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本編
リフレクソロジー 1
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*
「それではリュセット、ベッドに仰向けになって寝てくれる? 足首がこの丸めたタオルの位置にくるようにお願いね」
紅茶の温度がすっかり冷めた頃、マーガレットはあのリュセットから借りている服に着替え、リュセットは指示された通りにベッドに横になった。
ベッドの足元ギリギリにタオルを敷き、さらにその下にはロールケーキのように丸めたタオルを入れている。山のように膨らんだタオルの上に足首を乗せるとちょうど足先がベッドからはみ出る形になる。リュセットが横になった後、枕の位置をリュセットに合わせて変えてあげ、キルトを体にかけてから足元に置いてあった椅子に座った。
「紅茶を飲んでおいてよかったわ。手が温まってる」
マーガレットはキッチンから取ってきておいたオリーブオイルを、少しだけ手に乗せた。とろーりと少し重めなオリーブオイルを手の上で温めながら、純度の高いオリーブオイルの香りを嗅いだ。最近オリーブオイルは混ざり物などの粗悪なものも出回っているらしいが、リュセットは昔から馴染みの店で購入しているため純度が保たれたものを購入していると言っていたのだ。マーガレットはその純度を香りを嗅ぎながら確かめて、これならば肌にも問題ないだろうと踏んでいた。
「それでは、始めるわね」
「はい、お願いいたします」
少し緊張したように強張った足に、オイルを塗布する。まずは左足から。両手に広げたオイルで、足の裏と甲を挟む形でつま先から踵へと幾度に渡って広げていく。オイルを塗布すると同時に圧を小指から下、手根にかけてエッジをかけるようにして足裏に圧をかけてほんのりほぐしつつ温める。
「マーガレットお姉様の手が暖かくて気持ちがいいですわ」
「ふふっ、マッサージはこれからよ」
足全体にまんべんなくオイルが広がったのを確認して、マーガレットは指の付け根から下がったところにある膨らみと、土踏まずとのちょうど境界線あたりに当たる部分の真ん中を親指でぐっと押した。ゆっくりと5秒間カウントを心の中で数えながら。
「この力加減はどう?」
「はい、大丈夫ですわ」
リュセットの余裕そうな返答を聞いて、今度は左親指に右手の人差し指を引っ掛けるような形で構え、その人差し指の第二関節部分がさっき押した箇所に当たるように構えた。
「今度は少し強めに押すけれど、ゆっくりと押すから痛すぎたら遠慮せずに言ってちょうだい」
「はい、わかりましたわ」
明らかに肩に力が入ったのが見て取れて、マーガレットは両手で足の裏を揺すった。
「大丈夫よリュセット。そんなにかしこまらないで」
「あっ、失礼しました。つい……」
リュセットの足の力が抜けたのを確認してから、マーガレットは再びあの構えで足の裏を指圧した。
「どうかしら、このくらいの強さは大丈夫?」
「はい、なんだかスッといたします」
「ここは体のだるさや疲れを解消したり、下腹部から足にかけての冷えにも良いのよ。ちょっと動かしていくから痛かったら言ってね」
そう言って、マーガレットは押し当てた場所からぐるぐると小さく弧を描き始めた。小さな弧を描きながら次は斜めえ右下、指一つ分くらいの場所を同じように刺激して、最後は全体を囲うように少し大きめの弧を描く。今度は土踏まずのあたりに移動し、コの字型に関節部分を使って指を滑らせていく。
「リュセット、この辺りゴリゴリしているわ。痛い?」
「私も感じております。少し痛みがあるのですが、大丈夫です」
足には多くのツボが点在している。特に足裏には体の中で一番ツボが密集しているとも言われ、反射点療法という言葉があるように、足の裏を刺激すれば手の届かない内臓やその他の不調箇所にアプローチができるとも言われている。不健康な人ほど足裏が痛いというのはそのためだ。
マーガレットが現在刺激しているのは大腸に当たる部分。
「それではリュセット、ベッドに仰向けになって寝てくれる? 足首がこの丸めたタオルの位置にくるようにお願いね」
紅茶の温度がすっかり冷めた頃、マーガレットはあのリュセットから借りている服に着替え、リュセットは指示された通りにベッドに横になった。
ベッドの足元ギリギリにタオルを敷き、さらにその下にはロールケーキのように丸めたタオルを入れている。山のように膨らんだタオルの上に足首を乗せるとちょうど足先がベッドからはみ出る形になる。リュセットが横になった後、枕の位置をリュセットに合わせて変えてあげ、キルトを体にかけてから足元に置いてあった椅子に座った。
「紅茶を飲んでおいてよかったわ。手が温まってる」
マーガレットはキッチンから取ってきておいたオリーブオイルを、少しだけ手に乗せた。とろーりと少し重めなオリーブオイルを手の上で温めながら、純度の高いオリーブオイルの香りを嗅いだ。最近オリーブオイルは混ざり物などの粗悪なものも出回っているらしいが、リュセットは昔から馴染みの店で購入しているため純度が保たれたものを購入していると言っていたのだ。マーガレットはその純度を香りを嗅ぎながら確かめて、これならば肌にも問題ないだろうと踏んでいた。
「それでは、始めるわね」
「はい、お願いいたします」
少し緊張したように強張った足に、オイルを塗布する。まずは左足から。両手に広げたオイルで、足の裏と甲を挟む形でつま先から踵へと幾度に渡って広げていく。オイルを塗布すると同時に圧を小指から下、手根にかけてエッジをかけるようにして足裏に圧をかけてほんのりほぐしつつ温める。
「マーガレットお姉様の手が暖かくて気持ちがいいですわ」
「ふふっ、マッサージはこれからよ」
足全体にまんべんなくオイルが広がったのを確認して、マーガレットは指の付け根から下がったところにある膨らみと、土踏まずとのちょうど境界線あたりに当たる部分の真ん中を親指でぐっと押した。ゆっくりと5秒間カウントを心の中で数えながら。
「この力加減はどう?」
「はい、大丈夫ですわ」
リュセットの余裕そうな返答を聞いて、今度は左親指に右手の人差し指を引っ掛けるような形で構え、その人差し指の第二関節部分がさっき押した箇所に当たるように構えた。
「今度は少し強めに押すけれど、ゆっくりと押すから痛すぎたら遠慮せずに言ってちょうだい」
「はい、わかりましたわ」
明らかに肩に力が入ったのが見て取れて、マーガレットは両手で足の裏を揺すった。
「大丈夫よリュセット。そんなにかしこまらないで」
「あっ、失礼しました。つい……」
リュセットの足の力が抜けたのを確認してから、マーガレットは再びあの構えで足の裏を指圧した。
「どうかしら、このくらいの強さは大丈夫?」
「はい、なんだかスッといたします」
「ここは体のだるさや疲れを解消したり、下腹部から足にかけての冷えにも良いのよ。ちょっと動かしていくから痛かったら言ってね」
そう言って、マーガレットは押し当てた場所からぐるぐると小さく弧を描き始めた。小さな弧を描きながら次は斜めえ右下、指一つ分くらいの場所を同じように刺激して、最後は全体を囲うように少し大きめの弧を描く。今度は土踏まずのあたりに移動し、コの字型に関節部分を使って指を滑らせていく。
「リュセット、この辺りゴリゴリしているわ。痛い?」
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マーガレットが現在刺激しているのは大腸に当たる部分。
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