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本編
ガラスの靴 2
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なぜリュセットは断るのか。あの靴は間違いなくリュセットのもの。それが分かっていて、なぜそんなセリフが飛び出したのかが不思議だった。
(まさか、マルガリータに気を使って……? それはまぁ想像できるけど、でも……)
「ご婦人、このお嬢さんに説明してもらえぬか?」
何度も言わすなと言いたげに、大臣はソファーの背に背中を預け、頭を抱えながら首を振っている。
「リュセット、さっさと済ませなさい。皆様はご令嬢探しに忙しいのですよ!」
まるでそれは、リュセットがこの靴の持ち主ではないと心から察している様子。さっさとこんな茶番は終わらせて、この方々に帰ってもらえと言いたげに、イザベラは強い口調でそう言った。
断りきれない様子に、リュセットも渋々といった様子。ボロボロの靴を脱ぎ、ガラスの靴に足を入れたーーすると周りにいた人々が一斉に息を飲んだ。
ガラスの靴は、持ち主の足にピッタリとはまり、数多に輝きを増したように見える。
「あなたでしたか……」
大臣が安堵のため息とともに言葉を漏らし、使用人達はやっと相手が見つかったと、肩を撫で下ろしている。カインですら驚いたように目を見開いている中、イザベラだけは信じられないと言った様子で目をひん剥き、手に持っていた扇を床に落とした。
「これは、何かの間違いよ……」
「間違いなものか。現にこうしてピッタリはまっておる。何人もの女性で試したが、ピッタリはまる女性などいなかったのだ」
これで城に帰れると大臣はソファーから重い腰を上げた。
けれどイザベラはこれを見ても納得していない様子だ。
「この子は舞踏会には行ってませんわ。これは何かの間違いです! リュセット、あなたも何か言ったらどうなの⁈」
リュセットは気まずそうに顔を背け、小さな唇を開いた。
「……これは、私のものではございません」
(……はい? 今、んと?)
「間違いではありませんわ、お母様! 皆様、もう少しだけお待ち下さいませ。私が証拠をお持ちいたしますわ」
見ていられないと、痺れを切らしたマーガレットはそう言ってリュセットの部屋へと駆けて行った。
リュセットはマーガレットが何をしに行ったのか察し、慌てて後を追った。
「マーガレットお姉様、お待ち下さい!」
マーガレットは聞く耳持たず、リュセットの部屋のクローゼットの中を探る。持ち物の少ないリュセットがあの靴を片付けているとしたらここだと思い引き出しを開けると、明らかに大事そうに布に包まれたガラスの靴の片割れを見つけた。
「マーガレットお姉様、それを返して下さいませ!」
「リュセット、どうして? マルガリータお姉様に気を使っているのらそれは無用なことよ」
なぜここまで来て、隠そうとするのか。
マーガレットはリュセットの考えている事が全く分からずにいると、大臣達が部屋までやって来て、マーガレットが掴んでいるガラスの靴を見つけた。
「おお、これはまさしくあのガラスの靴の片割れではないか! とするとやはりあなたが……!」
マーガレットからこのガラスの靴を受け取り、もう片方の靴を揃え、リュセットの足元へと置いた。
リュセットは断念した様子で、対になったガラスの靴を履いた。
「それではリュセット。あなたは王子の花嫁として、是非城へ来ていただきたい」
誇らしげに胸を張り、意気揚々とそう言った大臣の目を見ずに、リュセットは震える唇で耳を疑う言葉を吐き出した。
「その婚約は……辞退させて下さいませ」
(まさか、マルガリータに気を使って……? それはまぁ想像できるけど、でも……)
「ご婦人、このお嬢さんに説明してもらえぬか?」
何度も言わすなと言いたげに、大臣はソファーの背に背中を預け、頭を抱えながら首を振っている。
「リュセット、さっさと済ませなさい。皆様はご令嬢探しに忙しいのですよ!」
まるでそれは、リュセットがこの靴の持ち主ではないと心から察している様子。さっさとこんな茶番は終わらせて、この方々に帰ってもらえと言いたげに、イザベラは強い口調でそう言った。
断りきれない様子に、リュセットも渋々といった様子。ボロボロの靴を脱ぎ、ガラスの靴に足を入れたーーすると周りにいた人々が一斉に息を飲んだ。
ガラスの靴は、持ち主の足にピッタリとはまり、数多に輝きを増したように見える。
「あなたでしたか……」
大臣が安堵のため息とともに言葉を漏らし、使用人達はやっと相手が見つかったと、肩を撫で下ろしている。カインですら驚いたように目を見開いている中、イザベラだけは信じられないと言った様子で目をひん剥き、手に持っていた扇を床に落とした。
「これは、何かの間違いよ……」
「間違いなものか。現にこうしてピッタリはまっておる。何人もの女性で試したが、ピッタリはまる女性などいなかったのだ」
これで城に帰れると大臣はソファーから重い腰を上げた。
けれどイザベラはこれを見ても納得していない様子だ。
「この子は舞踏会には行ってませんわ。これは何かの間違いです! リュセット、あなたも何か言ったらどうなの⁈」
リュセットは気まずそうに顔を背け、小さな唇を開いた。
「……これは、私のものではございません」
(……はい? 今、んと?)
「間違いではありませんわ、お母様! 皆様、もう少しだけお待ち下さいませ。私が証拠をお持ちいたしますわ」
見ていられないと、痺れを切らしたマーガレットはそう言ってリュセットの部屋へと駆けて行った。
リュセットはマーガレットが何をしに行ったのか察し、慌てて後を追った。
「マーガレットお姉様、お待ち下さい!」
マーガレットは聞く耳持たず、リュセットの部屋のクローゼットの中を探る。持ち物の少ないリュセットがあの靴を片付けているとしたらここだと思い引き出しを開けると、明らかに大事そうに布に包まれたガラスの靴の片割れを見つけた。
「マーガレットお姉様、それを返して下さいませ!」
「リュセット、どうして? マルガリータお姉様に気を使っているのらそれは無用なことよ」
なぜここまで来て、隠そうとするのか。
マーガレットはリュセットの考えている事が全く分からずにいると、大臣達が部屋までやって来て、マーガレットが掴んでいるガラスの靴を見つけた。
「おお、これはまさしくあのガラスの靴の片割れではないか! とするとやはりあなたが……!」
マーガレットからこのガラスの靴を受け取り、もう片方の靴を揃え、リュセットの足元へと置いた。
リュセットは断念した様子で、対になったガラスの靴を履いた。
「それではリュセット。あなたは王子の花嫁として、是非城へ来ていただきたい」
誇らしげに胸を張り、意気揚々とそう言った大臣の目を見ずに、リュセットは震える唇で耳を疑う言葉を吐き出した。
「その婚約は……辞退させて下さいませ」
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