サンドリヨン 〜 シンデレラの悪役令嬢(意地悪姉役)に転生したので前職を生かしてマッサージを始めました 〜

浪速ゆう

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本編

大広間 1

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 興奮した様子のリュセットはずっと落ち着かず窓の外ばかり眺めていた。すると時間はあっという間に過ぎ、馬車はお城へと到着した。

「招待状を拝見いたします」

 門の入り口で騎手にそう話しかける警備兵に気づいたリュセットは、馬車の扉を開けて招待状を差し出した。

「私が持っております」

 警備兵はリュセットの姿を見た瞬間、まるで夢でも見ているかのような表情で口をあんぐりと開けている。そんな様子がリュセットを不安にさせる。

(……どこか変なことがあるのでしょうか。もしかして灰が顔に付いていたのでしょうか……)

 まじまじと顔を見つめる警備兵の視線に、リュセットは自分の顔を馬車の扉の小窓に映して確認をした。けれど薄暗い馬車の中では灰の汚れまでは確認できない。

「あ、ありがとうございます。どうぞ舞踏会を楽しんでいらしてくださいませ!」

 警備兵が招待状をリュセットに返した後、緩んだ顔を締め直しながら敬礼のポーズを取り、馬車を送り出した。
 再び馬車に揺られながら、お城に着いたらまず最初に化粧室へと向かおうと考えていた。

「リュセット、着いたよ」

 馬車は静かに止まり、誰かがリュセットを呼ぶ声が聞こえたと同時に、馬車の扉は開かれた。
 扉の向こうには馬車の騎手をしていたシャルロット。少しふくよかなシャルロットは風船のように張った頬を緩ませながらリュセットに微笑みかけている。

「さぁリュセット、もうあまり時間がないから早く中へ」
「シャルロット、あなた話ができるのね……?」
「みたいだね。あの魔法使いがそうしてくれたみた——」

 シャルロットのエスコートを受けて馬車から降り立ったリュセットは、最後まで話を聞かずに思わず抱きついた。

「ああ、あなたが話せたらどれだけいいかしらって思っていたのよ。なんて素敵な気分なのでしょう!」

 シャルロットはリュセットを抱きとめながら同じく嬉しそうに微笑みを返している。

「リュセット、僕もずっと話がして見たいって思ってたよ」
「それならリズとルークも……?」

 リュセットが振り返り、馬に変わった小鳥のリズとルークへ歩み寄るが、二人はヒヒンと興奮した様子で鼻を鳴らしただけだった。

「どうやら話ができるのは僕だけみたいだね」
「そうなの……」

 残念そうな表情で、新しい姿をしているリズのルークの首に顔を埋めた。

「それよりリュセット、早く中へ。さっきあの魔法使いが言ってたよね。0時の鐘が鳴る時、この魔法が切れてしまう。だからそれまでに戻ってくるんだよ」

 少し離れた広場には大きな時計台がある。その時計の針は22時50分を指していた。

「僕たちはここで待ってるから。リュセットは、楽しんでおいで」

 シャルロットに背中を押され、リュセットはその白い肌をほんのり色付けて微笑んだ。

「ありがとう、シャルロット。それにリズとルーク。行ってきます」

 リュセットはドレスの裾を持ち上げて、友達に会釈をした後、お城の建物に向かって駆け出した。
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