鏡よ鏡よ鏡くん

成瀬 慶

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僕の名前は

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しばらくは
放心状態でいた

後ろを見て
前を見て
もう一度、後ろを見た

だけど
鏡には、写っているはずの俺の姿はなく
俺以外の背景の前には
一人の見知らぬおとこが立っている

訳が分からない

その男は
俺と同じくらいの年齢に見える
白いシャツ
その下にはボーダーシャツ
白いデニム
白いコンバース
イヤフォン・・・何聞いてんの?
そして
若干、茶髪

全身白って
どんな趣味してんだよ!!

「全身白って
どんな趣味してんだよ!!って今、思った?」

俺の心の声が聞こえてる?
正直にうなずく

「僕が白いのは
清潔感をあらわしているんだ!
ココ、トイレだし
こういう所だからこそ
綺麗でいたいって思ってね
ボーダーシャツは差し色?って言うのかな
イヤフォンは・・・何も音はしないよ
ただの飾り
格好いいでしょ?」

したり顔
なんで?したり顔?

「そうか、そんな事より
自己紹介をしておくね
僕の名前は神様
トイレの神様って呼ぶ人もいるな・・・
年齢は覚えていない
けっこう長い事
この仕事をしている
身長
体重
靴のサイズは・・・ご想像にお任せします」神様

そういって
ニヤリと笑った

俺はまだ
声を言葉にできない

誰がこの状況を理解し
消化できるだろうか・・・

俺は無言で彼を見る

「祐貴さ
初対面みたいな顔してるけど
違うからね
君が小さなころから
ココでおむつ変えてる頃から
おれ知ってるからね
はじめまして~みたいな顔するなよ
傷つくぞ!!」神様

俺はただただ頷く

「なんだよぉ~そのリアクション
そろそろ理解しろよ!
本当に最近の子供は頭が固すぎて困るな~
ファンタジーとか読まないの?」神様

本当に神様なのか?
神様って
俺たちがよく
困ったときなんかに頼みごとをするような
あの
神様なのか?

それにしては
イメージ違いすぎて・・・

「そうそう
そう言われる
それはね
君らが警戒しないように
僕は僕なりに君らに合わせて出てきているからね
だから
この格好なんだよ

祐貴が自然に受け入れてくれるように
祐貴に抵抗のないイメージなんだよ

後は?
聞きたいことは無い?」神様

俺はこの状況を理解できないまま
恐る恐る聞いてみた

「何しているんですか?
そこで・・・」祐貴

神様はにっこり笑って

「救済」神様

救済?
救済ってなんだ?

俺を救ってくれるってことなのか?

「そうだよ祐貴
そのとおり
君を救うために今ここにいるんだよ」神様

そう言うと
また
きらびやかな光が見えそうなほどに微笑んだ

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