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泣かない子
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街中を探した
コンビニ
公園
近くの消防署
走って
走って
汗だくになって
気が付くと夜が明け
明るくなっていた
どこにもいない
李奈を失ってしまった
ワガママで
気が強くて
喧嘩しても絶対に謝らない
だけど
俺の事を愛してくれている李奈
李奈との三年間が頭で巡る
付き合う事を決めた日
初めてのデート
一緒に暮らし始めた日
カーテンの色でもめた事
そして
何度も頭に浮かぶのは
俺の事を見つめ
「愛してる・・・愛してる・・・
健太郎・・・愛してる」
そう言って
俺だけを見つめ愛してくれたこと
愛されていたのに
俺は馬鹿だ
公園入口のフェンスに腰かけ
後悔を深める
どこに行ったんだ・・・
空を見上げ
深くため息をつく
フラフラと歩き回り
昼前
部屋へ戻った
ごそごそと物音
さくら残して出てったんだ…俺
まだ居るのかな?
少し苛立つ
ため息をつきながら
入ると
李奈が荷造りをしていた
「李奈!」
俺に気が付いて
李奈はギョッとした顔をする
俺はホッとして
李奈に近寄る
李奈はあからさまに嫌な顔をして
俺から距離を取る
「あの女なら
さっき帰ったよ
家主不在なのに
あつかましくここで泣いてた
なんで泣くのよ!
泣きたいのはこっちよ!
バカらしい」
李奈はそう言いながら
せっせと荷造りをする
俺はその手を握って
「探してた・・・」
そう言うと
俺の手を振りほどいて
「あっそう」
冷たく返す
「何してるの?」
分かってるけど
聞く
「こんなキモい場所から脱出
最低な男から逃亡」
そうだよな
俺は最低な男だ
ここは最悪な場所だ
「ごめん・・・ごめんね
俺、李奈を傷付けた
ごめん」
そう言って強引に抱きしめる
李奈は嫌がり
もがくけど
俺はギュッと抱きしめる
「許してほしい」
都合のいい言葉に
李奈は俺の方を睨んで
「あつかましさがソックリだね
お似合いよ
あの女と…
許せない
キモイから離して」
俺を睨みながら
そう言ったけど
さっきよりは目の奥の力が緩んでいた
「言い訳させて…」
俺は李奈に
さくらとの長かった苦く苦しかった初恋の話をした
今まで誰にも話せなかった
俺の情けない話
李奈は表情変えず
一方的に話す俺を見つめながら
聞いていた
「・・・ ・・・で
俺は彼女と別れたんだ・・・
って言うか
捨てられた」
話を終えると
李奈は小さな声で
「そう・・・あの人の事が好きだったんだね
健太郎ってバカな男だね
見る目なさすぎ
まんまと都合よく利用されて・・・バカみたい
バカバカバカバカ・・・バ~カ」
唇をかみしめた
李奈はポロリと一粒
涙をこぼした
李奈は泣く姿を見せるのが大嫌いだ
人前では泣かない
俺の前でもなかなか泣かない
そんな李奈が
俺の事で悔しそうに顔を歪めながら涙をこぼした
「さくらと昨日
ここで再会して
驚いた
あれから初めて会ったから
どうしていいか分からなかった
話していると
昔の事を思い出して
手に入らなかった
悔しさとか思い出して
心が魅かれた・・・何かスイッチが入ったみたいに
どんどん彼女にのめり込んでいって
俺は俺がいる状況を忘れてしまった
どうかしてた」
「私がいることも忘れちゃったの?」
俺は頷く
「本当にバカだね健太郎・・・」
また頷く
「もっと上手に
違う日にでも約束して会えば
私から邪魔されないで
彼女とまた上手く行ったんじゃないの?
好きだったんでしょ?」
目を逸らしながら寂しそうに言う李奈
「・・・無いよ
それは無い
冷静に考えたら・・・無い
さくらとはもうない」
「どうして?」
「俺には李奈がいるから
李奈が大切なんだ
好きだよ」
李奈は下を向いて
「何それ・・・超適当」
「信じてほしい…李奈が好きだ」
「許してほしいから
適当な事言ってるでしょ?」
「そうじゃない
本当だよ」
そう言って
少し嫌がる李奈を引き寄せてキスをする
涙の味
李奈の肩は少し震えている
ごめん
こんなに悲しませて
俺は李奈の方を見て
「李奈の事が大切だよ
おれ、今さら気が付いた」
すると李奈は
次から次にこぼれる涙を手で拭きながら
横を向き
「じゃ、罰として3か月禁欲!」
「えっ?」
「他の女が触った男と触れ合いたくない!
知ってるでしょ?
