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☆本編☆
パンケーキ(挿し絵つき)
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メープルシロップの甘い匂い。バターのふんわりとした匂い。
谷の中にある小屋にはそんな甘い甘い匂いが漂っていた。
そんな小屋の中でリオは椅子に座ってフォークを持ったまま、キッチンの方を眺めていた。
コンロに煽られたフライパンの上のパンケーキが、空中に舞い、半回転してフライパンに戻る。素晴らしい手捌きだった。
しかし、リオの視線の先にあるのはパンケーキではなく、フライパンを華麗に動かしている少年だった。
すらっとした色白。特別格好いい訳ではなく、どちらがといえば可愛いの部類だ。花柄のエプロンを着けているというのに、その姿はどことなく高貴さを感じられる。
「はい、お待たせいたしました。パンケーキ」
ぼぅ、としていたリオの前にふかふかのパンケーキが置かれた。
「おお~!今日もまた一段と綺麗なパンケーキだね」
「そうか?」
シュウトはエプロンを脱ぎながら首をかしげた。
「うんうん!焼き具合といい何といい、最高だよ!」
喜んで貰えたなら良かった、とシュウトは笑窪をつくる。
慌ててシュウトから目線を外し、リオはパンケーキを頬張った。
柔らかいふかふかのパンケーキ。甘くてまろやかな味。絶妙な厚さ。
「んん~~」
「ははは。あなたは本当に美味しそうに食べてくれるから、嬉しいよ」
お前でも君でもなく、貴女と呼ぶところにシュウトの育ちの良さが垣間見える。
「だって美味しいんだもの」
「そう?パンケーキなんて、誰が作っても同じだと思うけど……喜んで貰えるなら作り甲斐があるな」
「同じじゃないよ?シュウトのパンケーキはシュウトのパンケーキって味だもの。同じ材料を使っても、わたしやユウタ兄さんの作るやつとは全然違う」
「そうなのか?」
と、首をかしげると青い髪が揺れた。こんな世捨て人のような谷の小屋に住んでいるが、髪の手入れなどは怠っていないのがわかる。
思えば、シュウトからはいつも洗剤の匂いがする
「そうだよ。だから、わたしはシュウトのパンケーキが、好きなの」
リオは、そこで言葉を一体区切り、小さく息を吸った。
「明日も食べに来ていい?迷惑?」
シュウトは笑って首を横に振った。
「俺は作るのも、人に作ったの食べさせるの好きだし、何より、あなたはちゃんと材料を持ってきてくれるから、作るのは全然構わないさ。……何より、明日は暇だし」
「やった!」
リオはそう言って最後の一口を食べた。
「ごちそうさまでした!」
「はい、どうも」
「ところでさ、シュウト」
「ん?」
「シュウトは基本いつも暇人じゃない?」
「ななななっ!!そ、そんなことないさ!!今はオフシーズンで…決して召喚術士やドラゴンに需要が無いわけでは……」
痛いところを突かれて顔を赤らめる。
あー、こんなところも可愛いな、とリオはくすくすと肩を揺らした。
谷の中にある小屋にはそんな甘い甘い匂いが漂っていた。
そんな小屋の中でリオは椅子に座ってフォークを持ったまま、キッチンの方を眺めていた。
コンロに煽られたフライパンの上のパンケーキが、空中に舞い、半回転してフライパンに戻る。素晴らしい手捌きだった。
しかし、リオの視線の先にあるのはパンケーキではなく、フライパンを華麗に動かしている少年だった。
すらっとした色白。特別格好いい訳ではなく、どちらがといえば可愛いの部類だ。花柄のエプロンを着けているというのに、その姿はどことなく高貴さを感じられる。
「はい、お待たせいたしました。パンケーキ」
ぼぅ、としていたリオの前にふかふかのパンケーキが置かれた。
「おお~!今日もまた一段と綺麗なパンケーキだね」
「そうか?」
シュウトはエプロンを脱ぎながら首をかしげた。
「うんうん!焼き具合といい何といい、最高だよ!」
喜んで貰えたなら良かった、とシュウトは笑窪をつくる。
慌ててシュウトから目線を外し、リオはパンケーキを頬張った。
柔らかいふかふかのパンケーキ。甘くてまろやかな味。絶妙な厚さ。
「んん~~」
「ははは。あなたは本当に美味しそうに食べてくれるから、嬉しいよ」
お前でも君でもなく、貴女と呼ぶところにシュウトの育ちの良さが垣間見える。
「だって美味しいんだもの」
「そう?パンケーキなんて、誰が作っても同じだと思うけど……喜んで貰えるなら作り甲斐があるな」
「同じじゃないよ?シュウトのパンケーキはシュウトのパンケーキって味だもの。同じ材料を使っても、わたしやユウタ兄さんの作るやつとは全然違う」
「そうなのか?」
と、首をかしげると青い髪が揺れた。こんな世捨て人のような谷の小屋に住んでいるが、髪の手入れなどは怠っていないのがわかる。
思えば、シュウトからはいつも洗剤の匂いがする
「そうだよ。だから、わたしはシュウトのパンケーキが、好きなの」
リオは、そこで言葉を一体区切り、小さく息を吸った。
「明日も食べに来ていい?迷惑?」
シュウトは笑って首を横に振った。
「俺は作るのも、人に作ったの食べさせるの好きだし、何より、あなたはちゃんと材料を持ってきてくれるから、作るのは全然構わないさ。……何より、明日は暇だし」
「やった!」
リオはそう言って最後の一口を食べた。
「ごちそうさまでした!」
「はい、どうも」
「ところでさ、シュウト」
「ん?」
「シュウトは基本いつも暇人じゃない?」
「ななななっ!!そ、そんなことないさ!!今はオフシーズンで…決して召喚術士やドラゴンに需要が無いわけでは……」
痛いところを突かれて顔を赤らめる。
あー、こんなところも可愛いな、とリオはくすくすと肩を揺らした。
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