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1章
2話
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俺が今暮らしているレイバード王国には複数のギルドが存在する。商業ギルド、鍛冶ギルドというような様々なギルドの中で俺が登録して仕事を受けているのが裏ギルドである。その名の通り表ざたにできない仕事、例えばこの間のような誘拐犯に対するおとり捜査などがある。といっても暗殺や強盗のような非合法の仕事ばかりやっているかといえばそんなことはない。大方の仕事は貴族が愛人の家に行くからその護衛をしてほしいというものや、夫が浮気をしているようだからその相手を探してほしいというような可愛らしい内容のものばかりだ。とは言っても荒事が多いため強面な男もそろい、ギルド内では喧嘩が絶えず、怒号も飛び交っている。そんなギルドの隅で俺は……
数匹の猫に囲まれながら惰眠をむさぼっていた。
この猫たちはミーアの飼い猫……というわけではなく使い魔というものらしい。この世界に来て最初に見たのはこの使い魔だったようだ。普通の猫はこの世界でも火を操ったりはできないらしい。なんだか安心した。
ちなみにゴロツキ、もといこのギルドの構成員たちは俺には絡んでこない。理由は簡単、全員股間を蹴られてのたうちまわりたくないからだ。
朝食を食べてから数時間、流石に腹が減ったので食事にしようと外に出ようとすると……
「おーい、ヴァンくーん。ギルマスが呼んでるニャー」
ギルマスの部屋からひょっこりと顔を出したミーアに呼び止められた。分かった、と返事をしてそちらへ向かう。ちなみにヴァンというのは呼ぶ名前がないと困るだろうということでミーアがつけてくれた名前だ。なかなかしっくり来ていて気に入っている。
扉の前に立つと謎の緊張感が襲い掛かってきた。前世であの男が言っていた「学校の職員室に入ろうとするときの緊張感」というのはこういう感じなんだろうか。まあ、このまま突っ立っていても仕方ないのでドアをノックする。
「入れ」
低く野太い声が答える。ドアを開けると声のイメージ通りの怖い顔をした大男が椅子に座っていた。この男がこの裏ギルドのマスターだ。そのあたりで獣を狩ってそのまま丸かじりしていそうな容貌とは異なり、いや国や有力な貴族からの依頼も受ける大手ギルドだからだろうか、礼儀だったりそういったことに非常に厳しい。入ってきた当初は言葉遣いがなってなかったせいで、何度拳骨が落ちてきたことか……。
「なんのよ……ご用件はなんでしょうか」
そんなににらみつけないでくれよ……思わず目線をそらしながら言い直す。
「まあいい、とりあえず座れ。ミーア、お前はもういいぞ」
じゃあニャー、と手を振りながらミーアが部屋から出ていった。俺は高そうなソファーに腰掛ける。
「さて、早速だがお前に依頼が入っている」
「俺……僕にですか?一体どなたからです?」
わざわざ俺に依頼が来るのは珍しい。何か訳ありの依頼だろうか。思わず顔をしかめてしまう。
「ああ、心配はしなくていい。信用できる筋の依頼だ」
「分かりました。依頼の内容は何でしょう?」
「お忍びのお出かけの護衛だ。護衛対象は……聞いて驚くなよ?」
ギルドマスターは楽しそうに口角を上げる。楽しそうなのは結構なのだが目つきが悪すぎて顔がとても怖くなっている。
「この国の第一側妃、エリナ・レイバード様だ」
「……」
「おいおい、お前の考えてることはわかるが、そんなにいやそうな顔をするな。」
俺はこの国のことについて別に詳しくはない。だが、前世の記憶から、不興を買うとすぐ首をはねるというようなイメージが一番に出て来てしまう。
「大丈夫だ、直接会ったことがあるが横暴なことはしない人だよ、あの方は」
まあ、このギルドマスターがここまで言うのであれば大丈夫なんだろう。だが、王家であれば近衛兵など優秀な兵士に事欠かないはずだ。なぜこんな裏ギルドの出自の怪しい人間をつけるのだろうか。
「まあ、いい。何か質問は?」
「直接、依頼と関係のないことでも?」
構わん、と返事が来たので先ほどの疑問をぶつけてみる。
「王都の派閥争いが関係するんだが……まあお前は興味はないよな。まあ、お前の納得のいく理由を言おう。推薦があったからだ。」
「推薦?いったい誰から……」
「ミーアだ。エリナ様の護衛はいつもあいつがやってたんだが、今回はほかの依頼と重なっちまってな。代役を立てるならお前しかいないと太鼓判を押していったぞ」
彼女は普段の行動こそ、ちょっと……アレな部分もあるが、仕事については真面目だし、危機察知能力には目を見張る部分がある。それに彼女とは一緒に組んで仕事をしていることも多いし、俺がどのくらいできるのかよく知っているはずだ。そんな彼女が大丈夫という依頼ならきっと大丈夫だろう。そう考え、俺は答える。
