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1章 文明は崩壊しました。
二つの空に
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雲の白と空の青たった二色のはずなのに。
写真の空と全く違う。色鮮やかな空だ。
現実に感じていたあの仮想現実だってこんなことを感じることはなかった。
今までは空の空で生きていたのだろうか。
今はっきりと生きていると思う。
今だけかもしれないけれど、今までで一番幸せだと思う。
今まで偽の空で、もっと言えば偽の世界でいきていたんだ。
文明にさえぎられてきたんだ。
それと同時に今までしばりつけてきたAIに嫌悪を持つ気持ちもある。
今まで生きてきた期間の時間を奪われてきたということでもあるのだから。
少しずつ大きな雲がせまってくる。雨だ。
空は黒く覆われどんよりとした空気が体を包み込む。
今まで感じたことのない気分だった。
どんよりとした不快な感情だ。
今はそれさえも気持ちよく感じる。
文明はすべての負の感情を覆い隠した。
不便・不満・不平……。
やっと解放されて負の気持ちになれるなんて幸せなんだろう!
「神様、ありがとう。」
天に祈りを捧げた。
しかし空の上に住む神様はたいそうご立腹のようです。
「はあ。別にそういうことじゃないのよね。」
どうしたんです?女神さまの願い通りになりそうじゃないですか。
「私はね、人間に成長する生き物になってほしいっていったのよ。
別に文明が悪いわけじゃないし。ものつくりも人間の大切な能力じゃない。」
はあ。ではものつくりの能力を使って楽していた彼らは何の問題もないのでは?
新しい技術だって次々できていて、成長を続けているではないですか。
「成長しているのはAIだけじゃない。
生物ではないけれど自己繁殖ができて自立して行動できる。
もはやAIは一人の知的生命体よ。」
けれども、人間たちは多くの感情を感じることもできなかったんですよ。
それなのに、成長なんてできません。
「そんなことはないと思うけど?」
はっきり言って無理です。誰でも完璧だと驕ってしまえば成長はできません。
「あら。一緒じゃない。
完璧だと思ったから成長をやめたなら、完璧じゃないことを示せばいいでしょ。
間違っている事を正すのも神の役目じゃない。」
女神さまがそんなことを言う日が来るなんて……。
「私をなんだと思ってるの!?」
あの一時間前のことを忘れたんですか?
女神様は思い出したかのように顔を赤らめる。
「ともかく、人間にとって完璧の象徴だった文明が消えて、
また成長を始めるでしょう?そうして新しいより良い文明を作れるの。
その手伝いをすることに何の戸惑いもないわ。」
そう……ですね。
地上の空はまた晴れの陽日が戻った。
雨の後の晴れは心地がいい。
雨のどんよりとした空気を知った後だからこそより一層晴れが心地よく感じる。
負を感じるから幸せの本当の意味を知れる。
「あれ?」
荒野の中に無残になった大きな金属片があった。
大きな盾の破片だ。
そして目の前に広がる荒野。
AIが自分を守っていたということは想像に難くない。
文明は人を守っていたのだ。成長し続けるために。偽りであろうとも大切な幸せのために。
人間の幸せを守ってくれるものはもういない。
自分で守るしかないのだ。どんなに不幸がつづこうとも。
空の空なんかじゃない。前の空もきっと……。
ただ青く見える空にも響く。
「本当に……ありがとう。」
写真の空と全く違う。色鮮やかな空だ。
現実に感じていたあの仮想現実だってこんなことを感じることはなかった。
今までは空の空で生きていたのだろうか。
今はっきりと生きていると思う。
今だけかもしれないけれど、今までで一番幸せだと思う。
今まで偽の空で、もっと言えば偽の世界でいきていたんだ。
文明にさえぎられてきたんだ。
それと同時に今までしばりつけてきたAIに嫌悪を持つ気持ちもある。
今まで生きてきた期間の時間を奪われてきたということでもあるのだから。
少しずつ大きな雲がせまってくる。雨だ。
空は黒く覆われどんよりとした空気が体を包み込む。
今まで感じたことのない気分だった。
どんよりとした不快な感情だ。
今はそれさえも気持ちよく感じる。
文明はすべての負の感情を覆い隠した。
不便・不満・不平……。
やっと解放されて負の気持ちになれるなんて幸せなんだろう!
「神様、ありがとう。」
天に祈りを捧げた。
しかし空の上に住む神様はたいそうご立腹のようです。
「はあ。別にそういうことじゃないのよね。」
どうしたんです?女神さまの願い通りになりそうじゃないですか。
「私はね、人間に成長する生き物になってほしいっていったのよ。
別に文明が悪いわけじゃないし。ものつくりも人間の大切な能力じゃない。」
はあ。ではものつくりの能力を使って楽していた彼らは何の問題もないのでは?
新しい技術だって次々できていて、成長を続けているではないですか。
「成長しているのはAIだけじゃない。
生物ではないけれど自己繁殖ができて自立して行動できる。
もはやAIは一人の知的生命体よ。」
けれども、人間たちは多くの感情を感じることもできなかったんですよ。
それなのに、成長なんてできません。
「そんなことはないと思うけど?」
はっきり言って無理です。誰でも完璧だと驕ってしまえば成長はできません。
「あら。一緒じゃない。
完璧だと思ったから成長をやめたなら、完璧じゃないことを示せばいいでしょ。
間違っている事を正すのも神の役目じゃない。」
女神さまがそんなことを言う日が来るなんて……。
「私をなんだと思ってるの!?」
あの一時間前のことを忘れたんですか?
女神様は思い出したかのように顔を赤らめる。
「ともかく、人間にとって完璧の象徴だった文明が消えて、
また成長を始めるでしょう?そうして新しいより良い文明を作れるの。
その手伝いをすることに何の戸惑いもないわ。」
そう……ですね。
地上の空はまた晴れの陽日が戻った。
雨の後の晴れは心地がいい。
雨のどんよりとした空気を知った後だからこそより一層晴れが心地よく感じる。
負を感じるから幸せの本当の意味を知れる。
「あれ?」
荒野の中に無残になった大きな金属片があった。
大きな盾の破片だ。
そして目の前に広がる荒野。
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人間の幸せを守ってくれるものはもういない。
自分で守るしかないのだ。どんなに不幸がつづこうとも。
空の空なんかじゃない。前の空もきっと……。
ただ青く見える空にも響く。
「本当に……ありがとう。」
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