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2.二人の“秘め事” *
しおりを挟む「ルカ……」
ホークレイは、彼だけが呼ぶ私の愛称を囁くように呼ぶと、抱きしめたまま額に唇を落としてきた。
そして唇を下へと這わせながら、頬に移動する。何とも言えない擽ったさに、私の身体がピクピクと反応した。
「かわい、ルカ」
ホークレイが笑いを含んだ呟きをすると、私の反対側の頬にも口付ける。
「――ルカ、俺の名を呼んで」
またいつものように、ホークレイが私にお願いをする。
「……レイ……」
「ん、もう一回」
「レイ……?」
「ん。――お前にそう呼ばれるの、やっぱ最高」
ホークレイはスッと目を細めて口の端を上げると、私の唇に自分の唇を重ねてきた。
ただ触れるだけの口付けを、顔の角度を変えながら何度も何度もする。
そして私の首筋へ移動すると、そこをぺロリと広範囲に舐められた。
「ひゃっ!?」
突然の行為に、私はビクリと肩を跳ねさせ変な悲鳴を上げてしまった。
「はっ……。可愛過ぎ」
ホークレイは笑いを堪えながら言い、私の首筋に舌を這わせて下へと移動していく。
それと同時に、彼の手は器用に私の胸のボタンを外し、胸元をはだけさせていた。
鎖骨を通り、剥き出しになった乳房にも唇を這わせる。そして強く吸うと、一瞬の痛みと共に赤い痕を次々に付けていった。
そこには、前回付けられた痕がまだ薄く残っている。その痕が失くなりそうな時にホークレイがまた幾つも付けるので、私の胸から赤い模様が全く消えてくれない……。
「……最初の頃に比べて、かなり大きくなったよな、お前の胸」
片方の胸をその大きな手で包み込み揉み上げながら、ホークレイが唇を離して感慨深げに呟いた。
――そう。彼がこんな風に触ってくる前は、胸の膨らみはそうでもなかったのだ。
それが今では、少しの振動でも大きく揺れるくらいには膨らみが増していた。
ホークレイと二人きりになる度、胸を触られ続けていることが関係しているに違いない。
「俺が育てたと考えたら、すっげー愛しさが湧いてくるな……。これからも立派に大きく成長しろよ」
「そ、そんな、子供に言う親の台詞みたいに言わないで――あっ」
胸の先端を口に含まれ、舌で転がされる。もう片方の胸はずっと揉みしだかれ、時々その先端を摘まれ擦り上げられ、その甘い刺激に否が応でも私の口から声が漏れてしまう。
「ふ、いい声……堪んねぇ。なぁルカ、我慢すんなよ。ここには村のヤツらは来ないし、もっとお前の声、聞かせてくれ」
――欲情の熱を帯びた紫色の視線が、私を捉えて離さない。
「れ、レイ――」
「残念、私が来るんです」
不意に頭上から声が聞こえ、私とホークレイが一斉に振り返ると、そこに心底呆れた表情のコハクが腕を組んで立っていた。
「こ、コハクッ!? いつの間にそこに……っ!?」
「……んだよ、もう三十分経っちまったのか……」
ホークレイは盛大に溜め息を吐くと、私の身体を包み込むように抱きしめる。隠してくれたんだと思い、私は慌てて胸元を直し始めた。
「そういうことです。さっさとリュシルカから離れて下さい。時間厳守です」
「チッ、やっぱ三十分は短過ぎだな……。全然足りねー」
「外でそーいうコトを致している貴方のオツムも足りないんじゃないですか?」
「あぁ? 家には親と弟がいるし、外しかねーんだよ」
「致さないという選択肢は無いのですか?」
「無い。リュシルカを前にして我慢出来るかよ」
「豪快に流れる滝に打たれ続けると、煩悩を取り払い、心を静寂にすることが出来るそうです。さっさと巨大な滝に打たれに行って下さい。そして永遠不滅に打たれ続けて下さい」
「寒いのイヤだし痛いのイヤだし水浸しはイヤだし風邪ひくからイヤだね」
「おや? 脳はそのままで身体だけ馬鹿でっかくなったガキんちょがここにいますね」
「お前、相変わらず口悪ぃな……。リュシルカを見習えよ」
「その言葉、そっくりそのままお返ししますよ」
せせらぎの如く流暢な二人の会話に、私は感嘆して聞き入っていた。内容はケンカ調だけど。
二人は昔からこんな感じなのだ。けれど仲が悪いというわけではなく、こんな風に会話をすんなりポンポン言い合えるから、息が合って仲が良いんだと思う。
私はコハクみたいにホークレイと素直に上手く会話が出来ないから、少し羨ましいな、と思っているのは絶対に内緒だ。
「ほら、いい加減リュシルカを離して下さい。私達を餓死させる気ですか」
「餓死ってお前、大袈裟な……。はぁ……ったく、しょーがねーな」
ホークレイは渋々といった感じで私を離すと、手を取って立ち上がらせてくれた。
「じゃあさ、明日空いてる?」
「空いてません」
「お前には聞いてねー。リュシルカ、明日一日俺に付き合ってくれないか? 頼むよ」
「あ……うん。明日は特に用事無いから大丈夫――」
「ん、よっしゃ。じゃ、明日の朝、ここでな。気を付けて帰れよ」
ホークレイは嬉しそうに口の端を持ち上げ笑うと、手をヒラリと振って村へと戻って行った。
コハクが鋭く舌打ちするのを聞きながら、私はあらぬ考えがよぎってしまった。
え、朝から“アレ”するの?
……いやいやいや。
そんな、まさか、ね……。
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