお腹辺りまですっぽり隠れるものが一番です。安心感半端ないですし。
早く溜まっている洗濯物を洗って、今までの下着でお腹を優しく包み込みたい……。
――そこ、「女捨ててる」なんて言わない!
「いや、全然気にするな。お前は遠慮し過ぎだ、柚月。もっと頼っていいぞ。――ホムラ、反対にお前は図々し過ぎだ。ここを自分の家のように寛ぐな」
ソファでゴロゴロとしているホムラさんを見て、リュウレイさんは呆れたように言葉を出します。
「いいじゃ~ん? リュウちゃんのお家、落ち着くんだも~ん」
「はぁ、まぁいいけどな……。では、途切れていた話の続きをしようか」
リュウレイさんは空いているソファに腰を下ろします。
そこへノックの音が聞こえ、老執事さんがお茶とお菓子を持って入ってきました。
手際良くそれらをテーブルの上に並べると、頭を下げて静かに出ていきます。
タイミングといい、あの老執事さん有能過ぎるっ!
「なんだい? その、途切れてた話の続きって?」
ホムラさんがのらりと顔を上げて、お菓子をつまみながらリュウレイさんに訊きます。
「柚月の事だ」
……うっ、やっぱり名前を呼ばれるとドキッとしますね。
「あぁ、柚月ちゃんね。ボクもビックリしたよ~。まさか生きてるなんてさ」
「え、“生きてる”……?」
「待てホムラ、柚月は昔の事を忘れているんだ。順を追って説明しないと」
「…………?」
何を仰っているのか、全く分かりません……。
怪訝な顔のまま、隣りに座っているイシュリーズさんを見上げると、彼は何とも言えない表情で私を見つめ、私の手に指を絡ませてきました。
「イシュリーズさん?」
「説明しますね、柚月。落ち着いて聞いて下さい。……貴女は異世界からこちらにやってきましたが、元はここの世界の住人です」
「え……?」
ここの世界の住人?
一体何を言って――
「そうだ。そしてお前は、元《雷の聖騎士》、シデン・ライジンの娘だ」
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