私、潔癖なところがあるって」
「三ヵ月たったら許してくれるの?」
李奈はふくれた顔のまま頷いた
「三ヵ月・・・李奈は触れ合わなくてもいいの?」
李奈はこちらを見て
「・・・キスだけは許す」
そう言ったから
俺は李奈にまたキスをした
もう涙の味はしなかった
泣くのが嫌いな彼女を
もう絶対に泣かさないと心に誓った 終わり
【三か月後】
久しぶりに実家に電話をした
「もしもし・・・俺」
「健太郎?」
母さんは待っていたように
くい気味に俺の名前を呼んだ
「おれおれ詐欺だったらアウトだよ」
「息子の声くらい分かってるから名前よんだのよ!!」
そう言った後から
母さんは堰を切ったように話し始めた
「恭一
離婚するの・・・
恭一ったら
あんないい会社勤めてるのに
貯金あんまりなくて
マンション買うとき
頭金
お父さんが半分出したのよ
なのに
まだ、払いの残る
マンションは洋子さんに取られちゃうし
洋子さんに慰謝料も払うんですって
ミキちゃんミワちゃん(兄さんの双子の娘)
ミサキちゃん(兄さんの三女)
ミナミちゃん(兄さんの四女)
の養育費があるでしょ?
ミナミちゃんなんて
先々月生まれたばかりなのに
離婚だなんて…
お金ないから実家もどっていいか?だって
でもね~
あんなに大きな慰謝料どうして
請求されるのかしら?
おかしいと思うのよ!!
恭一は話したがらないから聞けないんだけど・・・
は~」
母の深いため息を聞いた
俺が就職して直ぐ
兄さんは結婚した
洋子さんの妊娠がきっかけだった
結婚を決めたときには
もうお腹が大きかったから
結婚式はしていない
洋子さんは
あの頃、さくらから聞いていた
遠距離恋愛の相手ではなく
会社に派遣で来ていた大学を卒業したての人で俺と同い年
俺が洋子さんに初めて会ったのは
双子が生まれたときだった
俺は少し挨拶をしただけだから
顔はもう覚えていない
歳の割には幼い感じだったかな?
その日
実家にお祝いを預けたっきり
実家へも戻っていなかった
しばらく帰らない間に
兄さんに娘が増えていることと
兄さん夫婦が離婚を決めていることを知った
「・・・大変だね」
「そうよ
老後が不安」
「大変ついでに
俺からも報告していい?」
「えっ?」
「結婚するよ俺
今度、彼女連れて行くから」
そう言うと
さっきまでの憂鬱な声色が一気に晴れやかになり
「そうなの!!早く言いなさいよ!!」
嬉しそうにそう言った
いやいや母さん
話をさせてくれなかったのは
母さんだろ?
心でそう突っ込みながら
微笑む
横では
電話からこぼれる母の声を聞きながら
柄になく緊張しながらも
はにかむ李奈
左手の薬指につけた指輪を
嬉しそうに見つめる
俺は来週
久しぶりに実家に帰る
両親に李奈を紹介するために・・・ 完
コンビニ
公園
近くの消防署
走って
走って
汗だくになって
気が付くと夜が明け
明るくなっていた
どこにもいない
李奈を失ってしまった
ワガママで
気が強くて
喧嘩しても絶対に謝らない
だけど
俺の事を愛してくれている李奈
李奈との三年間が頭で巡る
付き合う事を決めた日
初めてのデート
一緒に暮らし始めた日
カーテンの色でもめた事
そして
何度も頭に浮かぶのは
俺の事を見つめ
「愛してる・・・愛してる・・・
健太郎・・・愛してる」
そう言って
俺だけを見つめ愛してくれたこと
愛されていたのに
俺は馬鹿だ
公園入口のフェンスに腰かけ
後悔を深める
どこに行ったんだ・・・
空を見上げ
深くため息をつく
フラフラと歩き回り
昼前
部屋へ戻った
ごそごそと物音
さくら残して出てったんだ…俺
まだ居るのかな?
少し苛立つ
ため息をつきながら
入ると
李奈が荷造りをしていた
「李奈!」
俺に気が付いて
李奈はギョッとした顔をする
俺はホッとして
李奈に近寄る
李奈はあからさまに嫌な顔をして
俺から距離を取る
「あの女なら
さっき帰ったよ
家主不在なのに
あつかましくここで泣いてた
なんで泣くのよ!
泣きたいのはこっちよ!
