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32.恒例の? ハプニング再び

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 衣服を脱いで裸になり、シャワーを浴びます。
 あぁ、数日振りのシャワー、すごく気持ちいいです……。
 鼻歌を歌いながら、頭と身体を丹念に洗い……はたと思い出します。

『可愛い可愛い、俺の女の子――』

 イシュリーズさんのあの言葉、記憶の中で見た美少年と同じ言葉でした……。
 でも、偶然ですよね? 確かに面影は似ているけど、私は日本生まれの日本人だし、あの男の子がイシュリーズさんのわけがないです。

 そう、イシュリーズさんのわけ……。
 イシュ……。

 …………。

 
 うああぁぁっ、イシュリーズさんに直接胸触られたーーっ!
 こんなちっちゃい胸、思いっ切り揉まれたぁーーっ!
 しかも、しかも……。数日間洗っていない私の身体の匂いを確実に嗅がれたぁーーっ!!


 だってあんなに密着して!! む、胸や鎖骨に唇まで当てられて……っ!
 絶対に臭かったよね!? 優しいから言えなかっただけで!!

 あぁあ……恥ずかし過ぎてイシュリーズさんと顔が合わせられないぃっ!

 シャワー室を掃除しながら悶えまくった私ですが、もう嗅がれてしまったことはどうしようも出来ないので、トボトボとシャワー室から出ます。

「あ」

 そこに、タオルと着替えを持ったリュウレイさんが立っていました。
 全く隠してなかったので、バッチリ全身を見られてしまいましたよ……。

 あぁ、そう言えば、前にも似たようなことがありましたよね? 相手はイシュリーズさんで。
 そうそう、あの時も最初にない胸を見られ、次に脂肪付きのお腹を見られ……。

 …………。

 ……う、う~ん?
 イシュリーズさんと違って、長い時間ジーッと見られてますね……? 相手は同じ女性だから見られても別にいいのですが、そんなにお腹の脂肪がすごいでしょうか?
 ――はっ! それとも脂肪をタプタプしたいとか?
 美人にそんなことされたら、私鼻血吹いて倒れますって!


「……柚月さん。その、お腹は……」


 リュウレイさんが、半ば呆然としながら問いかけてきます。
 お腹? ……もしかして、いつの間にか三段腹になってました!?
 どっ、どうしましょう! 毎日腹筋しておけば良かった!!

 私は慌ててお腹を見ると、いつも通りプニッと感のある、変わらないお腹でした。
 んん? 何をそんなに驚いてるんだろう?

 ……あ、そうか。昔から気にしてなかったから気付かなかったけど、変わってるところと言えば――


「この、色の違う部分ですか?」
「そう……だ」


 私のお腹には、少し濃い肌色になった部分があります。
 丁度お腹の中央で、大き目のまん丸い形の痣です。

「これ、生まれつきらしいんですよ。実は背中にも同じ形があるんですよ、ほら」

 私はそう言うと、クルリと後ろを向きます。
 背中の下辺りにも、同じまん丸の痣があるんです。
 
「珍しいでしょう? でもこれ、母にも同じものがあるんですよ。それも同じ場所で、お腹と背中に。だから、小さい頃は『お揃いだ』って喜んでました」
 
 母さんと同じものがあるってだけで、小さい頃の私はすごく嬉しかったんですよね……。

「……柚月さん。その、母君殿のお名前は……」
「え? あ、蕾って言います。光河蕾です」
「つぼ……み……」

 リュウレイさんは、口に手を当て母の名前を呟きます。
 どうしたんでしょう、リュウレイさんの様子が少しおかしいです……。

「お前は、“あの”柚月? イシュリーズはそれを知って、お前を……。いや、だがあの時確かに――」
「リュウレイさん? リュウレイさーん?」

 リュウレイさんは私の呼び掛けに、ハッとして意識をこちらに戻したようでした。

「あ、あぁ、すまない。ちょっと考え事をしていてな……。タオルと着替えを持ってきたから使ってくれ。私の服で申し訳ないが」
「いえ、そんな……こちらこそすみません。ありがとうございます」

 私はニコリとしてそれを受け取ると、リュウレイさんは真面目な顔で、何故か私をジーッと見つめています。
 まだ人と目を合わせられない私は、海のような深い青色のその視線から、ふいと目を逸らしてしまいました。
 でも、その視線に嫌な感じが全くしないことに気付き、チラチラと瞳を合わせてみます。

 ……え、な、何だろう? 美人にそんなに見つめられると、ものすごく照れるんですが……。

 私の顔が真っ赤になっているのに気付いたらしく、リュウレイさんも頬を赤くして踵を返しました。

「す、すまない。女性の身体をジロジロ見るのは不愉快だよな」
「いえ、その……リュウレイさんだったら、全然問題ないですよ?」
「そ、そうか。ありがとう。その、長居してしまいすまなかったな」

 照れたように微笑み、足早に去っていくリュウレイさんを見送りながら、


「か、可愛い……。ギャップ萌え……」


 と、ポロリと口から本音が漏れたのでした。


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