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本編
招待状 2
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それはカインからの手紙と同じ筆跡で書かれていた。マーガレットは思わずドレスを持ち、姿鏡の前に立った。ドレスを体に当てながら、くるりと一回転。見たところ、サイズも丈もぴったりの様子。
「カインってば、あたしのサイズ知ってるとか、ほんと侮れないやつ……」
そう言いながらもマーガレットは、頬が綻ぶのを引き締めることができずにいた。
そんな時だった。コンコン、と部屋をノックする音が聞こえ、マーガレットは浮かれた様子で何も考えず、ただ返事を戻した。
「はい」
マーガレットの声を聞いて扉を開けたのは、リュセットだった。美しいドレスを掴んで嬉しそうに踊っているマーガレットを見た瞬間、状況が把握できていないリュセットはただ驚きの表情を見せた。
「……まぁ、なんて美しいドレスでしょうか。それはどうなさったのですか?」
幼子のように喜ぶマーガレットを見て、驚いた顔がやがて笑顔に変わっていく。ドレスを手に喜んでいる姿など、今まで一度も見たことがなかったのだ。
マルガリータのそんな様子は何度も見たことがあるが、マーガレットはあまり物に頓着していないと思っていただけに、リュセットもなんだか嬉しく感じていた。
「カインがプレゼントをしてくれたのよ! 見て!」
マーガレットから差し出された手紙を読み、カインがプレゼントしたものだと知ったリュセットは、さっきよりも嬉しそうに微笑んだ。
「そうでしたか。カイン様は紳士な方なのですね」
「ええ、お城で騎士団長を務めているみたいなの」
「まぁ、それは素晴らしいですわ」
ドレスを抱きしめながら、マーガレットの頬は緩みっぱなしだ。ドレスをもらって嬉しいと言うよりも、カインから舞踏会に誘われたことの方が何よりも嬉しいと感じていた。
「朝から騒がしいじゃない。何をそんなに……!」
騒ぎを聞きつけたマルガリータが、開け放たれたままの扉から顔を覗かせた。そしてマーガレットが握るドレスを見て、いつもの嫌味ったらしい表情から一気に怒りの表情へと変貌を遂げた。
「どういうことなのマーガレット! お母様! マーガレットにだけドレスをプレゼントなさったのですか? 私は買って貰っていないというのに!?」
マルガリータはそう叫びながらダイニングへと駆けて行った。その様子を見て、マーガレットの表情はやっと引き締まる。
「マーガレットお姉様……」
心配そうなリュセットの肩にそっと触れ、マーガレットは力強く微笑んだ。
「大丈夫よリュセット。私は一旦服を着替えるから先にダイニングへ行ってちょうだい」
リュセットはマーガレットの様子を見に来ていた。昨日熱を出して倒れたせいで気にしていたに違いない。そして体調が良くなっているのなら朝食の準備が整ったため、皆で食べようと声をかけに来ていたのだ。
「わかりました。お待ちしておりますわ」
相変わらず心配そうに眉尻を下げた顔をしたまま、リュセットは部屋を後にした。扉が閉まったのを確認してから、ドレスを手紙とともに箱の中へと片付けた。
このドレスを着て、舞踏会に行こうとするのだ。否応無しにイザベラとマルガリータにドレスをどうやって手に入れたのか聞かれるのは想像がついていた。その上舞踏会ではカインのエスコートで行こうとしているのだから、なおさらカインの存在を隠すことは不可能だ。
マーガレットはドレスを入れた箱を大切にクローゼットの中へとしまい、代わりに別のドレスを取り出してそれに着替えた。
「ふぅ」
一息ついたあと、意を決し、戦いの舞台となるダイニングへと向かった。
「カインってば、あたしのサイズ知ってるとか、ほんと侮れないやつ……」
そう言いながらもマーガレットは、頬が綻ぶのを引き締めることができずにいた。
そんな時だった。コンコン、と部屋をノックする音が聞こえ、マーガレットは浮かれた様子で何も考えず、ただ返事を戻した。
「はい」
マーガレットの声を聞いて扉を開けたのは、リュセットだった。美しいドレスを掴んで嬉しそうに踊っているマーガレットを見た瞬間、状況が把握できていないリュセットはただ驚きの表情を見せた。
「……まぁ、なんて美しいドレスでしょうか。それはどうなさったのですか?」
幼子のように喜ぶマーガレットを見て、驚いた顔がやがて笑顔に変わっていく。ドレスを手に喜んでいる姿など、今まで一度も見たことがなかったのだ。
マルガリータのそんな様子は何度も見たことがあるが、マーガレットはあまり物に頓着していないと思っていただけに、リュセットもなんだか嬉しく感じていた。
「カインがプレゼントをしてくれたのよ! 見て!」
マーガレットから差し出された手紙を読み、カインがプレゼントしたものだと知ったリュセットは、さっきよりも嬉しそうに微笑んだ。
「そうでしたか。カイン様は紳士な方なのですね」
「ええ、お城で騎士団長を務めているみたいなの」
「まぁ、それは素晴らしいですわ」
ドレスを抱きしめながら、マーガレットの頬は緩みっぱなしだ。ドレスをもらって嬉しいと言うよりも、カインから舞踏会に誘われたことの方が何よりも嬉しいと感じていた。
「朝から騒がしいじゃない。何をそんなに……!」
騒ぎを聞きつけたマルガリータが、開け放たれたままの扉から顔を覗かせた。そしてマーガレットが握るドレスを見て、いつもの嫌味ったらしい表情から一気に怒りの表情へと変貌を遂げた。
「どういうことなのマーガレット! お母様! マーガレットにだけドレスをプレゼントなさったのですか? 私は買って貰っていないというのに!?」
マルガリータはそう叫びながらダイニングへと駆けて行った。その様子を見て、マーガレットの表情はやっと引き締まる。
「マーガレットお姉様……」
心配そうなリュセットの肩にそっと触れ、マーガレットは力強く微笑んだ。
「大丈夫よリュセット。私は一旦服を着替えるから先にダイニングへ行ってちょうだい」
リュセットはマーガレットの様子を見に来ていた。昨日熱を出して倒れたせいで気にしていたに違いない。そして体調が良くなっているのなら朝食の準備が整ったため、皆で食べようと声をかけに来ていたのだ。
「わかりました。お待ちしておりますわ」
相変わらず心配そうに眉尻を下げた顔をしたまま、リュセットは部屋を後にした。扉が閉まったのを確認してから、ドレスを手紙とともに箱の中へと片付けた。
このドレスを着て、舞踏会に行こうとするのだ。否応無しにイザベラとマルガリータにドレスをどうやって手に入れたのか聞かれるのは想像がついていた。その上舞踏会ではカインのエスコートで行こうとしているのだから、なおさらカインの存在を隠すことは不可能だ。
マーガレットはドレスを入れた箱を大切にクローゼットの中へとしまい、代わりに別のドレスを取り出してそれに着替えた。
「ふぅ」
一息ついたあと、意を決し、戦いの舞台となるダイニングへと向かった。
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