バカらしい」
李奈はそう言いながら
せっせと荷造りをする
俺はその手を握って
「探してた・・・」
そう言うと
俺の手を振りほどいて
「あっそう」
冷たく返す
「何してるの?」
分かってるけど
聞く
「こんなキモい場所から脱出
最低な男から逃亡」
そうだよな
俺は最低な男だ
ここは最悪な場所だ
「ごめん・・・ごめんね
俺、李奈を傷付けた
ごめん」
そう言って強引に抱きしめる
李奈は嫌がり
もがくけど
俺はギュッと抱きしめる
「許してほしい」
都合のいい言葉に
李奈は俺の方を睨んで
「あつかましさがソックリだね
お似合いよ
あの女と…
許せない
キモイから離して」
俺を睨みながら
そう言ったけど
さっきよりは目の奥の力が緩んでいた
「言い訳させて…」
俺は李奈に
さくらとの長かった苦く苦しかった初恋の話をした
今まで誰にも話せなかった
俺の情けない話
李奈は表情変えず
一方的に話す俺を見つめながら
聞いていた
「・・・ ・・・で
俺は彼女と別れたんだ・・・
って言うか
捨てられた」
話を終えると
李奈は小さな声で
「そう・・・あの人の事が好きだったんだね
健太郎ってバカな男だね
見る目なさすぎ
まんまと都合よく利用されて・・・バカみたい
バカバカバカバカ・・・バ~カ」
唇をかみしめた
李奈はポロリと一粒
涙をこぼした
李奈は泣く姿を見せるのが大嫌いだ
人前では泣かない
俺の前でもなかなか泣かない
そんな李奈が
俺の事で悔しそうに顔を歪めながら涙をこぼした
「さくらと昨日
ここで再会して
驚いた
あれから初めて会ったから
どうしていいか分からなかった
話していると
昔の事を思い出して
手に入らなかった
悔しさとか思い出して
心が魅かれた・・・何かスイッチが入ったみたいに
どんどん彼女にのめり込んでいって
俺は俺がいる状況を忘れてしまった
どうかしてた」
「私がいることも忘れちゃったの?」
俺は頷く
「本当にバカだね健太郎・・・」
また頷く
「もっと上手に
違う日にでも約束して会えば
私から邪魔されないで
彼女とまた上手く行ったんじゃないの?
好きだったんでしょ?」
目を逸らしながら寂しそうに言う李奈
「・・・無いよ
それは無い
冷静に考えたら・・・無い
さくらとはもうない」
「どうして?」
「俺には李奈がいるから
李奈が大切なんだ
好きだよ」
李奈は下を向いて
「何それ・・・超適当」
「信じてほしい…李奈が好きだ」
「許してほしいから
適当な事言ってるでしょ?」
「そうじゃない
本当だよ」
そう言って
少し嫌がる李奈を引き寄せてキスをする
涙の味
李奈の肩は少し震えている
ごめん
こんなに悲しませて
俺は李奈の方を見て
「李奈の事が大切だよ
おれ、今さら気が付いた」
すると李奈は
次から次にこぼれる涙を手で拭きながら
横を向き
「じゃ、罰として3か月禁欲!」
「えっ?」
「他の女が触った男と触れ合いたくない!
知ってるでしょ?
私、潔癖なところがあるって」
「三ヵ月たったら許してくれるの?」
李奈はふくれた顔のまま頷いた
「三ヵ月・・・李奈は触れ合わなくてもいいの?」
李奈はこちらを見て
「・・・キスだけは許す」
そう言ったから
俺は李奈にまたキスをした
もう涙の味はしなかった
泣くのが嫌いな彼女を
もう絶対に泣かさないと心に誓った 終わり
【三か月後】
久しぶりに実家に電話をした
「もしもし・・・俺」
「健太郎?」
母さんは待っていたように
くい気味に俺の名前を呼んだ
「おれおれ詐欺だったらアウトだよ」
「息子の声くらい分かってるから名前よんだのよ!!」
そう言った後から
母さんは堰を切ったように話し始めた
「恭一
離婚するの・・・
恭一ったら
あんないい会社勤めてるのに
貯金あんまりなくて
マンション買うとき
頭金
お父さんが半分出したのよ
なのに
まだ、払いの残る
マンションは洋子さんに取られちゃうし
洋子さんに慰謝料も払うんですって
ミキちゃんミワちゃん(兄さんの双子の娘)
ミサキちゃん(兄さんの三女)
ミナミちゃん(兄さんの四女)
の養育費があるでしょ?
ミナミちゃんなんて
先々月生まれたばかりなのに
離婚だなんて…
お金ないから実家もどっていいか?だって
でもね~
あんなに大きな慰謝料どうして
請求されるのかしら?
おかしいと思うのよ!!
恭一は話したがらないから聞けないんだけど・・・
は~」
母の深いため息を聞いた
俺が就職して直ぐ
兄さんは結婚した
洋子さんの妊娠がきっかけだった
結婚を決めたときには
もうお腹が大きかったから
結婚式はしていない
洋子さんは
あの頃、さくらから聞いていた
遠距離恋愛の相手ではなく
会社に派遣で来ていた大学を卒業したての人で俺と同い年
俺が洋子さんに初めて会ったのは
双子が生まれたときだった
俺は少し挨拶をしただけだから
顔はもう覚えていない
歳の割には幼い感じだったかな?
その日
実家にお祝いを預けたっきり
実家へも戻っていなかった
しばらく帰らない間に
兄さんに娘が増えていることと
兄さん夫婦が離婚を決めていることを知った
「・・・大変だね」
「そうよ
老後が不安」
「大変ついでに
俺からも報告していい?」
「えっ?」
「結婚するよ俺
今度、彼女連れて行くから」
そう言うと
さっきまでの憂鬱な声色が一気に晴れやかになり
「そうなの!!早く言いなさいよ!!」
嬉しそうにそう言った
いやいや母さん
話をさせてくれなかったのは
母さんだろ?
心でそう突っ込みながら
微笑む
横では
電話からこぼれる母の声を聞きながら
柄になく緊張しながらも
はにかむ李奈
左手の薬指につけた指輪を
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俺は来週
久しぶりに実家に帰る
両親に李奈を紹介するために・・・ 完
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