159 / 174
この手を離さないように…
10
しおりを挟むインターホンがあるのに、なぜノック?
「はい…」
勢いって不思議。
相手を確認してもいないのに無意識ながら開けているのだから。
この来客が仮に不審者でも文句は言えないな。
「おはよ」
「然さん…」
白いTシャツに紺色の七分丈のカーディガンを羽織った彼。
朝早くに会ってもあいかわらず肌質の良い爽やかさは健在。
「もう出発なんだね。
何時の新幹線?」
「えっと…
昼過ぎのに乗る予定。」
「そっか…」
言ったきり向き合ったまま
お互い何も言わず目を逸らして俯いたまま。
チラチラと彼の顔を伺いつつ
こういう時の別れ際って
どんな言葉で締めたらいいんだろう。
『元気でね』『頑張ってね』『さようなら』
ありきたりなのしか出てこない。
下手にペラペラ喋り出したら感情が乗っかってきそうで危ないし。
そうだよ。鍵を返して逃げるが勝ち。
「これ、お返しします」
「うん、ありがとう」
スペアを含めたカードキー2枚を手渡し
然さんに受け取ってもらったから本格的に終盤だ。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】雷の夜に
緑野 蜜柑
恋愛
同期の檜山葉月は新人の頃から可愛いと話題だった。しかし、容姿も仕事も完璧な彼女には口説く隙が全くなく、何人もの同期が告白しては玉砕し、諦めていた。俺も惚れかけた一人だったが、その気がない奴を口説くほどの熱意もなく、それが幸いしてか、入社して5年経った今、檜山からそれなりの信頼を得ていた。しかし、ある日、ひょんなことから檜山は雷が大の苦手なことを知る。完璧な彼女の弱みを知って、俺の心は少しずつ動き出していて…?
*マークはR18です。
表紙にAIを利用しています。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる