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23.今からダイエットは間に合いますか?
しおりを挟むさて、意気込んだのは良いのですが。
一つ……とても重大な問題があります。
それは――
ダイエットをする時間がないということです!!
私が重たくて、抱え切れず途中で二人して落ちてしまったら大変です!
私一人だけなら落ちるのは仕方ないのですが、イシュリーズさんまで巻き込んでしまったら、申し訳なさに心が押し潰されそうです……。
「ウインさん、ちょっくら一時間位走ってきてもいいですか?」
『いきなり何を言っているんだ? 先程魔物に追い掛けられて散々走ったじゃないか。それにそんな時間は無いぞ。支度はもう出来たのか?』
「はい、それはもうバッチリ大丈夫なんですが……」
時間がないのは分かっているんですけれども!
同じくらい大事なことなんですよっ!!
『さすがに野宿用の荷物までは一緒に持っていけないな。イシュリーズ、そこに壊れ物や大事な物は入っているか?』
ウインさんの問い掛けに、イシュリーズさんが首を横に振って答えます。
『なら大丈夫だな。その荷物だけ先にブルフィア王国まで飛ばすか』
「えっ、飛ばす?」
『あぁ。見ていれば分かるさ。ユヅキ、少し離れていてくれ』
「あっ、はい!」
私は慌ててイシュリーズさんから離れ、少し遠くの場所まで移動しました。
『よし。やるぞ、イシュリーズ』
イシュリーズさんは頷くと、ウインさんから“剣”を抜き、それをシュッと一振りします。
すると、ゴゥッと音を立て、黄緑色の小さな竜巻が発生しました!
イシュリーズさんはそれにヒョイと荷物を乗せると、“剣”を空に向かって掲げ、何かを呟きます。
その瞬間、竜巻は荷物を乗せたままクルクルと円を描きながら浮上し、そのまま上空へと消えていきました。
私はそれを、口をポカンと開けながら見送ります。
『竜巻の行き先をブルフィア王国に指定した。これであの荷物は王国の入口辺りに着いているはずだ。私の相棒が必要な事と、イシュリーズが行った事のある場所しか使用出来ないのが欠点だが、なかなか便利な技だろう?』
ウインさんの説明に、私はまだあんぐりと口が開いたままコクコクと頷きます。
うわぁ……すごいなぁ! あんな重い荷物を軽々と運ぶなんて!
重い荷物を……軽々……と……?
「…………っ!」
我ながら良い案を思い付きました!
これで万事解決ですっ!
「ウインさんっ! その技、私にも使って下さい! 私を竜巻でブルフィア王国まで飛ばして下さい!」
『……は? 何を言っているんだ君は』
「それならイシュリーズさんの負担が少なくて済むでしょう? 汗だくで腕をプルプル震わせながら重たい私を抱えて飛ばなくて済むんですものっ! 我ながらナイスアイディアだと思うのですがっ!」
熱弁する私の瞳は、きっとキラキラと輝いていたことでしょう。
イケメンが汗だくで腕プルプルなんてこと、絶対にさせるわけには参りません!
絵的にもアウトですし、私の申し訳なさも半端ないですし!
『…………』
ウインさんは暫く無言でしたが、
『……イシュリーズに話してみよう。後悔するなよ、ユヅキ?』
…………?
何を後悔するというのでしょうか。お互い利益しかないというのに!?
ウインさんとイシュリーズさんが少し遠くの場所で話しているのを、私は瞳を輝かせながら待ちます。
すると、イシュリーズさんがこちらを向いて、ニッコリと笑いました。
「…………っ!」
私も満面の笑顔で返します。
ほら、イシュリーズさんも賛成の顔をしているじゃないですか!
ウインさんてば心配性なんだから!
イシュリーズさんが笑顔のままでこちらに向かって歩いてきます。
私もニコニコしてイシュリーズさんを待ちます。
さぁ、私に竜巻を下さい!
先に行って、荷物番してイシュリーズさん達をお待ちしていますねっ!
応援ありがとうございます!
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