サンドリヨン 〜 シンデレラの悪役令嬢(意地悪姉役)に転生したので前職を生かしてマッサージを始めました 〜

浪速ゆう

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番外編3

結婚披露宴 2

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 ルイ王子と別れたマーガレットが大広間に戻ると、そこには大勢の貴族が詰めかけていた。あの舞踏会の日を彷彿させる景色だが、それ以上に人が押し寄せている。さすがは王子の結婚式といったところだろうか。

「マーガレット! どこへ行ってたの」

 マーガレットの姿を見つけたイザベラが、駆け寄ってきた。その隣にはマルガリータもいる。

「お母様、私は……」

 ルイ王子とのことをどう伝えようかと思っていた矢先、部屋の中のオーケストラの奏者が音楽を奏で始めた。と、同時にそれはメインの人物がやって来る合図でもある。誰もが部屋の正面へと視線を向けた。と、同時にイザベラはマーガレットとマルガリータの手を掴んだ。

「二人とも、前へ移動するよ」
「えっ」
「リュセットは私達の家族だからね。当たり前だろう」

 よくもあんな扱いをしておいて家族だと言えたものだ。と、マーガレットは呆れかえっていた。

(あれは家族というよりも、使用人だったでしょうが)

 グイグイと人ごみをかき分けるように前列へと向かう二人に向かって、マーガレットはこんな言葉を聞こえるように言った。

「けれどお母様、先ほど男爵だと名乗っていたアンリ様、実は第二王子だなんて私知りませんでしたわ。そうとも知らずにお母様もマルガリータお姉様もアンリ王子とはあまり会話をなさらなかったようですが……」

 あまり会話が……というよりも、無視を決め込んでいたのは間違いない。格下だと思い甘くみていた結果だ。
 マーガレットはそう言った後、困ったように眉尻を下げた。けれどイザベラはめげてなどいない。

「だからこれからしっかり話をしに行くんじゃないか」

 どれだけポジティブなのか、とマーガレットはさらに呆れた顔を向けた。

「ところで、マーガレット。あなたこそあのルイ王子と知り合いだったの?」

 ふと思い出したように足を止めたマルガリータ。その表情は怒りと不満、そして嫉妬心に満ちている。そしてその問いにマーガレットもギクリと足を止めた。

「そうだよ。ルイ王子があんたの名を呼んでいたじゃないか」

 イザベラも応戦する。表情はマルガリータとは違っているが、疑念の色がその表情からうかがえる。

「あの……その話は後にしましょう。ほら、リュセット達を見に最前列へ行かなければならないのではないでしょうか」

 マルガリータはまだ言い足りないと言った様子でマーガレットを睨みつけているが、イザベラに腕を引かれ、渋々再び歩き始めた。
 マーガレットはホッと肩をなでおろした。ルイ王子が王位継承権を放棄すると言ったあの時、ルイ王子はマーガレットの名を呼び、高台から降りて駆けてきた。アンリ王子の演説があったから注目は外れたものの、この二人があのことを忘れているはずがないと思っていた。だが、聞かれるとは思っていたが突然だったせいか、マーガレットも意表を突かれてしまったのだ。
 ひとまず二人の目標はアンリ王子や王族と親密になること。そして、そのためにリュセットを利用しようとしていること。それが目に見えてわかる。そしてマーガレットがそんなことを考えている間に、二人は最前列へとたどり着いた。

「リュセット!」

 そう声をかけたのはマルガリータだ。興奮した様子でリュセットに手を振って微笑んでいる。そんな姉達の姿を見つけたリュセットは、いつもと変わらない笑顔で手を振り返した。

「マルガリータお姉様にお母様も! 来てくださってありがとうございます」

 リュセットの様子を見て、マルガリータはさらに彼女のそばへと向かう。そして舞台へと上がったかと思えば、一度アンリ王子にお辞儀をし、リュセットの隣の空いた席に座った。
 それに合わせてイザベラも舞台へと上がると、アンリ王子にお辞儀をした後、微笑みながら流暢な口調で話を始めた。

「先ほどは男爵だなどと冗談をおっしゃっていたので、まさかアンリ様が王子だとは思いもよりませんでしたわ」

 ほほほと笑いながら言うイザベラに、アンリ王子もにこやかに微笑みながらこう言った。

「ええ、今まで外に出ることもない生活を送っていましたので、私の存在を知らない人が多いので結婚の発表まで伏せておいたのです。どうやら世間では私は死んだことになっていたようなので」
「あら、そうでしたか。こちらこそ知らなかったとはいえ、失礼な態度をとってしまっていたのではないかと心配になっておりました」
「いえ、お気になさらず」

 イザベラは再びお辞儀をして見せ、アンリ王子はといえば、はははと笑っている。そんな様子をマーガレットさめざめとした様子で、舞台に上がらずに見つめていた。マーガレットからすればとんだ茶番があの上では繰り広げられていると思っていたのだ。

(私が冗談交えて言った、王子にそっくりな男爵も知らないとか言っておいて、お母様との会話ではあっさり認めているあたり、敢えて私達の態度を確認していたんでしょうね……)

 ルイ王子もマーガレットと初めに会った時は騎士団長のカインだと名乗っていた。あの兄にしてこの弟ありか……などと呆れた視線を向けていると、ちょうどアンリ王子と目が合った。
 マーガレットは瞬時に口元に微笑みを乗せそのまま軽く会釈をすると、アンリ王子は微笑みながら白くて細長い人差し指をそっと口元に当てた。
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