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本編
約束の日 2
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「今から手紙を書くから、それを私の代わりに渡してきてもらえないかしら?」
マーガレットが出れなくても、リュセットなら外に出られる。それもイザベラに咎められることも、怪しまれることもなく。
「それは、今日会う予定だった方にですわね?」
「そうなの、もしリュセットがいいと言ってくれるのならば……」
リュセットは微笑んで胸に手を当てた。
「もちろんですわ。お任せ下さい」
誰よりも背が低く、華奢なリュセットがこれほどまでに大きく、頼もしく見えたのは初めてだった。
「ありがとう。早速なのだけれど、手紙を急いで書くからこれから持って行ってもらえるかしら?」
「わかりましたわ。私も出かける支度をいたします。ちょうど買い物にも行こうと思っていたところでしたので」
「ありがとう。少し待っていて、手紙を書いてすぐに持ってくるわ」
リュセットの手を再び両手で握り、そこに額を当てて感謝の意を述べた。その後すぐにバタバタと部屋まで一目散に駆けていき、部屋の引き出しの中に入れていた便箋を一枚掴んだ。
親愛なる カイン
ごめんなさい。今日会うと約束をしていたのに、会えません。
しばらくの間、家から出ることができなくなりました。
お母様のお許しが出るまで出られないのです。
そのため、次に会う約束ができないことをご了承ください。
そこまで書いて、ペンを止めた。続きをなんと書くのか考えている様子だ。ペンの先を左右に揺らしながら、マーガレットは窓の外を見やる。そこには青空が広がり、小鳥のさえずる声が聞こえる。
(これではまるで、籠の中の鳥のようだわ)
自由に動くこともしたいと思うことも満足にできない。堅苦しくも古臭いしきたりや息が詰まりそうなほど締め付けの苦しいドレスで着飾り。窓の外にいる鳥の方が幾分も自由だ。
「せめて手紙の中では自由に……」
ペンを握りなおし、再びそれを走らせる。先ほど書いた文字の一番下に、この二文を追加して。
不思議と私はカインに会いたいと思っています。
ですからまた、すぐに会えることを心から願ってーー。
マーガレットの名前とこの家の住所を手紙の最後に記載し、それを封筒に入れた。
住所を記載したのは念のためだった。手紙を送ったあと、カインがもしかすると返事を書いてくれるかもしれない。そうすれば今後もコンタクトを取り合うことができる。そうなれば、イザベラから外出許可が出た際にマーガレットは再びカインにそれを知らせて、会うことができるからだ。
「よし!」
手紙を握りしめ、ダイニングへと再び戻る。するとそこにはすでに出かける支度を整えたリュセットが待っていた。
「マーガレットお姉様、書けましたか?」
「ええ、これをお願いできるかしら?」
白い封筒に入った手紙を受け取ったリュセットは買い物カゴの中にそれを入れて上から布を被せた。
「街の入り口にいるカインという男性にこれを渡してくれたらいいから。きっと黒い馬を連れてるわ」
「分かりました」
リュセットが家を出ようとしたところで、マーガレットは彼女を再び引き留め、肩に掛けていたライトグレーのショールをリュセットの頭から被せた。
「今日は寒いわ。風も強いみたいだからこれを被って行くといいわ」
リュセットは顔の下でそれを掴み、微笑みを零した。
「ありがとうございますマーガレットお姉様。行ってきます」
そう言ってリュセットは蝶が舞うように駆けて出て行った。
マーガレットが出れなくても、リュセットなら外に出られる。それもイザベラに咎められることも、怪しまれることもなく。
「それは、今日会う予定だった方にですわね?」
「そうなの、もしリュセットがいいと言ってくれるのならば……」
リュセットは微笑んで胸に手を当てた。
「もちろんですわ。お任せ下さい」
誰よりも背が低く、華奢なリュセットがこれほどまでに大きく、頼もしく見えたのは初めてだった。
「ありがとう。早速なのだけれど、手紙を急いで書くからこれから持って行ってもらえるかしら?」
「わかりましたわ。私も出かける支度をいたします。ちょうど買い物にも行こうと思っていたところでしたので」
「ありがとう。少し待っていて、手紙を書いてすぐに持ってくるわ」
リュセットの手を再び両手で握り、そこに額を当てて感謝の意を述べた。その後すぐにバタバタと部屋まで一目散に駆けていき、部屋の引き出しの中に入れていた便箋を一枚掴んだ。
親愛なる カイン
ごめんなさい。今日会うと約束をしていたのに、会えません。
しばらくの間、家から出ることができなくなりました。
お母様のお許しが出るまで出られないのです。
そのため、次に会う約束ができないことをご了承ください。
そこまで書いて、ペンを止めた。続きをなんと書くのか考えている様子だ。ペンの先を左右に揺らしながら、マーガレットは窓の外を見やる。そこには青空が広がり、小鳥のさえずる声が聞こえる。
(これではまるで、籠の中の鳥のようだわ)
自由に動くこともしたいと思うことも満足にできない。堅苦しくも古臭いしきたりや息が詰まりそうなほど締め付けの苦しいドレスで着飾り。窓の外にいる鳥の方が幾分も自由だ。
「せめて手紙の中では自由に……」
ペンを握りなおし、再びそれを走らせる。先ほど書いた文字の一番下に、この二文を追加して。
不思議と私はカインに会いたいと思っています。
ですからまた、すぐに会えることを心から願ってーー。
マーガレットの名前とこの家の住所を手紙の最後に記載し、それを封筒に入れた。
住所を記載したのは念のためだった。手紙を送ったあと、カインがもしかすると返事を書いてくれるかもしれない。そうすれば今後もコンタクトを取り合うことができる。そうなれば、イザベラから外出許可が出た際にマーガレットは再びカインにそれを知らせて、会うことができるからだ。
「よし!」
手紙を握りしめ、ダイニングへと再び戻る。するとそこにはすでに出かける支度を整えたリュセットが待っていた。
「マーガレットお姉様、書けましたか?」
「ええ、これをお願いできるかしら?」
白い封筒に入った手紙を受け取ったリュセットは買い物カゴの中にそれを入れて上から布を被せた。
「街の入り口にいるカインという男性にこれを渡してくれたらいいから。きっと黒い馬を連れてるわ」
「分かりました」
リュセットが家を出ようとしたところで、マーガレットは彼女を再び引き留め、肩に掛けていたライトグレーのショールをリュセットの頭から被せた。
「今日は寒いわ。風も強いみたいだからこれを被って行くといいわ」
リュセットは顔の下でそれを掴み、微笑みを零した。
「ありがとうございますマーガレットお姉様。行ってきます」
そう言ってリュセットは蝶が舞うように駆けて出て行った。
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