「分かりました。期待に沿えるよう努力します」
腕を組み、うなずきながらギルドマスターが答える。
「結構、仕事は明後日の朝からだ。詳しいことはミーアから聞いてくれ。以上、出ていいぞ」
その言葉を聞いて部屋の外に出る。それから俺は遅い昼食を食べに外に向かうのだった。
数匹の猫に囲まれながら惰眠をむさぼっていた。
この猫たちはミーアの飼い猫……というわけではなく使い魔というものらしい。この世界に来て最初に見たのはこの使い魔だったようだ。普通の猫はこの世界でも火を操ったりはできないらしい。なんだか安心した。
ちなみにゴロツキ、もといこのギルドの構成員たちは俺には絡んでこない。理由は簡単、全員股間を蹴られてのたうちまわりたくないからだ。
朝食を食べてから数時間、流石に腹が減ったので食事にしようと外に出ようとすると……
「おーい、ヴァンくーん。ギルマスが呼んでるニャー」
ギルマスの部屋からひょっこりと顔を出したミーアに呼び止められた。分かった、と返事をしてそちらへ向かう。ちなみにヴァンというのは呼ぶ名前がないと困るだろうということでミーアがつけてくれた名前だ。なかなかしっくり来ていて気に入っている。
扉の前に立つと謎の緊張感が襲い掛かってきた。前世であの男が言っていた「学校の職員室に入ろうとするときの緊張感」というのはこういう感じなんだろうか。まあ、このまま突っ立っていても仕方ないのでドアをノックする。
「入れ」
低く野太い声が答える。ドアを開けると声のイメージ通りの怖い顔をした大男が椅子に座っていた。この男がこの裏ギルドのマスターだ。そのあたりで獣を狩ってそのまま丸かじりしていそうな容貌とは異なり、いや国や有力な貴族からの依頼も受ける大手ギルドだからだろうか、礼儀だったりそういったことに非常に厳しい。入ってきた当初は言葉遣いがなってなかったせいで、何度拳骨が落ちてきたことか……。
「なんのよ……ご用件はなんでしょうか」
そんなににらみつけないでくれよ……思わず目線をそらしながら言い直す。
「まあいい、とりあえず座れ。ミーア、お前はもういいぞ」
じゃあニャー、と手を振りながらミーアが部屋から出ていった。俺は高そうなソファーに腰掛ける。
「さて、早速だがお前に依頼が入っている」
「俺……僕にですか?一体どなたからです?」
わざわざ俺に依頼が来るのは珍しい。何か訳ありの依頼だろうか。思わず顔をしかめてしまう。
「ああ、心配はしなくていい。信用できる筋の依頼だ」
「分かりました。依頼の内容は何でしょう?」
「お忍びのお出かけの護衛だ。護衛対象は……聞いて驚くなよ?」
ギルドマスターは楽しそうに口角を上げる。楽しそうなのは結構なのだが目つきが悪すぎて顔がとても怖くなっている。
「この国の第一側妃、エリナ・レイバード様だ」
「……」
「おいおい、お前の考えてることはわかるが、そんなにいやそうな顔をするな。」
俺はこの国のことについて別に詳しくはない。だが、前世の記憶から、不興を買うとすぐ首をはねるというようなイメージが一番に出て来てしまう。
「大丈夫だ、直接会ったことがあるが横暴なことはしない人だよ、あの方は」
まあ、このギルドマスターがここまで言うのであれば大丈夫なんだろう。だが、王家であれば近衛兵など優秀な兵士に事欠かないはずだ。なぜこんな裏ギルドの出自の怪しい人間をつけるのだろうか。
「まあ、いい。何か質問は?」
「直接、依頼と関係のないことでも?」
構わん、と返事が来たので先ほどの疑問をぶつけてみる。
「王都の派閥争いが関係するんだが……まあお前は興味はないよな。まあ、お前の納得のいく理由を言おう。推薦があったからだ。」
「推薦?いったい誰から……」
「ミーアだ。エリナ様の護衛はいつもあいつがやってたんだが、今回はほかの依頼と重なっちまってな。代役を立てるならお前しかいないと太鼓判を押していったぞ」
彼女は普段の行動こそ、ちょっと……アレな部分もあるが、仕事については真面目だし、危機察知能力には目を見張る部分がある。それに彼女とは一緒に組んで仕事をしていることも多いし、俺がどのくらいできるのかよく知っているはずだ。そんな彼女が大丈夫という依頼ならきっと大丈夫だろう。そう考え、俺は答える。
「分かりました。期待に沿えるよう努力します」
腕を組み、うなずきながらギルドマスターが答える。
「結構、仕事は明後日の朝からだ。詳しいことはミーアから聞いてくれ。以上、出ていいぞ」
その言葉を聞いて部屋の外に出る。それから俺は遅い昼食を食べに外に向かうのだった。
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