【R18】《用無し》と放り出された私と、過保護な元《聖騎士》様の旅路

望月 或

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14.初めての野宿

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 ……と、ウインさんの話に没頭していたら、いつの間にか大きな森の入口に来ていました。

『ブルフィア王国に行くには、この森を突っ切らなければいけないんだ。今夜はこの森で野宿だな』

 森の入口の前で簡単な昼食を取って休憩した後、森の中に入ります。
 やっぱりイシュリーズさんは、早々に私の手を取り恋人繋ぎで指を絡めてきます。そして距離感近いです。
 これがイシュリーズさんのデフォルトですか。そうなんですか。
 いやでも森の中では有り難いです。陽の光があまり入ってこなくて薄暗いし、あちこちからフクロウや虫の声が聞こえてきて、少し怖いですから……。

 怯えから、イシュリーズさんの手を強く握ると、彼の表情がふっと緩んだ気がしました。

『たまに、“魔界へ通じる小道”が開かれてな、魔物がこちらの世界に迷い込んで来る事があるんだ。用心はしてくれ』

 ヒィッ! そうなんですか!? 誰だか知らないですけど、勝手に開かないで下さいよ!
 絶対イシュリーズさんから離れないようにしましょう!

 今度は私の方からイシュリーズさんにくっつくと、クスリ、と小さく笑われました。
 えぇ、えぇ。自分でも現金だって分かってますよ!
 でも平和な世界でずっと生きてきた私にとって、魔物は未知数に怖いんですって!
 

 幸いにもその日は何事も起きず、日も暮れてきたので森の中で野宿をすることになりました。
 私は野宿は生まれて初めてなので、やり方は全てイシュリーズさんにお任せです。
 お役に立てず本当に申し訳ない!
 ここで、晩ご飯用の即席で作れる美味しいスープが披露出来たら良かったんですが、ここら辺の野草の知識が全くなく、調味料も分からないときました。
 大人しく携帯食を食べておきます……。
 役立たずで本当にすみません……。
 
 木陰で簡単に身体を拭き、歯もしっかりと磨いて。すっかり夜も更けたので、就寝の時間となりました。
 見張りは、ウインさんが何かあれば呼んでくれるので、私は地面に布をひき、隣にウインさんを置いて、毛布に包まって眠らせて頂きます。
 イシュリーズさんは、木に寄り掛かり、座って眠るそうです。
 何かあった時、すぐに対処出来るようにとのことでした。さすが騎士様です、頼りになりますね!

 では、おやすみなさい……。


 ………………。

 ゴロゴロ。

 …………。

 ゴーロゴロ。

 ……。


 ……ね、眠れないっ。


 今日は今まで生きてきた中で一番と言っていいほど沢山歩いて、身体は疲れ切っているのですが、意識が冴えてしまって眠れません……。
 布を下にひいてはいるけど、地面のゴツゴツした固さも邪魔して寝られないのかも……。

 どうしましょう、恒例の羊でも数えましょうかね……。
 では参ります。


「羊が一匹、羊が二匹、羊が……脱走した! 代わりに山羊が紛れ込んできた! この際山羊でもいいから数え……また脱走!? ――って騒がしくて余計眠れなーーいっ!!」


 そう一人ボケツッコミをしていると、


「ユヅキ」


 と、誰かに呼ばれた気がして、ガバリと飛び起きました。

「あれ? ウインさん、呼びました?」
『私じゃないぞ』
「え? じゃあ気の所為?」

 一応イシュリーズさんの方に振り向くと、こちらを見て、微笑みながら手招きをしています。
 え? もしかして、さっき呼んだのってイシュリーズさん?
 私の名前、呼べるようになったの!?

 驚きながらも毛布を持ってイシュリーズさんの所まで行くと、ぐい、と手を引っ張られ、彼の腕の中に閉じ込められました。

「え? ……え?」

 私は訳が分からずイシュリーズさんを見上げます。
 イシュリーズさんは自分の毛布を私に巻いてくれて、微笑みながら私を優しく抱きしめています。

『地面が固くて眠れないのを分かっていたようだぞ。そっちの方が寝やすかったらそこで眠るといいだろう』

 ウインさんが解説をしてくれました。
 え、寝るってここで!? イシュリーズさんが巻いてくれた毛布のお蔭で暖かいですけど……。
 た、体勢が恥ずかしくて……!

 けれど、毛布の暖かさと、細いけど逞しい腕に包まれる安心感に、急激に眠気が襲ってきました。
 でもこのままじゃ、イシュリーズさんが寒いままです……。
 私は自分の毛布を広げると、イシュリーズさんごと包み込みました。
 イシュリーズさんは私の行動に目を見張ったけど、クスッと笑って、私の身体をギュッと抱きしめます。

「おやすみなさい……」

 私は何とかそれだけ言うと、すぐに意識を手放しました。


 手放す瞬間、額に柔らかいものが触れたような気がしました。


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